需給動向 海外

◆アルゼンチン◆

2015年上半期の乳製品輸出量、12.3%減


天候不順による生乳生産減から輸出も大きく減少

 アルゼンチン国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2015年上半期(1月〜6月)の乳製品輸出量は、前年同期比12.3%減とかなり大きく減少した(表10)。これは、同年1月〜3月にかけて最大の生産州のコルドバ州および第2位のサンタフェ州が多雨に見舞われたほか、第3位のブエノスアイレス州も熱波の影響で放牧環境が悪化し、生乳生産が減少した影響が大きい。

 同国で生産される牛乳・乳製品は、政策により基本的に国内供給が優先され、余剰分が輸出される構図にある(大まかな仕向け割合は、国内:輸出=3:1)。近年、国内消費(※生乳換算で1人当たり年間210キログラム前後)が横ばいで推移しているが、生乳生産が落ち込んだ2015年上半期は、相対的に乳製品輸出量が減少することとなった。

下半期も低調に推移する見込み

 米国農務省海外調査局(USDA/FAS)は、アルゼンチンの生乳生産量について、2012年をピークに減少傾向にあり、2015年は前述の天候不順の影響などから1070万トン(前年比3.6%減)と見込んでいる(図24)。

 同国の全粉乳の輸出量はニュージーランド、EUに次ぐ世界第3位、また、ホエイやチーズも主要輸出国として位置づけられるが、生乳の減産見通しを受け、2015年の主要乳製品輸出量は軒並み前年を下回る見込みである。

 同国は、他の主要生産・輸出国に比べ生乳生産コストが安く優位性があるとされる一方、近年の経済混乱や慢性的なインフレに加え、主要輸出品目である全粉乳国際価格の下落といったマイナス材料を受け、酪農・乳業業界は難しい局面に立たされている。こうしたことから、一部の酪農家では、穀物生産へ経営を切り替える動きも見られている。

 同国の酪農・乳業部門の今後の発展は、輸出に頼らざるを得ない状況にあるものの、政府は輸出管理政策により、輸出振興に舵を切っていない。こうしたことから、酪農・乳業部門からは変革を望む声が多く聞かれ、2015年10月25日に実施される大統領選(※一次投票で決着がつかない場合は、11月22日の決選投票にて選出)で新たに選出される新大統領の政策が、どのような方針となるのか注目を集めている。

(調査情報部 米元 健太)

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