需給動向 海外

◆米 国◆

牛飼養頭数、8年ぶりに増加


総飼養頭数、前年比1.4%増と9000万頭超えも視野に

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が1月30日に公表した牛の飼養動向調査「Cattle」によると、2015年1月1日現在の飼養頭数は、前年比1.4%増(127万4000頭増)の8980万頭となった(図1)。牛の飼養頭数は、2011、2012年の干ばつにより、繁殖雌牛を中心にと畜が進んだことなどにより牛群が縮小していたものの、2013、2014年に放牧環境が回復したことなどを受けて、繁殖雌牛の保留が進んだため、8年ぶりに前年を上回ることとなった。今後、良好な放牧環境が継続し、堅調な需要により肥育もと牛価格が高値で推移した場合、さらに繁殖農家の増頭意欲は高まるものとみられる。

図1 牛飼養頭数の推移
資料:USDA/NASS
  注:各年1月1日現在

雌牛頭数増加、今後の増頭に期待

 飼養頭数を種類別に見ると、肉用繁殖雌牛(経産牛)は前年比2.1%増(60万8000頭増)の2969万3000頭と雌牛の保留傾向が高まる結果となった(表1)。繁殖雌牛の回復の兆候は、干ばつの影響が緩和されつつあった2013年頃から表れており、これまで減少幅は縮小傾向で推移してきた。

 また、現地関係者の間でも、2014年の繁殖雌牛頭数のと畜頭数が前年を大幅に下回って推移していたことから、増頭の可能性が示唆されていた。

 加えて、2015年以降の牛飼養頭数増加を左右する肉用繁殖後継牛の頭数も、肥育もと牛や雌牛価格の上昇により繁殖農家の増頭意欲が高まっていることから、同4.1%増(22万6000頭増)の577万7000頭と過去5年で最も高い増加幅となった。

表1 部門別飼養頭数の推移
資料:USDA/NASS
注1:表中の※1は500ポンド以上、※2は500ポンド未満
  2:各年1月1日現在

主要生産州の飼養頭数は、前年を上回る水準

 飼養頭数を州別に見ると、主要な生産州では、おおむね前年の水準を上回った。中でも全米最多頭数を誇るテキサス州では、前年比6.3%増(70万頭増)の1180万頭となった。同州では北部で依然、干ばつの影響が残るものの、それ以外の南部などでは飼養環境が改善されていることから、肉用繁殖雌牛および後継牛ともに前年を上回り、特に繁殖後継牛は同7.6%増と目立っている。また、カンザス州やオクラホマ州などでも、繁殖雌牛の保留や増頭傾向が強く表れており、それぞれ同8.3%増、同24.6%増となっている(表2、3)。

 一方、全米第2位の飼養頭数を有するネブラスカ州では、全体の頭数は同0.8%増とわずかに増加したものの、肉用繁殖雌牛頭数および繁殖後継牛はそれぞれ同1.2%減、同2.5%減とわずかに前年を下回った。これは、繁殖基地である南部からの繁殖雌牛の引き合いが強かったことによると考えられる。

 USDAでは現在、と畜頭数が減少する中で雌牛のと畜頭数も減少していることから、2015年の牛肉生産量は同1.7%減少と見込んでいる。

表2 繁殖雌牛頭数の推移
資料:USDA/NASS
注1:2014年飼養頭数上位10州
  2:各年1月1日現在
表3 繁殖後継牛頭数の推移
資料:USDA/NASS
注1:2014年飼養頭数上位10州
  2:各年1月1日現在
(調査情報部 山神 尭基)


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