需給動向 海外

◆E U◆

価格が下落する中、輸出需要を増す脱脂粉乳


2014年11月の生乳出荷量、前年同月比2.0%増

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、EUの2014年11月の生乳出荷量は、前年同月比2.0%増の1131万トンとなり、17カ月連続で前年同月を上回った(図15)。また、2014年1〜11月の累計では、前年同期比4.9%増の1億3642万トンと、前年同期を632万トン上回っている。

図15 生乳出荷量の推移
資料:ZMB
  注:2014年は暫定数値

 一部の国ではクオータ超過による課徴金の発生が見込まれているが、生産は堅調に推移している。EU全体の生乳出荷量の半分以上を占める上位4カ国の状況(2014年1〜11月までの累計)を見ると、

・ドイツ:2883万トン(同3.9%増(107万トン増))
・フランス:2320万トン(同6.2%増(136万トン増))
・英国:1251万トン(同8.8%増(110万トン増))
・オランダ:1144万トン(同2.3%増(26万トン増))

となっている。ドイツは、2013年、クオータを1.9%超過し、1億6387万ユーロ(221億2245万円:1ユーロ=135円)と加盟国の中で最も多くの課徴金を支払っているが、2014年はそれをさらに上回るペースで推移している。

2014年12月の生乳取引価格、前年同月比17.4%安

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、2014年12月のEU域内主要乳業メーカー16社の平均生乳取引価格は、100キログラム当たり32.95ユーロ(4448円)と前月から同1.15ユーロ安(155円安、前年同月比17.4%安)となり、かなり大きく値を下げた(図16)。

図16 生乳価格の推移
資料:LTO
  注:域内主要乳業16社の平均値

 生乳価格は、5カ月連続で前年同月を下回っており、この下落基調に歯止めが掛かる気配は見られない。直近のピークとなる2014年2月は、同40.81ユーロ(5509円)であったことから、この10カ月で21.6%安と大きく値を下げた。LTOによると、2015年1月以降も値下げを公表している主要乳業メーカーが多いとしており、生産者にとって経営環境の悪化が続くが、大手乳業メーカーの中には財政事情が厳しく、生産者への乳代支払いを2週間遅らせる事態も出ているとしている。生乳取引価格の下落は、業界の景況を反映した結果であり、今後のEU域内の生乳供給に大きな影響を及ぼしかねない。

価格の低下とともに輸出需要が増大する脱脂粉乳

 乳製品価格は、生乳供給量が増加する中で中国およびロシアからの乳製品需要が減少していることから、下げ止まらない状況となっている。

 しかし一方では、価格の下落とともにアジアなどからの需要が高まっており、また、ユーロ安で推移する為替相場も追い風となり、一部のEU産乳製品の輸出は伸びている。なお、品目ごとの状況は次のとおりである。

 チーズは、最大の輸出先であったロシアの禁輸措置を受けた後、代替市場の確保が進まず、価格の下落は止まっていない。(図17)。

図17 チーズの輸出量と価格の推移
資料:欧州委員会

 バターもロシアが最大の輸出先であったものの、価格の下落とともに輸出需要を得て、輸出を増やしている(図18)。

図18 バターの輸出量と価格の推移
資料:欧州委員会

 全粉乳は価格の下落が続く一方、ニュージーランド産が席巻する全粉乳市場に食い込むことは難しく、輸出は伸びていない(図19)。

図19 全粉乳の輸出量と価格の推移
資料:欧州委員会

 価格の下落により輸出を大きく伸ばしているのが脱脂粉乳である(図20)。しかし、輸出は堅調であるものの、価格の下落は続いており、公的買入れの実施も時間の問題とされている。

図20 脱脂粉乳の輸出量と価格の推移
資料:欧州委員会
(調査情報部 中野 貴史)

元のページに戻る