需給動向 海外 |
民間在庫補助発動も、需要減により相場は軟調 |
2014年11月の豚肉生産量、前年同月比0.3%増 欧州委員会によると、2014年11月のEU28カ国の豚枝肉生産量は、前年同月比 0.3%増の186万トンと、前年並みとなった(図15)。2014年1〜11月の累計で見ると、前年よりわずかに増加(2013万トン、前年同期比1.0%増)し、通年では前年並み(0.9%増)の生産が予測されている。
2015年2月の豚枝肉卸売価格、前年同月比12.1%安 また、2015年2月のEU豚枝肉卸売価格は、前月からやや値を上げたものの、前年同月比12.1%安の100キログラム当たり136.3ユーロ(1万7992円:1ユーロ=132円)と、かなり大きく下落した(図16)。EUの豚枝肉卸売価格は、2013年10月以降、17カ月連続で前年同月を下回って推移している。 EUでは、ロシアによる禁輸措置の影響などから同価格は下落傾向にあり、2015年3月9日に民間在庫補助が発動され、価格回復が期待された。しかし、同日以降の週平均価格は、140ユーロ(1万8480円)台を横ばいに推移しており、顕著な変動は見られていない。 主要国の状況を見ると、最も値を下げたのはスペイン(前年同月比24.5%安、131.3ユーロ)であり、続いてデンマーク(同17.0%安、122.8ユーロ)も大幅な値下がりとなった。スペインは、2014年の好調な域外輸出を受けて増頭傾向にある中で、やや供給過剰に陥っているものとみられている。
2014年の豚肉などの輸出量は、5.6%減 欧州委員会によると、2014年のEU域外への豚肉などの輸出量は前年比5.6%減と、やや減少した(表3)。豚肉、加工品、内臓などのいずれの品目でも、EU域内でのアフリカ豚コレラ(ASF)の発生を理由に、ロシアは2014年2月から禁輸措置を継続しており、これが全体の輸出量を減少させる要因となっている。 しかし、北米地域での豚流行性下痢(PED)による豚肉生産量の減少を受け、北米産豚肉の代替として、アジア向けの輸出は増加した。特に、韓国とフィリピンでは、前年比で2倍程度に増加し、韓国は日本を上回るEU産豚肉の輸入国となっている。
また、豚肉などの輸出量を加盟国別に見ると、主要国の多くが輸出量を減少させる中、スペインは前年比32.0%増と、大幅に輸出量を増加させた(表4)。一方、ASF発生により、日本を含む国々から輸入が停止されているポーランドは、同46.3%減と大幅な減少となった。
輸出量を増加させたスペインの輸出先を見ると、ロシア向けは前年比99.8%の減少となったが、日本とフィリピン向けについては約2倍、韓国向けは約3倍の増加となった(表5)。
ただし、日本の食肉関係者によれば、加工技術の不足から、スペイン産は需要者のニーズに応えられないとの意見もあり、今後継続的に輸入が増加するかは不透明との見方もある。 民間在庫補助の申請状況 欧州委員会によると、2015年3月9日から発動された豚肉の民間在庫補助の申請量は、30日までの累計で4万3525トンとなった(表6)。 部位別に見ると、ロイン(骨抜き)が最も多く、全体の62.5%を占めている。その他の部位でも、骨抜きの申請量が骨付きを上回っており、価格の高い部位ほど対象とされている。また、対象期間別に見ると、30日間が約7割、150日間が約2割となっており、申請者の多くが、発動後、1カ月程度での価格上昇を期待しているとみられる。
申請量を国別に見ると、スペインが全体の21.9%と最も多く申請しており、上位4カ国(スペイン、デンマーク、ポーランド、ドイツ)で7割以上を占めている(表7)。 スペインとデンマーク(占有率:20.6%)は、価格下落が大きく、また、ポーランド(同:15.4%)はASF発生による輸出不振にあることから、民間在庫補助を積極的に活用する動きとなっている。
(調査情報部 宅間 淳)
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