需給動向 海外 |
牛肉生産量、輸出量ともに減少 |
牛肉生産量、2カ月連続で減少 豪州統計局(ABS)によると、2015年8月の牛肉生産量は、20万2205トン(前年同月比8.3%減)と2カ月連続で前年を下回った(図5)。過去3年近く、干ばつの影響によると畜頭数増からおおむね増加傾向で推移していたものの、干ばつの緩和に伴う牛群再構築の進展により、減少傾向に転じている。ただし、牛肉生産量の減少はニューサウスウェールズ(NSW)州やビクトリア(VIC)州が中心であり、最大の生産州であるクイーンズランド(QLD)州では、比較的乾燥した気候が続いていることから、いまだに前年並みの生産量を維持している。今後はQLD州でも放牧環境の改善が見込まれ、牛肉生産量は減少に転じるとみられており、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、少なくとも年明けまでは減少傾向が続くとしている。 牛肉輸出量、10%を超す減少幅に 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2015年9月の牛肉輸出量は10万1616トン(前年同月比14.3%減)となった(表1)。牛肉生産量の減少に伴い輸出量は2カ月連続で前年同月を下回っている。 主な輸出先国別に見ると、米国向けは、これまで大幅な増加傾向が続いていたものの、9月の輸出量は大幅に減少している。これは、米国が豪州産牛肉に対して年間41万8214トンの関税割当(無税枠)を設けているが、これまでの増加傾向から、同無税枠超過の可能性が高まったため、年内の輸出を控える動きが背景にあるとみられている。また、日本向けについても、日本国内での高水準の輸入在庫を反映して、減少傾向が続いている。 一方、韓国向けは、おおむね増加傾向で推移している。これは、韓国市場での競合国である米国の輸出減少や韓豪自由貿易協定に伴う関税削減などが影響している。また、中国向けについても、低水準であった前年の反動から増加傾向で推移している。ただし、MLAでは、中国市場はウルグアイやアルゼンチンなど生産コストの低い南米諸国との競合が高まっているとしている。このため、今後は、高価格帯部位や冷蔵牛肉などの中国向け輸出拡大により、優位性を高めていくものとみられている。 肉牛取引価格、記録的な高値に MLAによると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2015年9月末日時点で1キログラム当たり595豪セント(512円:1豪ドル=86円)となった(図6)。2015年4月以降、上昇傾向が続いており、最近の数カ月は過去最高値の更新を続けている。特に8月以降は、強い輸出需要が継続する中で、牛肉生産量の減少や牛群再構築に伴う保留傾向の高まりなどから、さらなる上昇が見られている。 2015/16年度の需給見通し、生産、輸出ともに減少 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は9月、2015/16年度(7月〜翌6月)の牛肉需給に関する見通しを公表した(表2)。 これによると、牛総飼養頭数は、高水準となった直近のと畜頭数と生体牛輸出頭数を反映して、前年度をわずかに下回ると見込んでいる。一方、牛肉生産量は、干ばつ後の牛群の再構築が、年度前半にNSW州およびVIC州で始まり、年度半ばには最大の生産州であるQLD州でも開始されるとの予測から、前年度をかなりの程度下回ると見込んでいる。 また、牛肉輸出量についても、牛肉生産量の減少に伴い前年度をかなりの程度下回ると見込んでいるが、輸出先ごとに状況は異なっている。最大の輸出先である米国向けは、米国内での牛肉生産回復に伴い、かなりの程度減少するとしている。日本、韓国向けは、ともに国内生産の減少、安定的な消費、豪ドルに対して米ドル高で推移する為替相場、日豪経済連携協定および韓豪自由貿易協定による関税削減といった要因から、前年度をやや上回ると見込んでいる。また、中国向けは、ニュージーランドやブラジルなど南米諸国との競合などから前年度をやや下回ると見込んでいる。 なお、肉牛の取引価格は、豪州産牛肉および生体牛に対する海外からの強い需要により、上昇としているが、2015/16年度後半には、米国からの需要の減少に伴い、やや下落すると予想している。 (調査情報部 根本 悠)
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