調査・報告  畜産の情報 2015年6月号

未利用資源を利用した低コスト飼料生産に向けて
〜北海道でのでん粉排液の飼料化への取り組み〜

札幌事務所 坂上 大樹、調査情報部 廣垣 幸宏


【要約】

 でん粉の製造過程で発生する排液には、良質な生乳を生み出すため乳牛にとって必要な栄養素の1つ「たんぱく質」が多く含まれていることが研究などから明らかになっている。

 北海道のJA中標津町とJAこしみずは、でん粉排液からたんぱく質を取り出す技術、方法を開発し、飼料化することに成功するとともに、輸入に頼ることの多い大豆粕、菜種粕などと同水準またはそれ以下の価格で販売・供給できる低コスト生産も実現した。

 これらの取り組みは、飼料自給率の向上のほか、地域の資源循環、環境対策などへの貢献・波及効果が見込めるものである。

1 はじめに

 ばれいしょは、北海道の畑作地帯において、輪作体系の基幹となる重要な作物であり、 でん粉原料用のばれいしょが生産されているのは国内で北海道だけである。北海道のでん粉工場の操業は、ばれいしょの収穫期に合わせて9月から11月までの期間に行われ、北海道で生産されるばれいしょの約4割〜5割が、「でん粉」に加工される。

 でん粉工場の操業期間中に発生する数万トンのでん粉排液(注)は、従来、広大、大容積の貯留池に一時的に貯留し、半年近くの期間をかけて貯留池内の微生物を利用して浄化のうえ、放流するのが一般的であった。その当時から、貯留池から発する臭気の抑制がでん粉工場の課題であったものの、今と比べ、臭気に対する批判はそれほど強いものではなかった。

 しかし、宅地開発が進むにつれ、郊外に立地するでん粉工場に住宅が接近し、また、農村部での生活環境が都市部並みに改善されたことで周辺住民の環境意識が高まり、貯留池の臭気抑制が強く要求されるようになってきた。このような情勢の変化を受け、でん粉工場では、でん粉排液処理を含む環境改善に対する多額な投資が不可避な状況となっている。

 でん粉排液の飼料化の取り組みは、臭気発生の解消と排水処理を低コストかつ小規模で実現しようというでん粉工場での試みから派生したものであるが、近年の飼料価格の高騰などを背景に、でん粉排液の飼料としての可能性に着目し、飼料資源として活用しようとする動きが見られるようになった。

 本稿では、根釧地域とオホーツク地域で取り組みが進む、でん粉排液の飼料化の動きを紹介するとともに、本格的な飼料化に向けた課題を整理する。

(注)ばれいしょの絞り汁をデカンタ(遠心分離装置)で固液分離することで発生する排液。固形分は精製され、でん粉になる。

2 嗜好性の高い飼料原料として商品化 
  〜もったいない未利用資源開発協議会(根釧地域)〜

(1)経緯

 JA斜里町中斜里澱粉工場(以下「中斜里でん粉工場」という)は、臭気対策として町や国の補助事業などを活用し、平成22年にでん粉排液の処理施設を新たに整備した。この施設は、排液を90〜95℃で加熱し、でん粉排液中の有機物を凝固させ、遠心分離機で回収するものである。これにより貯留池を介さず直接、浄化施設で排液を処理できるようになり、臭気は大幅に改善された一方で、凝固した有機物(以下「凝固物」という)が、副産物として1日当たり約30トン発生、3カ月間の操業期合計で約1600トン発生することとなった。当初、ほ場に直接すき込んで還元することを想定し、土壌にすき込むことが実用的に問題がないか判断するため、凝固物の成分を分析したところ、たんぱく質が豊富に含まれることが分かった。これを受けて中斜里でん粉工場は、飼料として使えるのではないかと考え、管内に酪農の主産地を抱えるJA中標津町と北海道根室振興局根室農業改良普及センター(以下「普及センター」という)に協力を求め、3者による試験的な飼料化の取り組みが動き出した。

 試験段階では、牧草などと混合してサイレージ化することを試みたが、凝固物は水分を多く含むため、混合にムラが発生し、日持ちがせず扱いづらいことに加え、時間が経過とともに腐敗臭が発生し、牛の嗜好性が低下するなどの課題が残された。

 中斜里でん粉工場、JA中標津および普及センターの3者は、凝固物の飼料化へのさらなる展開を目指し、その残された課題を詰めるべく、平成23年に地方独立行政法人北海道立総合研究機構根釧農業試験場、中標津町内のTMRセンター2カ所および酪農家などを加えた21名のメンバーによる「もったいない未利用資源開発協議会(以下「協議会」という)」を新たに立ち上げ、検討を深めることとなった。

 協議会は、同年、国の補助事業(エコフィード緊急増産対策事業)を活用して実用化に向けた取り組みを加速させ、約70%あった凝固物の含水率を約15%まで調整することに成功した。そして、TMRセンターや酪農家の協力の下、嗜好性、栄養価、安全性など、問題がないことを確認したうえで、平成25年11月、これを乳牛用・肉牛用の単味飼料として製品化(以下「ポテトプロテイン」という)した。

(2)飼料価値

 ポテトプロテインの製造工程を見ると、凝固物を取り出す工程は中斜里でん粉工場が、凝固物の乾熱処理はJA中標津町が廃棄物処理会社に委託して行っている(図1)。

図1 ポテトプロテインの製造工程
写真1 左が通常のポテトプロテイン(粉状)、右が粒状のポテトプロテイン
(乾燥撹拌の過程で粉状のポテトプロテインがダマ状になったもので、
製造量の1割程度発生する。両方に品質および利用上の差異はない。)

 ポテトプロテインの成分を見ると、たんぱく質の含有率は約84%と、非常に高濃度に含まれることが分かった(表1)。たんぱく質含量が多い植物性飼料の大豆粕と比較すると1.6倍近くの量が含まれている。協議会メンバーの1人は、「でん粉排液のたんぱく質は、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンなどを多く含むアミノ酸組成であることが40年ほど前の研究で既に証明されている。ポテトプロテインのようなたんぱく含量が高く、良質なアミノ酸を有する植物性飼料は、他には見当たらない。」と語る。

表1 ポテトプロテインの成分含有率(乾物中)と可消化養分総量
資料:協議会の実証試験データに基づき作成。
注1:NDF=中性デタージェント繊維、ADF=酸性デタージェント繊維、TDN=可消化養分総量
注2:大豆粕の数値は、日本標準飼料成分表(2009年版)から引用。

 嗜好性と貯蔵性の確認については、協議会の構成員である1戸の酪農家で行われた。ポテトプロテインを混合した飼料は、嗜好性が良く、残飼は観察されなかったという。また、フレコンバックに充填した状態で倉庫に保管したが、1年を経過しても変敗を起こすことなく、良好な品質が維持されることが確認された。

 この酪農家を調査した際、倉庫に保管されていたポテトプロテインは、製造から2年が経過していたが、カビなどの発生は一切確認できず、鼻を近づけると、蒸かし芋(ばれいしょ)の様な匂いがかすかにする程度であった。

(3)販売単価

 ポテトプロテインの製造、販売は、JA中標津町が担っている。平成26年度のポテトプロテインの販売単価は、1キログラム当たり56.0円(税抜)で、大豆粕の販売単価(JA中標津町での販売価格)と比べ3割〜4割程度安い。

 安価で製造できる理由は以下の4点が挙げられる。

(1) ポテトプロテインの原材料である凝固物は、中斜里でん粉工場から無償提供を受けている。

(2) ポテトプロテインの製造を外部委託することにより、設備投資が不要となり、設備の運用・維持管理費がかからない。

(3) 中斜里でん粉工場から廃棄物処理会社の乾燥施設への凝固物の搬送は、中斜里でん粉工場へのばれいしょ搬入を終えて中標津町へ戻るトラックを利用するなど、原材料の調達に係る輸送費負担の軽減を図っている。

(4) 凝固物を回収するための熱源は、排水処理施設で発生するバイオガス(メタンガスなど)をボイラーで燃焼させた熱を利用するので、凝固物の回収に係るランニングコストが極めてわずかである。

 なお、JA中標津町の担当者の試算によると、「飼料中の大豆粕を全量、ポテトプロテインに代替した場合、平均的な酪農家の購入飼料費を、乳牛1頭当たり年間約2万6000円程度削減できる」という。

(4)現場での利用状況

 平成26年のポテトプロテインの年間販売量は約60トン、売上高は約340万円であり、主な販売先は、中標津町にある有限会社中標津ファームサービス(以下「ファームサービス」という)と株式会社開陽D・A・I(以下「D・A・I」という)の2つのTMRセンターである。

 ファームサービスは、ポテトプロテインを利用する際、主にコーングルテンミール(コーンスターチを製造する際に発生する副産物)の一部をポテトプロテインに置き換えている。ポテトプロテインを混合することにより、粕・糠類を2.6ポイント減らし、粗飼料を3.0ポイント上げている(表2)。

 D・A・Iにおいても、主にDDGS(トウモロコシ蒸留粕)の一部をポテトプロテインに置き換え、ポテトプロテイン前後の配合比率の変化は、おおむねファームサービスと同じような傾向が見られた。2つのTMRセンターでは、乳牛1頭当たりに必要なたんぱく質量の約1割を補うためにポテトプロテインを活用しており、その給与量は1日当たり400グラム程度であった。

表2 飼料の配合比率
資料:ファームサービスの資料に基づき作成。
  注:現物重量に対する比率

 いずれのTMRセンターも、新たな飼料原料を混合する場合などは、飼料の価格、栄養バランスなどを総合的に勘案して、飼料全体の配合を組み替えているので、ポテトプロテイン混合前後の配合比率を単純比較することはできないが、ポテトプロテインを利用することにより粕・糠類の現物重量を減らすことができるため、粗飼料の配合比率を相対的に引き上げる効果が期待できる。

(5)課題と対応

 ポテトプロテインは、1トン製造するのに約4トンの凝固物を必要とするので、でん粉工場から排出される凝固物の全量、約1600トンを利用した場合、約400トン製造できる計算になる。しかし、平成26年にJA中標津町が受け入れた凝固物の量は約260トンと、全排出量のおよそ6分の1にとどまっている。

 その理由は、中斜里でん粉工場から別海町にある廃棄物処理会社の乾燥施設まで凝固物を輸送する手段が、中標津町から中斜里でん粉工場にばれいしょを搬入するトラックの稼働状況に大きく依存しているからである。前述のとおり、凝固物の輸送は、中標津町から中斜里でん粉工場にばれいしょを搬入するトラックの帰り便を利用しているため、その運行本数や運行ルートの兼ね合いから、2日に1回しか輸送できない。さらに、震災復興などの公共工事が増加したことによるトラックドライバー不足などが影響して、輸送賃の値上がりが続いていることから、トラックをチャーターしてまで輸送するのは難しい状況であるという。そのため、ポテトプロテインの原料として受け入れられない凝固物は、ほ場に直接すき込んだり、堆肥化したりするなどして土壌に還元されているのが現状である。

 また、製造原価の大半が廃棄物処理会社で行う乾熱処理に係る経費で占められており、燃料(重油)価格が製造原価に大きく影響する。これに対し、JA中標津町の担当者は、「廃棄物処理会社から発生する排熱を有効利用できれば、乾熱処理に係る経費が大幅に縮減され、凝固物の全量受入れ態勢に向け、トラックのチャーター代を捻出できるほか、販売単価を1キログラム当たり50円以下とすることも可能である。こうした取り組みは、資源を有効に利用し、排出物を限りなくゼロに近づけていくことを目指すゼロ・エミッションの促進にもつながると考える。今後、この実現に向けて、行政機関などに対し協議会やJA中標津町の活動の意義について理解してもらい、さらなる協力、支援を求めていく。」としている。

3 他原料と混合してサイレージを生産
  〜JAこしみず(オホーツク地域)〜

(1)経緯

 JAこしみずは、平成23年、専門家の協力を得て、硫酸を利用して、でん粉排液の臭気の原因物質であるたんぱく質を直接除去する技術を開発し、特許を取得した。このたんぱく質(以下「回収タンパク」という)の成分について、北海道オホーツク振興局網走農業改良普及センター清里支所(以下「清里支所」という)に分析を依頼したところ、溶解性のたんぱく質を多く含むことが判明した。また、飼料利用の安全性についても分析機関に依頼し、その安全性を確認した。

 でん粉粕(ばれいしょの搾り粕)の利用促進を図る目的で、平成4年からでん粉粕のサイレージ生産を行い、町内の畜産農家に供給してきた経験や実績があるJAこしみずは、この回収タンパクをでん粉粕などと混合してサイレージ化して活用することに決めた。

 この決定に際しては、平成24年に町内に設立されたTMRセンター(株式会社こしみずエコフィードサービス、以下「エコフィードサービス」という)が、回収タンパク入りのでん粉粕サイレージ(以下「回収タンパク入りサイレージ」という)の買入れを希望し、安定した供給先が長期に渡り確保できる見通しになったことが、大きなきっかけとなっている。

(2)飼料価値

 その製造過程は図2のとおり。

図2 回収タンパク入りサイレージの製造工程
提供:JAこしみず
  注:サイレージ生産の一部はエコフィードサービスでも行っている。

 回収タンパク入りサイレージのたんぱく質含有率は15.9%と、でん粉粕サイレージと比較して2倍以上含まれる(表3)。関係者によれば、「乳牛1頭1日当たり7キログラムの回収タンパク入りサイレージを給与すると、必要なたんぱく質量の1割程度を補える。回収タンパクそのものは、溶解性たんぱく質が高く、結合たんぱく質が低い。一部であれば大豆粕などを回収タンパク入りサイレージに置き換えることが可能。」とのことである。一方、ばれいしょに豊富に含まれるカリウムの過剰摂取により乳熱などの発症が懸念されるが、回収タンパク入りサイレージ中のカリウム含量は、1.13%(乾物中)と、牧草サイレージやトウモロコシサイレージと同程度またはそれ以下の値であったので、この点については問題ないとしている。

表3 回収タンパク入りサイレージの
粗たんぱく質含有率(乾物中)と可消化養分総量
資料:清里支所およびエコフィードサービスの分析結果に基づき作成。
写真2 回収タンパク入りサイレージ

 JAこしみずと清里支所では、町内の1戸の酪農家において、36頭の搾乳牛に対して、当該酪農家で通常給与しているTMRの一部を回収タンパク入りサイレージに置き換えて、給与試験を行った。

 その結果、乳量(出荷乳量)、乳成分の計測値は、ともに通常のTMRを給与した場合との間に大きな差は認められなかった(図3)。回収タンパク入りサイレージの給与は、一般的な飼料原料と置き換えても遜色ない生乳の生産性が得られるといえる。

図3 乳量と乳成分
資料:清里支所の試験結果に基づき作成。
注1:試験期間は、通常のTMR給与期間(8日)、回収タンパク入りサイレージを含むTMRの
   給与期間(8日)、飼料の切り替え準備期間を3日の計19日間。回収タンパク入り
   サイレージは1頭当たり10キログラムを給与。
注2:上表の値は1日ごとの出荷乳量、乳成分の計測値(36頭分)を試験期間(8日間)で
   平均した値である。

 

(3)現場での利用状況

 エコフィードサービスは、会社設立当初から回収タンパク入りサイレージを受け入れており、平成26年には、回収タンパク入りサイレージ製造量(3575トン)の約9割に相当する3204トンの供給を受けた。

 冬場にサイレージが凍結しないよう水分調整材としてフスマを加えるなど工夫しながら、エコフィードサービス構成員が飼養する約1100頭の乳牛に対し回収タンパク入りサイレージの周年給与を実現している(写真3)。

写真3 回収タンパク入りサイレージを混合したTMR

 エコフィードサービスがJAこしみずに対して支払う額は、回収タンパク入りサイレージの生産に係る資材購入費や輸送費などの実費相当額のみであり、1キログラム当たりの購入単価に換算すると10円未満であるという。これについて、JAこしみずの担当者は、「酪農家である利用者に対しては、以前から実費相当額のみを負担してもらっていた経緯がある。そもそも厳しい経営が続く生産者から対価を得るという考えはない。JAこしみずが本来負担すべき処分経費見合いの予算の範囲で回収タンパク入りサイレージを生産しているので、JAこしみず全体の収支の中で当該経費は吸収できている。」と語る。

 購入単価の圧倒的な安さなどから、エコフィードサービスにおける回収タンパク入りサイレージの配合比率は約1割を占める(表4)。平成26年の配合比率は、平成24年に比べて、粕・糠類を13.2ポイント減らし、粗飼料を10.1ポイント上げている。

 TMRセンターの設立当初の平成24年は、TMR製造開始間もないことや回収タンパク入りサイレージ給与が、試験的な意味合いもあったことから、これまで給与してきたでん粉粕サイレージと同じ感覚で使い始めたという。その後は試行錯誤を繰り返し、粕・糠類の配合比率を減らしても乳量に影響がなく、その減らした分の一部を粗飼料に代えることで疾病や事故の減少につながるなどの効果を実感しながら徐々に粕・糠類の配合量を減らしていき、現在の配合比率に落ち着いた。

 回収タンパク入りサイレージは、たんぱく源を補う濃厚飼料に近い性格の飼料であるが、エコフィードサービスでは、大豆粕などの粕類や穀類と比べて繊維含量が多く含まれる特性を生かして、繊維供給の不足分を補う粗飼料源としても活用している。

表4 飼料の配合比率
資料:エコフィードサービスの資料に基づき作成。
  注:現物重量に対する比率

(4)課題と対応

 JAこしみずのでん粉工場は、操業期間である9月から11月まで24時間体制で稼働しているものの、人員配置、工場全体の予算などの都合により、でん粉排液からたんぱく質を除去する回収ラインの稼働は、夕方から朝方まで停止せざるを得ないという。そのため、1日当たり約700トン発生するでん粉排液のうち、回収タンパクの原料として利用される量は約300トンと、利用率は半分以下である。残りは液肥としてほ場に還元されている。回収タンパク入りサイレージの供給量をもっと増やして欲しいという酪農家からの要望は強いというが、これに対し、JAこしみずの担当者は、「増産には、人員の増加や新たな設備投資を行う必要があり、生産コスト上昇につながるため、JAこしみず全体の収支の中では吸収しきれない。」として、あくまで生産者負担を求めず、現状の生産体制を維持したい考えだ。

おわりに

 今回は、生乳生産の視点で調査を行ったが、2つの事例ともに肉牛に対する給与も行っている。JA中標津町では、ポテトプロテインを給与した家畜から生産された畜産物を、地域のブランド展開につなげられないか模索し始めている。JAこしみずでは、6戸の肉牛生産者に対して回収タンパク入りサイレージを供給しており、肉牛の嗜好性に関しても問題がないことが確認されている。ただし、肥育もと牛生産者への供給が主であるため、肥育期における給与が肉質や脂肪交雑の形成などにどのような影響を与えるかの検証はこれからである。

 今回の2つの事例は、飼料費低減につながる畜産農家側のメリットだけでなく、臭気対策、排水処理費用の低減、副産物の有効利用という点で、でん粉工場においても恩恵を享受できるものであり、北海道のみならず、かんしょでん粉の産地である九州のでん粉工場でも導入を検討する余地は十分にあるのではないかと思料される。両地域ともに背後に畜産産地を抱えており、積極的な活用が実現できれば、地域の飼料自給率向上に大きく貢献することが期待される。

 なお、各事例での低コスト生産は、ひとえに地域内や地域間でのさまざまな関係者との協力・連携および耕種農家と畜産農家の相互理解によって成り立っており、検討に当たっては行政、企業、地域が一体となって連携促進を図っていくとともに、未利用資源の活用のメリットが地域全体で享受できる仕組み、体制を整備する必要がある。

 最後に、今回の取材にご協力いただきました中標津町、斜里町および小清水町の農業協同組合、でん粉工場、農業試験場、農業改良普及センター、TMRセンター、酪農家の皆さまに改めてお礼申し上げます。

(参考文献)

・大原 久友他(1968)「ポテトプロティンの飼料価値について」『帯広畜産大学学術研究報告』第T部pp68-73


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