需給動向 海外

◆中 国◆

乳価は引き続き下落傾向


乳価の大幅な下落により、一部の酪農家は生乳を廃棄

 中国農業部によると、生乳の農場出荷価格(乳価)は2014年1月以降、下落基調にあり、2015年1月には1キログラム当たり3.6元(68円:1元=19円)となった(図26)。現地報道によると、国内乳業メーカーは乳飲料や乳製品の原料として輸入粉乳の使用割合を増やしており、国産生乳を買い叩いているとされる。また、近年、大手乳業メーカーは生乳の品質を確保するため、自社農場や契約農場からの調達を増加させ、契約外の農場との取引を中止するケースも見られている。こうした状況の中、小規模酪農家を中心に経営環境が悪化しており、山東省や河北省、内蒙古自治区などの一部の酪農家は、生乳を廃棄したり、乳用牛を淘汰する動きを強めている。

 一方、中国農業部は酪農家を保護するため、乳業メーカーに対して、適正な価格で生乳取引を行うよう促している。しかし、乳製品の国際相場が軟化している現下では、乳業メーカーは乳価の引き上げや取引の拡大について消極的な姿勢を見せており、当面、乳価の上昇は見込めない状況にある。

図26 生乳の農場出荷価格の推移
資料:中国農業部畜産局よりALIC作成
  注:統計の集計対象範囲は河北、山西、内モンゴル、遼寧、黒龍江、
   山東、河南、陝西、寧夏、新疆の10省で、全国の生乳生産量の
   8割強を占める。

2014年の全粉乳輸入量は67万1000トン、脱脂粉乳が253000トン

 2014年の全粉乳の輸入量は、前年比8.3%増の67万1000トンとなった(表9)。国別輸入量を見ると、全体の9割以上を占めるニュージーランド(NZ)が61万3000トン(同9.0%増)と増加したほか、豪州やウルグアイ、アルゼンチン、チリといった南米からの輸入量も増加した。

表9 全粉乳の輸入量の推移
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード040221および040229(全粉乳)で集計

 また、2014年の脱脂粉乳の輸入量は、前年比7.6%増の25万3000トンとなった(表10)。このうちNZが11万5000トン(同7.0%減)と輸入量全体の4割以上を占め、米国4万9000トン(同7.6%減)、ドイツ1万7000トン(同8.6%増)と続いている。

表10 脱脂粉乳の輸入量の推移
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード040210(脱脂粉乳)で集計

 粉乳の輸入について、2014年は上半期に前年を大きく上回るペースで輸入されたが、下半期は前年を下回り輸入の伸びは鈍化した。この要因として中国農業部は、一部の乳業メーカーによる粉乳在庫の積み増しを挙げている。

 一方、2014年の育児用調製品(注)の輸入量は、12万3000トン(前年比0.3%増)と前年並みとなった(表11)。中国政府は、大小さまざまな海外メーカーの輸入製品を整理するため、2014年5月から海外乳製品メーカーに対する登録管理制度を実施している。海外産育児用粉乳の需要が高まっているにもかかわらず、輸入量が前年並みとなったのは、本制度の施行により一部の未登録の商品が国内市場から排除されたためとみられている。

表11 育児用調製品の輸入量の推移
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード190110(育児用調製品)で集計

 また、国別に見ると、NZからの輸入が前年比46.9%減と大幅に減少した。これは、NZ大手乳業メーカー、フォンテラの製品にボツリヌス菌が混入した可能性を受けて、中国政府が2013年8月から2014年11月にかけて、同社製のホエイパウダーと育児用粉乳原料の輸入を停止する措置を講じていたことによる。NZ産のシェアが低下する中、オランダ、アイルランドなどEU諸国の乳業メーカー各社は、中国向け輸出の拡大を図ったことで、シェアを伸ばした形となった。

(注)輸入育児用調製品の9割以上が育児用粉乳

(調査情報部 木下 瞬)

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