需給動向 海外

◆中 国◆

粉乳輸入量減少も、国内乳業企業の過剰在庫は解消されず


乳価は継続して安値傾向

 中国農業部によると、2015年9月の生乳の農場出荷価格(乳価)は、前月と同じ1キログラム当たり3.4元(約65円:1元=19円)となった(図25)。乳製品国際価格が安値で推移している中で、国内乳業各社が、乳飲料や乳製品の原料として国産より安価で高品質な輸入原料の使用割合を引き続き増やしていることが、乳価低迷の要因とされている。

 国内乳業各社は、2008年に発生した、育児用調製粉乳にメラミンが混入した事件(以下「メラミン事件」という)などを踏まえ、酪農家に対して高い生乳品質基準を課しており、乳価安に伴い経営が悪化する中、この品質基準を満たせない零細酪農家などは、廃業を余儀なくされている。これに対して、乳業直営など飼養頭数100頭以上の大規模酪農家は、品質基準を満たすとともに、政府による規模拡大のための補助(注)を受けることができるため、一層の大規模化が進行している。

注:政府は、飼養頭数100頭以上の大規模酪農家に対して、牛舎設置や乳用牛導入費用の補助を実施。

2015年1月〜8月の粉乳輸入は大幅に減少

 2014年上半期に前年を大きく上回るペースで輸入され、過剰在庫とされている粉乳(全粉乳および脱脂粉乳)については、国内乳業各社により在庫の取り崩しが行われている。このため、2015年1月〜8月の粉乳の輸入量を見ると、全粉乳は、27万4681トン(前年同期比53.9%減)(表11)、脱脂粉乳も、14万6049トン(同24.1%減)と前年同期を大幅に下回った(表12)。

 しかし、消費量は在庫量を大きく下回っているため、過剰在庫の解消には至っていないのが現状とみられている。

 なお、同期間の粉乳の輸入先は、ニュージーランド(NZ)が過半を占め、全粉乳については、全体の97.3%がNZ産であった。

 また、同期間のホエイの輸入量は、28万3867トン(同4.1%増)となった(表13)。ホエイについては、国内生産量がわずかなため、ほぼすべてが輸入で賄われている。ホエイは、育児用調製粉乳原料としての需要は伸びているものの、主要な用途である養豚向けなどの飼料用需要が、豚飼養頭数の減少により引き続き低下しているため、輸入量は小幅な伸びにとどまった。

国産不信から伸びる輸入乳製品

 中国では、所得の向上に伴う乳製品需要の増加により、国産乳製品の生産量も大きく増加してきた。しかし、メラミン事件以降、消費者は国産乳製品に対して不信感を強く抱くようになったとされており、輸入乳製品の需要が高まっている。

 このうち、牛乳については、国内消費量の1%程度とシェアは小さいものの、輸入量は2011年以降、大きく伸長しており、2014年は32万206トンとなった。2015年1月〜8月も、前年同期比27.4%増の25万8989トンと増加傾向で推移しており、このうちドイツが42.9%を占めている(表14)。

 一方、育児用調製品(9割以上が育児用調製粉乳)の輸入量は、3歳以下の乳幼児人口を7000万人抱えていることもあり、2013年には12万トンを超えた。2014年は政府が安全性の確保を目的に輸入品の管理を強化したため前年並みにとどまったものの、2015年1月〜8月は、前年同期比29.8%増の10万3882トンとなっている(表15)。

 牛乳、育児用調製粉乳とも、主な輸入先国はEU諸国が多い。これは、品質とブランド力の高さが消費者に受け入れられていることに加え、2014年8月以降は、主要仕向け先であったロシアがEU産農産物などの輸入を禁止していることも背景にある。EUは、2015年3月末の生乳クオータ制度の終了により、生乳生産の増加が見込まれていることで、今まで以上に中国市場向け輸出が高まることが予想されている。

(調査情報部 伊澤 昌栄)

元のページに戻る