需給動向 海外

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生乳生産、減少に転じる


生乳生産、5カ月ぶりに減少

 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2015年8月の生乳生産量は137万9000トン(前年同月比0.8%減)と4カ月ぶりに前年同月を下回った(図21)。

 ニュージーランド(NZ)最大手乳業メーカーのフォンテラ社によると、2014/15年度(6月〜翌5月)以降の乳価下落により、酪農家の増産意欲が減退しており、濃厚飼料の給与削減や乳牛の淘汰増加などが起きていることが、減少傾向の背景にあるとしている。そのため、同社は、2015/16年度(6月〜翌5月)の集乳量(生乳生産量に相当)は、前年度を5%以上下回ると見込んでいる。

 ただし、2015/16年度の6月〜8月の累計の生乳生産量は、174万8000トン(同1.6%増)と、6月までの増加傾向の影響から、前年をわずかに上回っている。

乳製品輸出量、全粉乳は大幅に増加

 NZ統計局(Statistics NZ)によると、2015年8月の主な乳製品の輸出量は、全粉乳、バターは前年同月を上回った一方、脱脂粉乳、チーズは前年同月を下回った(図22)。

・脱脂粉乳  1万7529トン (前年同月比13.1%減)

・全粉乳   5万4464トン(同19.1%増)

・バター   3万 256トン(同10.7%増)

・チーズ   1万9791トン(同 3.4%減)

 全粉乳は、最大の輸出先である中国向けが前年度の大幅な減少から回復したことが増加要因としており、バターは、日本向けの増加が反映された。一方、脱脂粉乳は、国際価格の低迷を受け減少傾向が続いており、また、チーズは、日本市場で競合する豪州産の増加が影響しているとみられている。

乳製品国際価格、上昇傾向

 2015年9月15日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(図23)。

・脱脂粉乳:1192米ドル
 (約24万円(1米ドル=121円)、前年同期比23.9%安、前回比17.3%高)

・全粉乳:2495米ドル
 (約30万円、同 7.3%安、同20.1%高)

・バター:3108米ドル
 (約38万円、同15.2%高、同13.2%高)

・チーズ:3206米ドル
 (約39万円、同 4.2%高、同10.1%高)

 取引価格は、前々回(8月18日開催)の入札以降上昇を続けており、今回の上昇率(前回比)は、過去5年でも最高水準となった。前々回の取引価格が上昇に転じた当時は、乳製品国際価格の上昇は一時的なものにすぎないとする現地報道が多かったが、継続的な価格上昇を踏まえ、2015/16年度中は上昇が続くとの見方が増えつつある。これは、春季の気候条件が悪く牧草が生育不良であることや、エルニーニョ現象によって夏季の降雨量の減少が見込まれ、生乳生産量が減少するとの見通しに基づくものである。

フォンテラ社、2014/15年度の年次レポートを公表

 フォンテラ社は9月24日、2014/15年度(年度は8月〜翌7月、生乳生産については6月〜翌5月)の年次レポートを発表した。これによると、同社全体の売上高は188億NZドル(約1兆4664億円、1NZドル=78円、前年度比15.4%減)となったものの、金利税引き前利益(EBIT)(注1)は9億7400万ドル(約760億円、同183%増)と収益性は大幅に改善した。これについて同社は、部門別製品構成比率の調整や、乳製品製造効率の向上といった取り組みが、年度後半に実を結んだためとしている。

 主要部門の動向を見ると、産業向け原料部門は、乳製品国際価格の低迷を受け、製品生産量は同2.3%減、売上高は同26.7%減となったが、中国の需要が緩和した全粉乳から、チーズやカゼインへと製造品目の切り替えを進めたことで、EBITは9億7300万NZドル(759億円、同43%増)となった。一方、製品生産量が同27.2%増と大幅に増加した消費者向け食料品部門では、堅調な需要が見られる東南アジア向けの輸出が増加し、EBITは4億800万NZドル(約318億円、同216%増)と大幅に増加した(表9)。

 また、2014/15年度の生産者支払乳価は、乳固形分1キログラム当たり 4.40NZドル(343円)となった。この結果、同社が最終的に生産者に支払う金額は、配当金1株当たり0.25NZドル(20円)と合わせて、4.65NZドル(363円)となり、前年度比45%減と大幅に下落した(注2)

 同社は、生産者への支払額の大幅な下落について、世界的な需要と供給の不均衡が背景にあるとしている。これは、乳価の上昇に伴う世界的な生乳生産の増加が進む中、ロシアの禁輸措置や中国経済の減速により、主要な乳製品輸入国の需要が減少したことで、乳製品国際価格が大幅に下落したためとしている。

 なお、2014/15年度の同社の集乳量(生乳生産量に相当)は、年度後半にかけて南島の一部地域で干ばつが発生したものの、年度前半の生乳生産が好調だったこともあり、前年度比2%増となった。

(注1)Earnings Before Interest and Taxesの略称で、EBIT(イービット)と呼ばれる。経常利益に支払利息を加え、受取利息を差し引いて求める。利払前の税引前当期利益。

(注2)通常、生産者は生乳出荷実績に応じてフォンテラ社の株式を取得する(乳固形分1kgに対して1株)。このため、最終的に生産者に支払われる金額は、生産者乳価に配当金を上乗せした金額となる。

(調査情報部 竹谷 亮佑)

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