調査・報告  畜産の情報 2015年5月号

平成26年度牛乳・乳製品の
消費動向に関する調査の結果

調査情報部


【要約】

 当機構では、消費者を対象に牛乳・乳製品の消費動向などに関する調査を毎年度、実施している。

 平成26年度の調査結果では、白もの牛乳類の飲用頻度は、「ほぼ毎日飲む」が40.5%と減少傾向で推移する一方、「全く飲まない」の割合は18.6%と増加傾向にある。また、1日当たりの平均飲用量は、全体的に微減となっている。

 白もの牛乳類の飲用を阻害する要因は、「飲むとお腹の調子が悪くなる」、「味にクセがある」、「飲んだあと口に残る」、「においが嫌い」の4つが大きな理由であった。

 チーズを「週に1日以上食べる」人は、引き続き4割前後で推移しており、年齢が高くなるほど、国産のチーズを購入するようになっている。

1 調査の目的

 本調査は、全国の消費者に対して、牛乳・乳製品の消費・購入・嗜好などの基本的な項目の聞き取りを通じ、その消費構造の変化や消費動向を的確に把握し、牛乳・乳製品の消費拡大に向けた取り組みなどに役立つ情報を収集・提供することを目的として、毎年実施している。

 本稿では、牛乳・乳製品のうち、白もの牛乳類(注1)およびチーズの調査結果を抜粋し紹介する。

 なお、報告書の全文および要約版は、当機構ホームページ(http://www.alic.go.jp)に掲載している。

 また、調査の概要については、本稿の最後で解説する。

注1: 本調査は消費者の視点に立ったものであるため、牛乳の他にも低脂肪乳、無脂肪乳、栄養成分強化牛乳
    (カルシウム、鉄分、ビタミンDなどを加えたもの)を白もの牛乳類としており、法律や省令上の種類別分類とは異なる。

2 白もの牛乳類の飲用実態

(1)飲用頻度
  〜ほぼ毎日飲む人は40.5%〜

 飲み方を問わず、白もの牛乳類を飲む頻度を聞いたところ、「毎日飲む」が32.6%(前年度比0.8ポイント減)、「週に5〜6日飲む」が7.9%(同0.9ポイント減)となった。

 この2つを合計した「ほぼ毎日飲む」は、減少傾向が続いており、40.5%(同1.7ポイント減)となった(図1)。

 一方、「全く飲まない」は、18.6%(同2.8ポイント増)と3年ぶりに増加した。

図1 白もの牛乳類の飲用頻度の推移(時系列、単一回答)
注:nはサンプル数(number)。

 「ほぼ毎日飲む」を年代別に見ると、男女とも中学生が高いが、男子中学生は77.5%(同4.0ポイント増)、女子中学生は67.5%(同3.0ポイント減)となった。

 男性の20〜50代、女性の10代(中学生除く)〜20代では、性別の全体平均を下回った。

表 ほぼ毎日、白もの牛乳類を飲む人の割合の推移(性・年代別)
<ほぼ毎日飲む>「毎日飲む」「週に5〜6日飲む」の合計

(2)飲用量
  〜1日当たりの平均飲用量は、全体的に減少傾向が続く〜

 24年度から26年度の3年間の白もの牛乳類の1日当たりの平均飲用量(注2)は、全体および性別でも、男女とも減少傾向が継続している。

 性・年代別では、男性では、中学生の「ほぼ毎日飲む」人の割合は、前の表に示したとおり、前年度より増えているが、飲用量は前年度より減っている。

 女性では、中学生の飲用量は他の年代に比べて多いものの、減少幅が大きく、他の年代に近づいている(図2)。

注2: 前回までは、白もの牛乳類を飲むと回答した者(飲用者)の1日当たりの飲用量の合計を、総回答者数(非飲用者含む)で
    除して算出したが、今回は、24年度以降、白もの牛乳類を飲むと回答した者数で除して算出している。

図2 1日当たりの白もの牛乳類の平均飲用量の推移(性・年代別、年間平均、単一回答)
<飲用者ベース>

(3)飲み方別飲用頻度
  〜飲み方による飲用頻度には、大きな変化は見られない〜

 白もの牛乳類の飲み方別の飲用頻度は、「そのまま飲む」では、「毎日飲む」と「週に5〜6日飲む」を合計した「ほぼ毎日飲む」は、30.1%と前年度とほぼ同じになった(図3)。

 「他のものと混ぜて飲む」では、「ほぼ毎日飲む」は、前年度と同じ24.3%となった。

 過去3年間の飲み方別の1週間の平均日数を見ると、「そのまま飲む」「他のものと混ぜて飲む」ともに、ほぼ同じとなっている(図3)。

図3 飲み方別、白もの牛乳類の飲用頻度の推移(時系列、単一回答)
注:nはサンプル数(number)。

 また、「ほぼ毎日飲む」の夏場と冬場の飲用頻度を比べると、「そのまま飲む」「他のものと混ぜて飲む」ともに夏場より冬場が少ないが、「そのまま飲む」は、「他のものと混ぜて飲む」より、季節による変動が大きいことがわかる(図4)。

図4 飲み方別、白もの牛乳類の飲用頻度(季節変動、単一回答)
注:nはサンプル数(number)。

(4)飲用シーン
  〜トップは「朝食をとりながら」が45%〜

 白もの牛乳類の飲用シーンで最も多いのは、「朝食をとりながら」が45.0%(同1.3ポイント増)、2番目は「おやつや間食時」が35.0%(同1.2ポイント減)、3番目は「のどが渇いた時」が23.9%(同1.9ポイント減)となった(図5)。

 3年間の比較では、項目ごとに大きな変化は見られず、順位が固定化されている。

 また、「朝食をとりながら」以外の項目は、総じて、前年度よりポイントが低下している。

図5 白物牛乳類の飲用シーンの推移(複数回答)<飲用者ベース>
注:nはサンプル数(number)。

(5)飲用理由
  〜「カルシウムがあるから」「栄養があるから」が引き続き上位にランク〜

 白もの牛乳類を飲む理由で最も多いのは、「カルシウムがあるから」が42.0%(同5.1ポイント減)、2番目は「栄養があるから」が36.6%(同0.3ポイント減)、3番目は「おいしいから」が26.4%(同1.4ポイント減)となった。

 「他のものと混ぜたりする」は、25年度は3番目であったが、26年度は23.8%と前年度より6.9ポイント低下して6番目となった(図6)。

図6 白もの牛乳類を飲む理由の推移 (複数回答) <飲用者ベース>
注:nはサンプル数(number)。

(6)飲用を阻害する要因
  〜牛乳を飲まない理由は、「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」「味にクセ」
    「飲んだ後、口に残る」「牛乳のにおいが嫌い」など〜

 白もの牛乳類の「飲用量が減った」、「もともと飲まない」理由として、「あてはまる」または「ややあてはまる」と回答した割合では、最も多かったのは「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」が38.7%、2番目は「牛乳は味にクセがある」が38.0%、3番目は「牛乳は飲んだあと口に残る」が37.3%、次いで「牛乳のにおいが嫌い」が35.5%の順となった。

 これら4つが、牛乳の飲用を阻害する大きな理由となっている(図7)。

図7 牛乳の飲用を阻害する大きな理由(飲用量減少・非飲用の理由、単一回答)
<飲用量が減少した・もともと飲まない者ベース>
※前回調査の項目「不景気の影響で牛乳を買い控えるようになったから」は、
  平成26年度は「価格が高くなったため買い控えるようになったから」に変更した。

(7)普段よく飲む飲み物
  〜普段よく飲む飲み物は「無糖のお茶飲料」、次いで「コーヒー」「白もの牛乳類」が
    5割以上で続く〜

 図8に示された項目のうち、普段よく飲む飲み物について複数回答可で質問したところ、最も多かったのは「無糖のお茶飲料」で72.8%、2番目は「コーヒー」で65.1%、3番目は「白もの牛乳類」が50.2%となり、前年度とほぼ同様の結果となった。

 また、普段よく飲む飲み物の中から最もよく飲むものをひとつだけ挙げてもらった結果、最も多かったのは「無糖のお茶飲料」で36.9%、2番目は「コーヒー」で27.1%、3番目は「白もの牛乳類」が10.5%となり、こちらも前年度とほぼ同様の結果となった。

図8 普段よく飲む飲み物(複数回答)と最もよく飲む飲み物(単一回答)
注:nはサンプル数(number)。

(8)牛乳の効果に対するニーズ
  〜カルシウムに関連するニーズが高い。健康や美肌、ダイエットも訴求ポイント
    として消費量増の可能性〜

 図9に示された項目のうち、「白もの牛乳に関してこの半年くらいの間に、テレビや新聞、雑誌などで見たり聞いたりしたもの」はどれかを質問したところ、最も多かったのは「(1)牛乳には、カルシウムやタンパク質など体に必要な栄養素がバランス良く含まれている」で57.1%、2番目は、「(2)牛乳に含まれるカルシウムは、骨を丈夫にし子どもの身長の伸びを助ける」で49.2%、3番目は、「(3)牛乳にはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症を防ぐ成分が含まれている」で47.3%となった。

 また、「そういう良い効果があるなら牛乳を飲んでもよい」と思うものはどれかを質問したところ、最も多かったのは「(3)牛乳にはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症を防ぐ成分が含まれている」が36.0%、2番目は「(1)牛乳には、カルシウムやタンパク質など体に必要な栄養素がバランス良く含まれている」で34.8%、3番目は「(5)牛乳のカルシウムは魚や野菜のカルシウムよりも体に吸収されやすい」で30.9%となった。

 全般的に、カルシウムなど栄養に関連する項目の評価が高くなっている。

 また、「(10)牛乳の良質なタンパク質やビタミン類は、ハリやツヤのある肌をつくる」、「(11)牛乳は血糖値の上昇がゆるやかなので、ダイエット効果がある」、「(12)牛乳を朝飲むと、体温が上がり体が目覚める」などの効果は、普段は見聞きする機会が少ないが、効果に対するニーズがあるので、これらを訴求することにより、牛乳の消費量が増える可能性がある。

図9 牛乳の効果に対するニーズ

3 チーズの摂取実態と購入意識

(1)摂取頻度
  〜チーズを週に1日以上食べる人は40%〜

 日頃、チーズを食べる頻度として、チーズを「週に1日以上食べる」が、引き続き、約4割を占めている(図10)。

図10 日頃チーズを食べる頻度の推移(単一回答)
注:nはサンプル数(number)。

(2)チーズ料理の摂食実態

 この1カ月間にチーズ料理を食べた割合は、65.8%(同1.5ポイント減)となり、引き続き、7割近い人がチーズ料理を食べている(図11)。

図11 1カ月にチーズ料理の食した割合の推移(単一回答)
注:nはサンプル数(number)。

 また、この1カ月に食べたチーズ料理で最も多かったのは、ピザが59.6%(同0.4ポイント減)、2番目はグラタンで40.0%(同1.3ポイント減)、3番目はパンで31.9%(同1.0ポイント減)であった(図12)。

 3年間の比較では、項目ごとに大きな変化は見られず、順位が固定化されている。

図12 この1カ月に食べたチーズ料理の推移(複数回答)
注:nはサンプル数(number)。

(3)ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いの認知状況

 ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いについて、「知っている」と「何となく知っている」の合計が45.8%(同1.9ポイント減)となり、引き続き、半数近くの人が知っていることがわかる(図13)。

図13 ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いの認知状況の推移(単一回答)
注1:nはサンプル数(number)。
  2: ナチュラルチーズは、原料乳のたんぱく質や脂肪などを酵素(レンネット)や
    乳酸菌(スターター)などで固め、加塩後に水分を切ったもの、また水分切りの
    後に熟成させたものなどをいう。
     プロセスチーズは、種類、熟度の異なるナチュラルチーズを粉砕し、乳化剤を加え、
    加熱融解して、成型包装したものである。
     出典:売場で役立つ牛乳の知識 VOL.5、畜産用語辞典

(4)購入実態

 また、購入するチーズの種類は、ナチュラル派が24.1%(同3.4ポイント増)、プロセス派が44.3%(同3.3ポイント減)、半々が10.0%(同2.3ポイント減)となった(図14)。

図14 購入するチーズの種類の推移(単一回答)<チーズ購入者ベース>
注:nはサンプル数(number)。

 購入するチーズの種類で最も多かったのは、「スライスチーズ」で63.2%(同2.8ポイント減)、2番目は「ブロックタイプ」で44.6%(同5.4ポイント減)、3番目は「シュレッドチーズ」で34.9%(同1.7ポイント減)の順となった(図15)。

図15 購入するチーズの種類の推移(複数回答)<チーズ購入者ベース>
注:nはサンプル数(number)。

(5)購入時の意識
  〜国産指向は48%を占める一方、生産国を意識しないが49%〜

 普段チーズ購入時に意識することは、全体では「国産のチーズを購入するようにしている」が47.9%、「生産国は意識していない」が48.8%、「外国産のチーズを購入するようにしている」が1.4%となった(図16)。

 年齢が高くなるほど、「国産のチーズを購入するようにしている」との回答が多くなり、女性の70代以上では、79.2%となった。

図16 チーズ購入時に意識することの推移(性・年代別、単一回答)
<チーズ購入者ベース>
注:nはサンプル数(number)。

 また、国産チーズ購入で意識することとして、全体では、「大手メーカーの製品を購入するようにしている」が63.7%、「メーカーは意識していない」が32.5%となった(図17)。

図17 国産チーズ購入で意識することの推移(単一回答)
<国産チーズ購入者ベース>
注:nはサンプル数(number)。

4 白もの牛乳類の飲用拡大に向けた考察

 中学生以上の日本人の白もの牛乳類の飲用量・飲用機会は低下傾向が続いている。

 このままでは人口減少に伴う市場の縮小もあり牛乳・乳製品の消費は減少するものと思われる。

 白もの牛乳類の飲用シーンや飲用理由の変化を見ると、朝食とおやつや間食時が主なシーンであることに変わりはないが、「のどが渇いた時」「風呂上り」といったシーンでの飲用は大きく減っている。

 また、飲む理由では「カルシウムを補給」や「健康に良い」といった意識は弱くなっている。

 牛乳・乳製品関連の消費拡大には、おいしいというだけでなく、さまざまな飲料といっしょに、あるいは料理に使えるといった長所(他のものと混ぜたりする)という飲み方、使い方の多様なスタイルを提案することが重要と思われる。

 また、これまでのカルシウムや栄養豊富といった評価から、腸内細菌のバランスの改善やハリやツヤのある肌など、まだあまり知られていないが消費者の関心を呼ぶ健康・美容面での良さをしっかりと訴求することが重要と思われる。

 この調査結果が、酪農乳業関係者にとどまることなく広く活用され、牛乳・乳製品の消費拡大を推進する上で参考になることを期待する。

 また、調査にご協力いただきました皆さまに深く感謝しますとともに、併せて御礼申し上げます。

(参考)調査の概要

1.調査方法

 留置併用訪問面接法(注1)により、本人が調査票に回答

注1: 留置法とは、対象者を訪問してその場では調査票の記入を依頼するだけとし、その後、再訪問して記入済み調査票を
    回収する手法である。
     訪問面接法とは、調査員が対象者を訪問して、直接回答を聞き取る手法である。調査員が回答を確認しながら質問を
    進めていくので、回答抜けがなく、質の高い結果を得ることができる。
     本調査では、留置法と訪問面接法を併用している。

2.調査対象

 全国の中学生以上の男女個人  3200人(回収ベース)

3.調査地域とサンプル数

 回収サンプルの地域別内訳は下記の通り(沖縄除く)。構成比はウェイト集計(注2)後の値。

【地域】
【都市規模】

注2: アンケートなどで得られたサンプルが全体(母集団)の構成比と異なる場合に、回収された属性ごとの抽出率や
    回収率の違いを補正し、全体の構成比に合わせるように重みを付けて集計する方法。

4.抽出方法(エリアサンプリング)

 22年国勢調査時の母集団人口に基づき、地域(9分類)と都市規模(4分類)により層化し、調査地点数を比例配分する。各層ごとに大字・町丁目の該当人口に応じて、調査地点を抽出した。

 各調査地点において、世帯(居住者のいる一般世帯住宅住戸)を系統抽出した。

 世帯から個人の抽出は、性・年齢別の割当に従って、訪問世帯において対象者条件に適合する個人を抽出した。

5.サンプル設計およびウェイト集計について

 19年度まで、地域(9分類)・都市規模(5分類)および性・年齢別の人口構成を反映したサンプル設計を行ってきた。そのため、若年層においては、回収サンプル数が少なく、性・年齢別の分析を行うには十分ではなかった。

 20年度から、性・年齢の層別にも十分な分析を行なえるよう、性・年齢別に200サンプルずつを均等に割り当てるクォータ法(注3)により調査を実施しているため、本年度調査では、回収サンプル構成は、母集団である平成22年国勢調査人口を反映していない。そのため、サンプルごとに人口構成に応じたウェイト値を与えて集計し、サンプル構成を補正した。本報告書で記載しているサンプル数は実際に回収されたサンプル数であるが、構成比(%)はウェイト集計後の値である。

注3: 母集団を性別、年齢層、階層などの組み合わせにより分類し、その各組から母集団に比例するサンプルを選出する方法。

6.調査期間

 26年10月24日〜11月20日

 データを読む上での注意点

 ・ 単一回答(択一式選択肢)の場合、回答率の合計が100.0%になるべきところで、
  そうならない箇所がある。
   これは各回答率を小数点以下第2位で四捨五入しているためである。

 ・ 表示されているサンプル数は実際の回収サンプル数、構成比(%)はウェイト集計後の
  数値である。


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