需給動向 海外

◆中 国◆

粉乳輸入量、2015年も前年を下回る状況が続く


乳価は引き続き下落傾向

 中国農業部によると、生乳の農場出荷価格(乳価)は2014年1月以降、下落基調にあり、2015年3月は1キログラム当たり3.4元(約67円:1元=19.7円)となった(図30)。特に、主産地の山東省や河北省などでは、乳価の下落幅が全国平均に比べ大きく、地域によっては同2元(約39円)を下回るところもあるとされる。

図30 生乳の農場出荷価格の推移
資料:中国農業部畜産局資料よりALIC作成
  注:統計の集計対象範囲は河北、山西、内モンゴル、遼寧、黒龍江、山東、河南、陝西、
    寧夏、新疆の10省で、全国の生乳生産量の8割強を占める。

 こうした背景には、国内乳業メーカーが、乳飲料や乳製品の原料として、国産生乳より安価で高品質な輸入粉乳の使用割合を増やしていることにある。また、近年、大手乳業メーカーを中心に、生乳の品質を確保するため、自社農場や契約農場からの調達を増加させ、契約外の農場との取引を中止するケースも見られている。こうした状況により、小規模酪農家を中心に経営環境が悪化しており、一部の酪農家では生乳を廃棄したり、乳用牛を淘汰する状況が発生している。

 現地報道によると、国内乳業メーカーは現在、輸入粉乳の在庫を消化しており、乳製品の国際相場も軟化している状況にあることから、当面の間、国産生乳に対する需要は弱いとしている。また、国内専門家も、2015年上半期は乳価の上昇が見込めないとしている。

粉乳は輸入量、価格ともに前年から減少

 全粉乳の2015年2月の輸入量は、前年同月比49.4%減の4万8645トンとなった(図31)。国別に見ると、ニュージーランド(NZ)からの輸入量が4万8243トン(同43.1%減)と大部分を占めた。また、脱脂粉乳の同輸入量は、同35.2%減の1万7342トンとなった。このうちNZが1万5175トン(同1.0%増)と輸入量全体の約9割を占め、ドイツ、フランス、豪州と続いた。

 粉乳の輸入単価は、国際相場の軟化を受け下落基調にあり、2月は全粉乳が1トン当たり2765米ドル(33万4565円、1米ドル=121円、同46.5%安)、脱脂粉乳が同2690米ドル(32万5490円、同42.3%安)と、いずれも前年同月から大幅に下落している。

 粉乳については、2014年上半期に前年を大きく上回るペースで輸入された結果、過剰な在庫を抱えることとなったため、国内乳業メーカーは現在も在庫の消化を行っている。これにより、粉乳輸入量は2014年下半期以降、前年を下回る状況が続いている。

 また、最大の輸入先であるNZとの間で締結された自由貿易協定(FTA)において、セーフガード(SG)措置が設けられたことにより、月別で見ると毎年1月に輸入が急増している。これはSGが発動すると税率が引き上げられるため、年初に輸入が集中するためである。2015年も1月の段階でSGが発動し、税率が3.3%から10%に引き上げられている。

図31 全粉乳および脱脂粉乳の輸入量と輸入単価(CIF)の推移
資料:Global Trade Atlas
注1:HSコード:040210(脱脂粉乳)、040221および040229(全粉乳)
  2:全粉乳輸入単価はHSコード040221。
(調査情報部 木下 瞬)

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