需給動向 海外

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今後の生乳生産、減少に転じる見通し


12月までの生乳生産、北島を中心に増加

 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2014年11〜12月の生乳生産量は、585万4000トン(前年同期比3.1%増)となり、2013年8月以降増加傾向で推移している(図23)。ただし、これは主にニュージーランド(NZ)全体の生乳生産量の約6割を占める北島での増加によるものであり、南島はわずかな増加にとどまっているとみられている。

図23 生乳生産量の推移
資料:DCANZ
  注:年度は6月〜翌5月

 北島では、十分な降雨と適度な気温により、牧草の生育状況が良好である一方、南島では、主要酪農地帯であるカンタベリー地方を中心に、乾燥気候が進展している。2015年1月には、正式に一次産業相が同地方の乾燥気候に関して、懸念の声明を発表する事態となっており、今後の生産への影響が懸念されている。

 なお、2014/15年度(6月〜翌5月:生乳生産年度)の12月までの生乳生産量の累計は、1362万6000トン(前年同期比4.1%増)と、前年同期をやや上回っている。

乳製品輸出量、おおむね増加

 2014年11〜12月の主な乳製品の輸出量は、

・脱脂粉乳10万2486トン(前年同期比17.3%増)
・全粉乳34万3901トン(同4.6%増)
・バター9万4932トン(同15.2%減)
・チーズ5万8550トン(同12.2%増)

となった(図24)。脱脂粉乳および全粉乳は、最大の輸出先である中国向けが減少しているものの、東南アジアや中東・北アフリカからの需要が好調なことで前年同期を上回っている。一方、バターは、米国や中東・北アフリカからの需要は好調である一方、中国向けがこれら諸国向けの増加幅を上回って減少したことから、前年同期を下回った。また、チーズについては、主要輸出先である日本、豪州、韓国、中国向けがいずれも好調であり、前年同期を上回っている。

 なお、2014/15年度(7月〜翌6月:会計年度)の12月までの輸出量の累計では、すべての品目で、前年同期を上回っている。

図24 乳製品輸出量の推移
資料:Statistics NZ

国際価格、バターは上昇傾向

 2015年1月20日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:NZ最大手乳業メーカー、フォンテラ主催の電子オークション、月2回開催)における平均取引価格は、

・脱脂粉乳1トン当たり2389米ドル(28万円:1米ドル=119円、前年同期比49.1%安、前回比0.1%高)

・全粉乳同2402米ドル(29万円、前年同期比51.4%安、前回比4.1%高)

となった(図25)。粉乳類およびチーズの価格は2014年12月に下げ止まり、変動しつつも横ばいからわずかに上昇している。一方、バターは2014年11月以降、急上昇している。現地報道によると、米国の乳製品消費が経済の回復に伴い堅調に推移し、バター在庫が減少しているため、NZ産バターへの需要が増加していることが背景にあるとしている。実際に、2014年11〜12月のNZから米国へのバター輸出量は、前年同期の5倍に達している。

図25 GDTの乳製品価格の推移
資料:GDT

最大手乳業メーカー、生乳生産見込みを下方修正

 NZ全体の集乳量の約9割を占める最大手乳業メーカー、フォンテラは2015年1月、2014/15年度(6月〜翌5月)の自社の集乳量(生乳生産量に相当)見込みについて、昨年12月時の前年度並みの予想から、前年度比3.3%減に下方修正した。同年度の12月までのNZ全体の生乳生産量が前年を4.1%上回っていることを考慮すると、2015年1〜5月にかけて前年同期比7%ほど生乳生産量が減少することになる。

 これは、既述のカンタベリー地方の乾燥気候の影響やそれに伴う乾乳期への早期移行、前年に比べて低い生産者乳価を背景とした補助飼料利用の減少が影響しているとみられる。

(調査情報部 根本 悠)

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