畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 若齢牛価格、肥育もと牛需要増により過去最高水準で推移− 2015年3月
需給動向 海外

◆豪 州◆

若齢牛価格、肥育もと牛需要増により
過去最高水準で推移


肉牛取引価格、1月に入って急騰

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、家畜市場の肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、これまでの最高記録(1キログラム当たり428豪セント:2011年12月)を超え、2月3日時点で同451.25豪セント(424円:1豪ドル=94円)となった(図2)。同様に、と畜場の肉牛取引価格も堅調に推移しており、1月28日時点では肥育去勢牛が同229豪セント(前年同期比39.6%高、215円)、経産牛が同195豪セント(同77.3%高、183円)となっている。

図2 家畜市場におけるEYCI価格の推移
資料:MLA
注1:枝肉重量ベース
  2:年度は7月〜翌6月
  3:東部3州(QLD州、NSW州、VIC州)の主要家畜市場での
   若齢牛加重平均取引価格で、肥育牛や経産牛とも9割近い
   相関関係にある家畜市場の指標価格

 価格上昇の要因としてMLAは、家畜市場、と畜場ともに出荷頭数は依然として多い状況が続いているものの、前年まで干ばつによって肉牛の淘汰が進んでいたクイーンズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ(NSW)州で継続的に降雨が見られることから、牧草肥育牛生産者とフィードロットからの肥育もと牛需要が供給を上回っていることを挙げている。また、1月には主要取引通貨である米ドルに対し豪ドル安が進行し、同月平均で1豪ドル当たり0.77米ドル(前年同月比11.2%安、前月比5.1%安)と、2009年前半以前の水準にまで下落し、豪ドル安による輸出業者の収益増も国内の肉牛価格を押し上げる一因となった(図3)。

図3 豪ドル為替の推移
資料:豪州連邦準備銀行(RBA)

2015年1月の牛肉輸出は米国向けが依然好調

 豪州農漁林業省(DAFF)が2月4日に公表した「Red Meat Export Statistics」によると、2015年1月の牛肉輸出量は6万7537トン(前年同月比2.8%減)と、前年同月を下回ったのは2012年9月以来となった(図4)。しかし、干ばつの影響は依然色濃く残り、過去5年平均比では3割増と、1月としては異例の高水準を維持しており、QLD州やNSW州北部の食肉処理加工施設では、2月の半ばから後半までと畜の予約が埋まっているとの現地の報告もある。

 主要輸出先を見ると、

・米国向け2万5809トン(同86.6%増)
・日本向け1万5501トン(同0.1%増)
・韓国向け7474トン(同26.8%減)
・中国向け4143トン(同58.6%減)

となり、韓国および中国向けが大幅に落ち込む中、米国向けが豪州の輸出をけん引することとなった。

図4 主要輸出先別牛肉輸出量の月別推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース

 また、同月は、冷蔵が1万8804トン(同15.0%増)、冷凍が4万8732トン(同8.3%減)と冷蔵の好調が目立ったが、冷蔵の輸出先別内訳を見ると、日本向けの7171トン(同2.0%減)に次いで、米国向けが5665トン(同115.5%増)となっている。米国は従来、加工用の冷凍牛肉が大半を占める市場であったが、国内の牛肉不足を背景に、最近では冷蔵牛肉への引き合いを強めている。

牛総飼養頭数は過去20年で最低の水準となる見通し

 MLAは1月27日、2015年の肉牛産業予測を公表した(表4)。MLAは、2013年および2014年のと畜頭数が記録的な水準であったことに加え、2014年の生体牛輸出頭数が過去最高であったことから、牛総飼養頭数は、35年来の高水準であった2013年をピークに減少に転じ、2015年は、前年比5.8%減の2680万頭となり、2016年には過去20年で最低の水準に落ち込むと見込んでいる(図5)。

図5 牛総飼養頭数の見通し
資料:MLA、ABARES
注1:各年6月末時点、乳牛を含む
  2:2014年は推定値、2015年以降は予測値
表4 肉牛産業の見通し
資料:MLA
注1:牛総飼養頭数は各年6月末時点、乳牛を含む
  2:牛と畜頭数は子牛除く、牛肉生産量は子牛肉除く
  3:生産量および国内消費量は枝肉重量ベース、輸出量は船積重量ベース

 また、2015年のと畜頭数は、同年後半から牛群再構築による保留が進むことから、前年比15.0%減となり、2017年まで減少するとしている。

 一方、同年の牛肉輸出量は、供給減に伴い前年から18.6%の減少を見込んでいるものの、米国での生産減少や豪ドル安を背景に、米国を中心に海外からの引き合いは依然強く、牛肉生産量の7割が輸出に仕向けられるとみている。また、生体牛輸出頭数も前年から3割の減少としているが、東南アジアを中心とした堅調な牛肉需要から、2013年程度の高い水準を維持するとしている。

(調査情報部 伊藤 久美)


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