畜産需給部 乳製品課
【要約】 近年のはっ酵乳、乳飲料および加工乳の消費は、年度によってさまざまな変化をみせており、普通牛乳の消費にも大きな影響を与えている。 1 調査対象本調査は、「はっ酵乳」「乳飲料(注1)」「加工乳(注2)」の3つの品目ごとに生産量、成分、原材料使用割合などを調査したものである。 調査対象は対象品目を生産している全国132企業(乳業者と非乳業者を対象。廃業などにより生産を中止した6企業を含む。)であり、有効回収は103企業、有効回収率は81.7%(103/(132−6))であった(表1)。
なお、本調査結果による過去5年間の生産量などのデータは、各年度の回収率や、規模の大きな企業の回答の有無に影響されることに留意が必要である。 注1 「乳飲料」は、生乳や乳製品を原材料として、コーヒー抽出液や果汁、カルシウムや鉄などのミネラル、 注2 「加工乳」は、生乳やバター、クリーム、脱脂粉乳などの乳製品を原材料として、それらを加工したもの。 全国生産量のカバー率 (1)はっ酵乳 回答企業の25年度のはっ酵乳の生産量は114万1270キロリットル(前年度比3.1%増)であり、農林水産省の「牛乳乳製品統計」の全国生産量100万5659キロリットルに対するカバー率は113.5%となった。 (2)乳飲料 回答企業の25年度の乳飲料の生産量は123万1115キロリットル(前年度比16.9%増)であり、農林水産省の「牛乳乳製品統計」の全国生産量136万6061キロリットルに対するカバー率は90.1%となった。 (3)加工乳 回答企業の25年度の加工乳生産量は6万3200キロリットル(前年度比10.1%減)であり、農林水産省「牛乳乳製品統計」の全国生産量12万7878キロリットルに対するカバー率は49.4%となった。
2 25年度調査結果の特徴的な点今回の調査において見られた特徴的な点は以下の通りである。 (1)非乳業者におけるはっ酵乳の生産増加 本調査におけるはっ酵乳の生産量は、21年度以降、堅調に推移しており、25年度は過去最高の114万1270キロリットルとなった。25年度は非乳業者による生産量が伸びており、果肉などを加えたソフトタイプが特に大きな伸びを示した。乳業者ではドリンクタイプの伸びが顕著であった。 また、はっ酵乳の原材料使用割合は、脱脂粉乳から脱脂濃縮乳への置き換えが進んでいると考えられる。 (2)大手3社における白物乳飲料の生産増加 大手3社における白物乳飲料の生産量は21年度以降増加し続けている。これは、加工乳と比べカルシウムやビタミンの強化を目的とした添加が可能である点や、牛乳よりも価格面での優位性があることから、消費者のニーズが高まったためと思われる。 白物乳飲料の原材料使用割合は、はっ酵乳同様に脱脂粉乳が減少、脱脂濃縮乳が増加しており、ここでも原材料の変更が行われていることが分かる。 (3)加工乳の生産減少 加工乳の生産量は、21年度、22年度は原料となる脱脂粉乳やバターの価格水準が低く、国内での在庫水準も高かったため、これらを積極的に消費する形で伸びていた。 しかし、23年度以降は、乳製品の価格が上昇したことや、大手3社を中心とした乳業メーカーが機能性での価値訴求を行いやすい白物乳飲料の生産にシフトしたことから、25年度に至るまで減少傾向で推移している。 3 生産動向(1)はっ酵乳 25年度のはっ酵乳生産量は114万1270キロリットル(前年度比3.1%増)となった。健康志向など消費者ニーズに合った商品として、23年度頃から特に機能性を訴求した商品を中心に、毎年、生産量が増加している。 25年度は、伸びは落ち着いたものの、昨今のはっ酵乳需要がブームに終わらず定着したと考えられる。タイプ別(注3)でみると、「ソフト」と「ドリンク」が増加し、「ハード」が減少している(図1)。 注3 はっ酵乳のタイプを次のとおり分類した。
乳業・非乳業別にみると、乳業者が90万3687キロリットル(同5.5%減)とやや減少したが、非乳業者が23万7583キロリットル(同57.4%増)と大幅な増加を示している(図2)。
(2)乳飲料 ア 色物乳飲料 25年度の色物乳飲料の生産量は69万722キロリットル(前年度比29.4%増)となった(図3)。商品タイプを回答しない企業があった中でも、「コーヒー」タイプの生産量は31万9934キロリットル(同6.0%増)と伸びた。
「フルーツ」や「その他」(ココアやティーオーレなどが該当する。)のコンビニエンスストアでの販売を中心としたカップ飲料など商品の多様化は進んでいるが、生産量は減少する結果となった。 なお、乳業類型別では、大手3社が40万3747キロリットル(同12.9%増)とシェアの6割弱を占めており、24年度以降、堅調な伸びを示している(図4)。
イ 白物乳飲料 25年度の白物乳飲料の生産量は、加工乳などからのシフトなどにより、54万392キロリットル(前年度比4.0%増)となった(図5)。カルシウムやビタミンの添加により、健康面の機能性を訴求できる点や、牛乳と比べ価格の優位性があることから、毎年、生産量を拡大させている。 乳業類型別では、大手3社が29万8248キロリットル(同7.0%増)、中小系が17万4127キロリットル(同13.4%増)と生産量を拡大させている。シェアは大手3社が6割弱、農プラ系が1割強、中小系が3割強となっている。
(3)加工乳 25年度の加工乳の生産量は6万3200キロリットル(前年度比10.1%減)となった。23年度から減少傾向で推移しており、特に「濃厚」(注4)は8443キロリットル(同41.2%減)と減少が顕著であった(図6)。
減少した要因としては、添加物の使用に制限があることや、加工乳の原料となるバターや脱脂粉乳といった乳製品の価格が上昇したことが挙げられる。 乳業類型別では、農プラ系が1万2732キロリットル(同25.3%減)、中小系が3万6338キロリットル(同10.0%減)の減少が目立つ結果となった。原料となる乳製品の価格が上昇したことで、加工乳生産のメリットが薄れており、特に自社でバターや脱脂粉乳を生産していない乳業にとってはその影響が顕著に表れているものと考えられる(図7)。
4 原材料使用割合の動向各品目における原材料使用割合を調査した。 ここでの使用割合とは、以下の算定式によって求められたものであって、乳製品以外の水やフルーツなどを含め、原材料ベースの重量で単純に算出したものである。 (1)はっ酵乳 25年度のはっ酵乳の原材料使用割合は、生乳(注5)が20.2%と前年度よりも2.6ポイント増加し、脱脂濃縮乳が11.6%と同2.9ポイント増加した。 最近の推移をみると、無脂乳固形分の供給源が、脱脂粉乳から脱脂濃縮乳へシフトしていると考えられる。(図8)。 注5 「殺菌乳」「部分脱脂乳」などを含む。
(2)乳飲料 ア 色物乳飲料 25年度の色物乳飲料の原材料使用割合は生乳が7.4%と前年度よりも0.1ポイント増加し、ホエイ類が3.2%と同2.2ポイント増加した(図9)。 25年度の原材料使用割合を乳業類型別にみると、大手3社はバターやホエイ類、脱脂濃縮乳で、農プラ系は生乳で乳固形分を確保している(表4)。
イ 白物乳飲料 25年度の白物乳飲料の原材料使用割合は脱脂粉乳が2.5%と前年度よりも1.5ポイント低下し、脱脂濃縮乳が8.0%と同4.9ポイント増加した(図10)。 25年度の原材料使用割合を乳業類型別にみると、脱脂濃縮乳の使用割合で各類型間に明確な差異が見られた(表5)。
(3)加工乳 25年度の加工乳の主な原材料使用割合は、生乳が22.8%と前年度よりも0.3ポイント減少した。脱脂濃縮乳は12.6%と同0.6ポイント増加し、脱脂粉乳は2.9%と同0.2ポイント減少した。 23年度以降、脱脂粉乳から脱脂濃縮乳への置き換えが進んでいる状況が分かる(図11)。
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