需給動向 海外

◆中国◆

豚飼養頭数の減少で懸念される
需要期に向けた供給不足


国慶節以降の豚飼養頭数は減少

 中国農業部によると、2014年12月の豚飼養頭数は4億2155万頭(前年同月比7.8%減)となった(図10)。豚飼養頭数は2014年5月以降緩やかな増加傾向にあったものの、9月以降減少に転じている。また、繁殖母豚頭数は2013年1月以降、減少傾向にあり、2014年12月は4287万頭(同13.2%減)となった。

図10 豚飼養頭数の推移
資料:中国農業部よりALIC作成
  注:4000カ所の定点観測による推計値

 2014年1月の春節(旧正月)以降、豚肉は供給過剰にあるとされ、豚価は2014年上半期に大きく下落した。このため、生産者の経営環境が悪化し、零細農家を中心に豚の早期出荷や繁殖母豚の淘汰が行われ、飼養頭数は前年同期を下回る状況が続いている。なお、中国では10月上旬が大型連休(仲秋節、国慶節)に当たり、豚肉の需要期となる。このため、2014年5月から9月にかけての豚飼養頭数の増加は、豚価の上昇を見込んだ生産者が増頭を行ったものとみられる。

 中国では、一般的に冬が豚肉の需要期となり、夏が不需要期に当たる。豚出荷価格を見ると、こうした季節変動をおおむね反映しており、2014年12月は1キログラム当たり13.4元(254円:1元=19円)となった(図11)。しかし、2014年は豚肉の供給過剰に加え、「中央八項規定」(倹約令)(注1)による消費の減退で、豚価は前年同月を下回る状況が続いている。中央政府は、2014年上半期の豚価の下落に対して、3月と5月に計15万3000トンの豚肉の買付けを行い、価格安定を図った。5月以降、豚価が上昇に転じたため、その後の買付けは実施されていない。

図11 豚出荷価格の推移
資料:中国国家発展改革委員会よりALIC作成

 政府が生産者の収益性の指標値とする豚/穀物比(注2)は、12月時点で5.7と損益分岐点の5.5を上回っている。直近の豚価は下落傾向にあるものの、トウモロコシ価格の上昇幅が小さいため、生産者の収益はそれほど悪化していないとみられる。しかし、生産者の収益があまり好転していないため、増頭意欲はみられず、飼養頭数の減少と相まって最需要期に当たる春節(2015年は2月中旬)に向けた豚肉の供給不足が懸念されている。

(注1)2012年12月に中国共産党が採択した倹約を励行する規定。本規定では公費による接待・宴席や贈答品の接受などが禁じられている。

(注2)1キログラム当たり豚肉(生体)価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格。損益分岐点は5.5とされ、政府の目標基準は6である。

2014年の豚肉輸入量、前年比3.2%減の56万4337トン

 2014年の豚肉輸入量は、前年比3.2%減の56万4337トンとなった(表8)。これまで豚肉輸入は年々増加傾向にあったが、2014年は国内需給を反映して、前年を下回る形となった。最大の輸入先は米国であるが、中国政府が2013年3月からラクトパミンの残留検査に対する規制を強化しているため、輸入シェアは縮小しつつある。また、ロシアが2014年2月にEU産豚肉の禁輸措置を講じたことから、中国がその代替市場として浮上し、スペインやデンマーク、英国からの輸入量が前年から増加している。さらに、チリについては、2006年に同国との間で締結した自由貿易協定(FTA)により、冷凍豚肉が2011年から無税で輸入されるようになったため、近年輸入シェアを伸ばしている。

表8 豚肉の国別輸入量
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード0203で集計
(調査情報部 木下 瞬)


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