需給動向 海外

◆米 国◆

2015年の牛肉生産量は前年を下回るも、2016年は増加見込み


フィードロットの飼養期間が長期化

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月18日に公表した「Cattle on Feed」によると、2015年9月1日時点のフィードロット飼養頭数は前年同月比2.7%増の998万6000頭となった(図1)。USDAによると、飼料コストが低下していることに加え、牛肉の格付基準であるチョイス級とセレクト級(注)間の価格差が拡大しているため、生産者の間でチョイス級として出荷したい意向が働き、フィードロットの飼養期間が長期化している。

(注)脂肪交雑と成熟度(肉色、きめ、締まり)によって決定される肉質等級は上位から、プライム級、
   チョイス級、セレクト級、スタンダード級に格付けされる。

と畜頭数は20カ月連続で前年を下回る

 USDA/NASSが9月24日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2015年8月のと畜頭数は前年同月比7.1%減の232万2300頭と、20カ月連続で前年を下回って推移している(図2)。

 内訳を見ると、未経産牛(前年同月比18.6%減)および経産牛(同16.5%減)が大幅に下回っている。この要因として、干ばつの緩和による草地の回復で牛群再構築が進行し、繁殖雌牛の保留が急速に進んでいることが挙げられる。

肥育牛価格が急落

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が9月29日に公表した「Livestock Prices」によると、2015年8月の肥育牛価格(去勢牛)は100ポンド当たり136.5米ドル(1キログラム当たり364円:1米ドル=121円)(速報値)となり、前月からおよそ13米ドルの急落となった(図3)。この要因としてUSDAは、食肉処理業者が肥育牛価格の高騰による収益悪化から意図的にと畜頭数を減らした可能性を示唆している。USDAは、2015年第4四半期(10月〜12月)の価格は、肥育牛の出荷がだぶついていることで前年同期比7.6〜12.4%安の同145〜153米ドル(同387〜408円)と前年を下回って推移するとみている。

2015年の牛肉生産量は前年同期比2.9%減の見込み

 USDA/ERSが9月29日に公表した「Red meat and poultry production」によると、2015年8月の牛肉生産量は前年同月比4.4%減の87万7300トンとなり、2014年1月以降前年同月を下回って推移している(図4)。この要因として、牛の飼養頭数が低水準で推移していることに加え、繁殖雌牛を中心に保留が進んでいることが挙げられる。また、牛群再構築の進展に伴い、2015年通年では前年比2.9%の減少が見込まれている。USDAは、2016年は牛の飼養頭数回復に伴い同5.9%の増加を見込んでいる。

 なお、2015年1月〜7月の牛肉輸入量は前年同月比32.5%増の97万7600トンと、牛肉生産量の減少により大幅に増加している。

(調査情報部 渡邊 陽介)


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