需給動向 国内 |
平成26年12月の牛肉需給は、生産量は3万3664トン(前年同月比2.7%減)と、全国的な出荷頭数の減少により前年同月をわずかに下回った。輸入量は3万3944トン(同12.8%減)と、為替の円安進行や日豪EPA発効日の決定を踏まえた動きから前年同月をかなり大きく下回った。推定出回り量は2カ月連続で2ケタ減の7万1522トン(同13.5%減)となったものの、推定期末在庫は前月から4084トン取り崩し、13万2425トン(同8.7%増)となった(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。 枝肉卸売価格は堅調も、等級間価格差は縮小へ 東京市場における枝肉卸売価格は、24年以降、上昇基調で推移しており、26年も11月に8年ぶりに去勢和牛A−3が1キログラム当たり2000円を超えるなど、引き続き堅調であった(図1)。全国的な頭数不足や需要回復、輸入牛肉の仲間相場の高止まり、和牛の輸出量の増加などが相場をけん引、または下支えしているとみられ、直近の枝肉価格は、概ね20年のリーマンショック前の時期の水準まで近づいてきている。 また、枝肉卸売価格を長期的に見ると、格付等級間の価格差が縮小していることがわかる。例えば、去勢和牛A−5とA−3の価格差は、19年には平均で612円あったものが、26年には440円まで縮まっている。この傾向は、主に次の2つの要因によるものと考えられる。
格付頭数割合の変化と赤身志向 1つ目は、格付頭数割合の変化が挙げられる。全格付頭数における等級別の割合を見ると、A−5およびA−4は増加している一方で、A−3およびA−2は減少傾向で推移している。こうした傾向は、24年以降に強く表れており、26年にはA−5とA−3の割合が逆転するまでになった(図2)。これは、肉質重視の品種改良や飼養管理技術の向上などの長期的な背景に加え、子牛取引価格の高止まりなどによる肥育農家の経営悪化に伴い、肥育農家が収入を増やすために、肉質の良い牛肉を生産しようとする意識が強まっていることが背景にあると言われている。さらに、23年8月の大規模経営者の倒産も、A−3およびA−2の発生割合の減少に少なからず影響しているものとみられる。 2つ目は、消費者の志向がいわゆるサシから赤身へと移っていることが挙げられる。長らく低迷した景気動向に伴う消費者の経済性志向や、健康志向の高まり、さらには、今や65歳以上の人口が4人に1人の割合に達するほど進行している高齢化などにより、脂肪分の少ない赤身肉への需要が増加しているものとみられる。
需給ギャップ、拡大続く 以上のように、格付頭数割合の変化と消費者の赤身志向の高まりは、需給ギャップを拡大してきた。肉質重視の品種改良は、特定の種雄牛の供用率の上昇による近交係数の上昇、ひいては、遺伝的多様性の喪失や遺伝病の発生を招くことが懸念されている。しかしながら、輸入牛肉との差別化や輸出促進を踏まえれば、肉質向上への取り組みは国内生産を維持する上で大きな意義を持っている。一方、今後、さらに高齢化が進行していく中で、赤身肉への需要はますます増えていくことが予想されることから、実需者などからは消費者ニーズに見合ったバランスの良い生産を望む声が多く挙がっている。こうしたことから、生産者には牛肉需給や輸出入環境など総合的な視点を踏まえた肉用牛生産が求められているといえよう。 (畜産需給部 山口 真功)
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