需給動向 海外

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豚価低迷で本年2度目の民間在庫補助実施を決定


豚枝肉生産量は前年水準を上回って推移

 欧州委員会によると、2015年6月の豚枝肉生産量(EU28カ国)は前年同月比9.2%増の186万トンと、かなりの程度増加した(図11)。加盟国別に見ると、最大の豚肉生産国であるドイツが同7.0%増となるなど、主要生産国では前年水準を大幅に上回って推移している。

 2015年1〜6月の累計で見ると、前年よりやや増加(1143万トン、前年同期比5.2%増)しており、通年では3.8%程度上回る2297万トンと見込まれている。

豚枝肉卸売価格は23カ月連続前年同月安

 欧州委員会によると、2015年8月の豚枝肉卸売価格(EU28カ国)は、前月より1.0%値を下げ、前年同月比13.3%安の100キログラム当たり142.82ユーロ(1万9424円:1ユーロ=136円)となった(図12)。最大の豚肉生産国であるドイツは、前年同月比15.5%安の100キログラム当たり141.28ユーロ(1万9214円)となり、前年同月から26ユーロ(3536円)の下落となった。他の主要生産国であるスペイン、ポーランドなども前年同月から20ユーロ(2720円)以上の下落となっている。

 EUの豚枝肉卸売価格は、2014年の夏場を境に北米の生産量の回復に伴う輸出需要の減少および最大の輸出先であったロシアの禁輸措置による輸出機会の喪失により落ち始めており、2013年10月以降、23カ月連続で前年同月を下回って推移している。また、2015年は夏場の需要期に向けた価格の上昇もほとんど見られなかった。

5億ユーロの緊急支援策の一環、ラードも対象に追加

 欧州委員会は、9月の緊急農業理事会で価格が下落している乳製品や豚肉に対する5億ユーロ(680億円)の緊急支援策の実施を決定し、豚肉については市場価格の安定を図るため、民間在庫補助(PSA)を実施することとした。

 PSAは、EU加盟国の民間企業が保管する豚肉の保管費用の一部を、欧州委員会が補助するものであり、対象となる豚肉を市場から隔離することで、域内の市場価格の底上げを図ることを目的としている。

 EU域内の豚枝肉生産量が前年水準を大幅に上回って推移する中、2014年2月から続くロシアの禁輸措置などの影響により、豚枝肉卸売価格は長期間にわたって低迷を続けている。

 PSAの実施は、直近では2015年3月9日から8週間にわたって実施されており、その際は合計6万トンの豚肉が市場から隔離された。欧州委員会では、この実施が価格の下落を止めたと総括していたが、価格の十分な回復には至っていないという見方もあり、PSA実施終了後も再実施を求める声が後を絶たなかった。今回は、それ以来の本年2度目の実施となり、その効果が期待されている。なお、業界からの強い要望により、今回、ロシア禁輸の影響を大きく受けたラードが新たに対象に加えられている。

(調査情報部 大内田 一弘)

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