調査・報告  畜産の情報 2015年6月号


食肉の消費・販売動向調査の結果(27年度上半期)
〜国産豚肉の販売、小売業者で増加の見込み〜

畜産需給部 需給業務課



【要約】

 平成27年度上半期の動向は、量販店では国産豚肉や国産鶏肉の販売増加が見込まれる一方で、枝肉卸売価格の高騰が続く和牛肉ではやや減少する見通しとなっている。専門店でも同様に和牛肉がやや減少する見通しとなっている。卸売業者では、和牛肉や国産牛肉の低価格部位、国産豚肉で概ね堅調な見通しとなっている。

 日豪EPA発効により関税率が引き下げられる中、豪州産牛肉の取扱意向は、専門店では概ね現状維持が多いのに対し、量販店では増加の意向も多く見られた。また、小売業者における仕入価格は、為替の円安基調や需給ひっ迫予想などを背景に横ばいとする見通しが大勢を占めた。

1 はじめに

 当機構では、食肉の消費・販売動向を把握するため、年に2回、小売業者(量販店および食肉専門店(以下「専門店」という。)や卸売業者の協力を得て、食肉の取扱割合や販売見通しに関するアンケート調査を実施している。

 今回は、27年度上半期(4〜9月)の食肉の販売見通しについて、同年2月に調査を行った。本稿では、まず次項で26年9〜翌年2月の消費および販売に関する情勢について、統計資料やトピックスを交えて整理し、第3項で調査結果について報告する。

2 26年9月〜27年2月の消費・販売に関する情勢

 家計調査報告(総務省)によると、26年9月〜27年2月の牛肉の動向については、相場高に伴う小売価格の上昇などから、購入金額は前年度を上回った。購入数量は、日豪経済連携協定(以下「日豪EPA」という)発効前に一部の量販店で先取りセールが開催された12月を除き、全体的には落ち込みが見られた(図1)。豚肉については、牛肉と同様、相場高に伴う小売価格の上昇などにより購入金額は前年度を上回った。購入数量は消費増税直後と比べると持ち直しているものの、前年度を下回って推移した(図2)。鶏肉については、相場高は続いているものの、牛肉や豚肉との価格優位性や健康志向の高まりなどにより購入数量・金額共に前年度を上回った(図3)。ハム・ソーセージなどの加工品については、製品価格の値上げや一部メーカーが内容量を減らして価格を維持する実質値上げを行ったことなどから、購入数量が落ち込んだ。食肉に限らず、食料品全般で小売価格の値上げが行われているものの、全国1人当たりの食料品支出は、横ばいで推移している。こうした中で、上述のように食肉の購入金額はいずれも前年を上回っていることから、食肉が他の食料品と比べて消費者の支持を受けていることがうかがえる。

図1 牛肉の家計消費の推移(前年同月比)
注1:総務省「家計調査報告」を基に、全国1人当たり家計消費数量・金額を算出した。
  2:消費税込みの金額で比較したもの。
  3:贈答用等自家消費以外のものを含む。
図2 豚肉の家計消費の推移(前年同月比)
注1:総務省「家計調査報告」を基に、全国1人当たり家計消費数量・金額を算出した。
  2:消費税込みの金額で比較したもの。
  3:贈答用等自家消費以外のものを含む。
図3 鶏肉の家計消費の推移(前年同月比)
注1:総務省「家計調査報告」を基に、全国1人当たり家計消費数量・金額を算出した。
  2:消費税込みの金額で比較したもの。
  3:贈答用等自家消費以外のものを含む。

 一方、外食産業市場動向調査(一般社団法人日本フードサービス協会)によると、26年9月〜27年2月の外食産業全体の売上高の動向は、11月と2月を除いた各月で前年同月を下回った(図4)。これは、「ファストフード・洋風」の売上高が、前年同期を大きく下回ったためである。この要因として、業績不振に陥っていた一部ハンバーガーチェーンにおいて、輸入食材などの品質・衛生問題が追い打ちをかけたことが挙げられる。また、この問題を受け、一部の外食チェーンでは、使用する食材を国産品に切り替える動きも見られた。一方、食肉が多く消費される業態である「ファミリーレストラン・焼き肉」では、客数および客単価共に前年同期を上回っており、売上高も堅調に伸びている。さらに、「ファストフード・和風」では、客数の減少が見られたものの、1人当たりの売上単価が堅調だったことから、売上高は前年同期を上回って推移した。これは、大手牛丼チェーンにおいて、輸入バラ肉などの相場高に伴う一部メニューの値上げや、単価の高い季節メニューの投入などが大きいとみられる。外食産業においては、消費者の根強い経済性志向が変わりつつあり、比較的単価の高い業態や、価格訴求のビジネスモデルからの転換を行った企業で業績の伸びが見られるケースが多くなっているようである。

図4 外食産業の売上高の推移(前年同月比)
資料:一般社団法人 日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」
  注:消費税抜きの金額で比較したもの。

3 調査結果(重量ベース)

(1)最近の食肉の取扱割合

ア 量販店・専門店

 量販店および専門店に対し、食肉の品目別取扱割合について、26年度下半期の実績と27年度上半期の見通しを調査した(図5、図6)。

(ア)26年度下半期(実績)

 食肉取扱割合の26年度下半期の実績(図5−(2)、6−(2))を上半期(図5−(1)、6−(1))と比較すると、食肉の種類別では、量販店で牛肉が低下し、豚肉が上昇する結果となった。これは、牛肉や豚肉の小売価格が上昇する中、牛肉に対する豚肉の価格優位性が一因と見られる。また、和牛肉は、量販店が横ばい(9%→9%)であったのに対して、専門店が2ポイント(25%→27%)上昇しており、専門店においては和牛肉を主力商品として位置付けていることが見通しに表れた。消費状況(家計調査)の結果と異なり、小売業者は、鶏肉の取り扱いを強化するのではなく、国産牛肉および輸入牛肉から豚肉へシフトしている状況がうかがえる。

(イ)27年度上半期(見通し)

 27年度上半期については、26年度上半期と比べると、専門店では大きな変動は見込んでいないものの、量販店では牛肉の割合が低下し、豚肉が上昇する見通しであることがわかる(図5−(3)、図6−(3))。一方、26年度下半期と比べると、量販店、専門店共に大きな変動は見込んでいないものの、国産牛肉がいずれもわずかながら上昇していることが特徴的な動きといえる。

図5 食肉の品目別取扱割合(量販店)
図6 食肉の品目別取扱割合(専門店)

イ 卸売業者

(ア)牛肉

 同様に、卸売業者に対しても、食肉の取扱割合について調査した。牛肉取扱割合の26年度下半期の実績を、上半期と比較すると、国産品は1ポイント上昇の48%、逆に輸入品は1ポイント低下の52%となった(図7−(1)、7−(2))。内訳を見ると、和牛肉、輸入品(冷凍)が低下した一方で、交雑種、乳用種、輸入品(冷蔵)がいずれも上昇した。和牛肉の低下は、枝肉卸売価格の高値が継続したこと、一方、輸入品(冷凍)の低下は、主に外食向けのバラ肉が高騰したことや一部ハンバーガーチェーンの業績不振などによるものと考えられる。

 また、27年度上半期の取扱割合については、26年度下半期に比べ、国産品が低下し、輸入品が上昇する見通しであることが明らかとなった(図7−(3))。枝肉卸売価格の高値が継続しているため、国産品から輸入品(冷蔵)へのシフトが続く可能性が考えられる。

図7 牛肉の品目別取扱割合(卸売業者)

(イ)豚肉

 豚肉取扱割合の26年度下半期の実績を上半期と比較すると、国産品および輸入品(冷蔵)の割合が上昇したことで、輸入品(冷凍)が低下する結果となった(図8−(1)、8−(2))。これは、26年度上半期に、日本国内で発生した豚流行性下痢(以下「PED」という)に伴う安定供給に対する懸念などにより、輸入業者がEU産などを中心に冷凍品の輸入を増やしたことの反動であるとみられる。小売業者より流通の川上に位置する卸売業者では、国内外の供給量の動向が、より直接的に取扱量などに影響を及ぼすことから、小売調査に比べて取扱割合が大きく変動したものと考えられる。

 なお、27年度上半期については、26年度上半期と比べると、大きな変動は見込んでいないものの、26年度下半期と比べると、国産品の割合が低下し、輸入品(冷蔵)が上昇する見通しとなっている。これは、豚肉の生産量が年末の需要期を含む下半期に多く、気温の高い夏場を含む上半期は少なくなるという季節性を反映したものと考えられる。ただし、PEDの影響などにより豚肉の生産量が前年を下回り、枝肉卸売価格が高値で推移していることから、上半期と下半期の間における取扱割合の差異は例年ほど大きくはない。

図8 豚肉の品目別取扱割合(卸売業者)

(2)27年度上半期の食肉販売見通し(量販店・専門店)

ア 牛肉

(ア)量販店

 量販店の品目別販売見通し(前年同期比)のうち、和牛肉については、「減少」が「増加」を上回った(図9)。「減少」の理由として、「仕入価格上昇分の価格転嫁」が多く挙げられた。次に、国産牛肉については、「増加」が「減少」を上回っており、「増加」の理由として「特売回数の増加」が最も多く挙げられていた。輸入牛肉については「増加」と「減少」の割合が同程度と意見が分かれた。「増加」の理由として、「消費者の経済性志向」が、「減少」の理由として、「特売回数の減少」が多く挙げられ、「同程度」も含め、見解が分かれている。

図9 量販店における品目別販売見通し(前年同期比)

(イ)専門店

 専門店においては、和牛肉で量販店に比べ、より強い減少傾向が見られた(図10)。和牛肉の「減少」の理由には「仕入価格上昇分の価格転嫁」、「消費者の経済性志向」が多く挙げられた。国産牛肉および輸入牛肉では「減少」の割合が「増加」よりも高く、その理由については、いずれも「仕入価格上昇分の価格転嫁」が最も多かった。専門店では、牛肉全ての品目で「減少」が「増加」を上回る見通しとなった。

図10 専門店における品目別販売見通し(前年同期比)

イ 豚肉

(ア)量販店

 量販店における国産豚肉の販売見通しは、「増加」が「減少」を大きく上回った(図9)。「増加」の理由には、「特売回数の増加」、「牛肉からの需要シフト」が多く挙げられている。枝肉卸売価格の高値が継続する見通しにあっても、割高感のある和牛肉や国産牛肉からの需要シフトが見込まれている。また、輸入豚肉については、「増加」と「減少」の割合が同程度と意見が分かれた。「増加」の理由には、「特売回数の増加」が、「減少」の理由には、「特売回数の減少」が多く挙げられ、正反対の結果となった。輸入品を特売の中心とするのか、それとも国産品での特売とするのか、各社の販売計画の違いが見通しに反映されたと言える。

(イ)専門店

 専門店における販売見通しは、国産豚肉では「増加」と「減少」に大きな差はなく、「増加」の理由は「特売回数の増加」、「減少」の理由は「仕入価格上昇分の価格転嫁」が多く挙げられた。枝肉卸売価格が引き続き高値で推移する見通しの中で、意見が分かれた(図10)。また、輸入豚肉も「増加」と「減少」に大差はないものの、昨年の現地相場高と為替の円安基調や、調査時期における米国西海岸港湾での労使交渉難航に伴い、物流の混乱が生じていたことへの懸念があったとみられ、輸入豚肉の販売はやや減少と見通す向きが多くなっている。

ウ 鶏肉

(ア)量販店

 量販店における国産鶏肉の販売見通しは、「増加」の割合が高く、「減少」との間に大きな差が見られた(図9)。「増加」の理由としては「特売回数の増加」が最も多く、次いで「牛肉や豚肉からの需要シフト」、「消費者の経済性志向」が挙げられた。国産鶏肉は、牛や豚の枝肉卸売価格が高止まって推移する見通しから、需要シフトが期待され、堅調に推移するものと見られている。なお、国産鶏肉に比べて輸入鶏肉の「増加」の割合が低い理由としては、そもそもの取り扱いが少ないことに加え、現地相場高や為替の円安傾向などに伴う仕入価格の上昇によるものとみられる。

(イ)専門店

 専門店における国産鶏肉は、量販店の結果と比較すると「増加」の割合は小さいものの、「増加」が「減少」を上回った(図10)。

 牛肉、豚肉、鶏肉いずれも卸売価格や小売価格が上昇している中、国産鶏肉は価格優位性があることから、27年度上半期における販売は、引き続き増加の見通しとなっている。

(3)27年度上半期の部位別販売見通し(卸売業者)

 卸売業者に対し、27年度上半期の牛肉および豚肉の部位別販売見通しについて調査した。

ア 牛肉

 牛肉については、国産は部位によって見方が異なり、輸入は全体的に減少傾向であることが見て取れる(図11)。「減少」の理由として、「仕入価格上昇分の価格転嫁」や「豚肉や鶏肉への需要シフト」を挙げた卸売業者が多かった。

 部位別に見ると、和牛肉は、「かたロース」、「サーロイン」、「ヒレ」といった高価格部位で「減少」が「増加」を上回った。特に、「ヒレ」は「増加」と回答した卸売業者は見られなかった。一方、比較的低価格部位である「かた」、「ばら」、「もも」、「切り落とし」は「増加」の割合が高かった。

 国産品も和牛肉と同様の傾向であり、高価格部位で「減少」の割合が高く、比較的低価格部位で「増加」の割合が高い。

 輸入品(冷蔵)では「ばら」以外は「減少」が「増加」を上回っている。一方、輸入品(冷凍)は、全ての部位で「減少」が「増加」を上回り、「かたロース」、「サーロイン」、「ヒレ」の高価格部位を「増加」とした卸売業者は見られなかった。

 和牛肉や国産品は、卸売価格の上昇が継続する中で、「切り落とし」や低価格部位が増加する一方で、高価格部位は減少すると見通していることが明らかとなった。

図11 卸売業者における牛肉の部位別販売見通し(前年同期比)

イ 豚肉

 豚肉のうち、国産品については大半が「同程度」、「増加」であった(図12)。「増加」の理由として、「牛肉からの需要シフト」と回答する卸売業者が最も多かった。牛肉(国産品および輸入品(冷蔵))の卸売価格上昇から、豚肉(国産品)への需要のシフトが見込まれていることがうかがえる。また、PEDの影響を受けていた豚肉の生産量が、徐々に回復していることも「増加」の要因となっていると考えられる。

 一方、輸入品(冷蔵)および輸入品(冷凍)では国産豚肉ほど顕著ではないものの、「増加」、「同程度」が多く見られた。「増加」の理由としては、「牛肉からの需要シフト」、「国産豚肉からの需要シフト」が多く挙げられている。牛肉や国産豚肉と比べ、価格面で優位であることが一因と考えられる。

図12 卸売業者における豚肉の部位別販売見通し(前年同期比)

 27年度上半期の販売見通しをまとめて見ると、「増加」または「減少」の傾向は、量販店の方が強く表れ、専門店では弱いものとなった。これは、専門店では全品目で「同程度」の割合が最も高く、和牛肉を除き「同程度」がそれぞれ過半数を超えたためである。この背景には、量販店と比較して専門店は固定客が多く、食肉の銘柄・品揃え、価格帯、販売方法(対面販売)を大きく変更しない傾向が強いことが一因と考えられる。

 小売業者においては、特に単価の高い和牛肉が減少し、国産豚肉や国産鶏肉など、より低価格な食肉の販売が増加する見通しとなっている。また、卸売業者における和牛肉や国産牛肉の販売見通しは、高価格部位が減少し、低価格部位が増加するとの見方が多く、国産牛肉から比較的割安感のある国産豚肉への需要のシフトも、小売業者と同様の見通しとなっている。

(4)食肉の販売拡大に向けた対応

 量販店および専門店における、販売拡大に向けた具体的な対応について調査した。

ア 量販店

 量販店の結果について、「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品揃え強化」(牛肉、豚肉、鶏肉)、「銘柄食肉の品揃え強化」(豚肉)、「低価格部位や切り落としの強化」(牛肉、豚肉)、「少量パックの充実化」(牛肉、豚肉)、「総菜や味付け肉の販売強化」(牛肉、豚肉、鶏肉)、「調理方法の提案」(牛肉、豚肉、鶏肉)、において過半数を超えた(図13)。小売価格が上昇する中、消費者の食行動・購買行動に対応した商品開発がうかがえる。

図13 食肉の販売拡大に向けた対応(量販店)

イ 専門店

 専門店においては、牛肉、豚肉、鶏肉いずれも、「調理方法の提案」が最も多く、次いで、「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品揃え強化」の順となっている。各畜種共に回答が過半数を超える項目は、牛肉の「調理方法の提案」のみという結果となっている(図14)。

 小売価格が上昇する中、量販店と同様に消費者の食行動・購買行動に対応した商品作りの姿勢がうかがえるものの、専門店においては、量販店ほど明確な差は見られず、店舗ごとの多様な販売戦略が表れた。

図14 食肉の販売拡大に向けた対応(専門店)

(5)日豪EPA発効に伴う対応

 27年1月15日に日豪EPAが発効し、冷蔵品・冷凍品共に38.5%だった関税率は、発効当初に冷蔵品が32.5%、冷凍品が30.5%にそれぞれ引き下げられた。さらに、同年4月から、冷蔵品が31.5%、冷凍品が28.5%となった。ここでは、量販店および専門店に対して、豪州産牛肉の関税率引き下げに伴う、今後の小売価格や品揃えの対応について聞いた。

ア 豪州産牛肉の取扱状況

 豪州産牛肉の取扱状況を聞いたところ、量販店では「取り扱っている」が86%を占めたのに対し、専門店では52%となっている(図15)。一般的に専門店では和牛肉など特定品目の品揃えが主体であり、量販店に比べて外国産の取扱割合は低い。

図15 豪州産牛肉の取扱状況

イ 今後の豪州産牛肉の仕入価格の見通し(豪州産牛肉取扱あり)

 今後の仕入価格の見通しについて聞いたところ、量販店、専門店で差異が見られた(図16)。

 取り扱いの多い量販店では、「上がる」、「変わらない」が共に4割強で、「下がる」は1割にすぎず、全体では上昇見通しとなっている。一方で、専門店では「変わらない」が約6割で、「下がる」、「上がる」が共に2割前後であり、全体では横ばいの見通しとなっている。関税率は引き下げられるものの、為替の円安基調、干ばつなどによる安定供給への懸念、米国や中国からの堅調な引き合いなど、総合的に見て仕入価格が低下する見通しは少ない結果となっている。

図16 今後の豪州産牛肉の仕入価格の見通し(豪州産牛肉取扱あり)

ウ 今後の豪州産牛肉の取扱意向

(1)豪州産牛肉取扱あり

 豪州産牛肉を取り扱っている小売業者に対して今後の取扱量の意向を聞いたところ、量販店では「変わらない」が半数を超え、現状維持の傾向が見られるものの、「増やす」とする回答も4割を超えており、全体として増加意向となっている(図17)。一方、専門店では「増やす」が2割程度あるものの、「変わらない」が7割を超えており、全体として変わらない意向となっている。

 量販店が専門店に比べて豪州産牛肉の取扱意向が強いのは、価格競争力のある牛肉の低価格帯の品揃えを重視してきたことに加え、他産品も含めた販売促進に取り組んできたことも一因とみられる。

図17 今後の豪州産牛肉の取扱意向(豪州産牛肉取扱あり)

(2)豪州産牛肉取扱なし

 調査時点では、豪州産牛肉を取り扱っていないと回答した小売業者に、今後の取り扱いの有無を聞いたところ、量販店では、「今後、販売する」が約3分の2と前向きであったのに対して、専門店では「販売予定なし」が9割弱を占め、対照的な結果となった(図18)。専門店は、量販店との差別化を図るために国産品主体の品揃えに強くこだわっていることがうかがえる。

図18 今後の豪州産牛肉の取扱意向(豪州産牛肉取扱なし)

エ 今後の乳おすの仕入価格の見通し(豪州産牛肉および乳おす取扱あり)

 豪州産牛肉と一定の競合関係にある国産牛肉(乳おす)についても同様に調査した。乳おすも取り扱っている小売業者に対して、今後の乳おすの仕入価格について聞いたところ、量販店、専門店共に全体として上昇の見通しとなっているが、量販店では、「上がる」が約4分の3と大勢を占めたものの、専門店では4割程度と見方が異なっている(図19)。仕入価格上昇の理由として、飼養頭数の減少による供給量の減少、高値が継続する和牛や交雑種よりも価格優位にある乳おすへの堅調な引き合いなどが挙げられている。

図19 今後の乳おすの仕入価格の見通し(豪州産牛肉および乳おす取扱あり)

オ 今後の乳おすの取扱意向(豪州産牛肉および乳おす取扱あり)

 乳おすも取り扱っている小売業者に対して、今後の乳おすの取扱量の意向を聞いたところ、量販店および専門店共に「変わらない」の回答が過半数を占め、専門店では8割弱となった(図20)。ただし、量販店では、「増やす」も3割を超えており、全体として増加意向が強い結果となっている。量販店では、小売価格の高い和牛や交雑種の代替として乳おすを位置づけていることに加え、根強い消費者の国産志向にも対応したい意向がうかがえる。

図20 今後の乳おすの取扱意向(豪州産牛肉および乳おす取扱あり)

4 おわりに

 27年度上半期の需給状況を見通してみると、国内生産は、牛肉は繁殖基盤の縮小化が継続していることから、出荷頭数の減少が続くとみられる。また、豚肉については、PEDの影響により一時的に減少していた出荷頭数は、徐々に回復することが期待される。一方、鶏肉は、牛肉や豚肉との価格優位性に支えられ、引き続き堅調な引き合いが続くことから、今後も増産傾向が継続するとみられる。

 一方、輸入においては、牛肉は現地相場高が継続しているものの、他国からの引き合いが弱まっていることから、買い付けしやすい環境になるとみられる。豚肉については、北米における増産予測や、ロシアのEU産禁輸措置の影響から現地相場が低下しており、牛肉と同様、買い付けしやすい環境が予想される。一方、鶏肉は、ロシア問題や米国の鳥インフルエンザ発生に伴い、ブラジル産鶏肉への他国からの堅調な引き合いが継続するため、現地相場高が続くことが見込まれている。以上のことから、鶏肉を除いて、輸入環境は前年と比べてやや改善することが予想されている。

 輸入牛肉および豚肉についてはやや需給が緩む可能性もあることから、小売業者や卸売業者においては品揃えや売価設定の競争が一段と厳しくなることが予想される。特に小売業者では消費者の食行動・購買行動に対応した商品づくり、品揃え、売価設定などを強化する取り組みが期待されるところである。

(参考)調査の概要

1.調査方法

 アンケート調査

2.調査対象先と回収率

 右表のとおり

3.調査期間

 平成27年2月2日〜2月27日

表 食肉の消費・販売動向調査の対象先
注:調査対象先は、食肉の小売価格や市況(仲間相場)について、当機構が定期的に調査を
   実施している対象企業(全国の主要量販店および食肉専門店並びに全国の主要卸売業者)

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