需給動向 海外 |
牛肉生産および輸出量、増加傾向から前年並みに鈍化 |
牛肉生産量、増加傾向が鈍化 豪州統計局(ABS)によると、2015年5月の牛肉生産量は、22万8893トン(前年同月比0.4%増)と、ほぼ前年並みとなった(図4)。2012年後半からの干ばつに伴いと畜頭数の増加が続いていたものの、出荷適齢牛の減少や干ばつ後の牛群再構築が開始されつつあることから、ようやく増加に歯止めがかかりつつある。しかしながら、生産量は過去5カ年平均を10%以上上回る水準にある上、雌牛のと畜割合も平年より高い状態が続いていることもあり、依然として、干ばつの影響が強く残っているとみられている。 州別に見ると、主要肉牛生産州であり、これまで増加傾向をけん引してきたクイーンズランド州は、前年同月比1.1%増とわずかな増加にとどまり、ニューサウスウェールズ州は同0.2%増と前年並みとなっている。さらに、干ばつの影響が小さいビクトリア州は同1.6%減とすでに減少傾向に転じており、今後、いずれの州においても、徐々に減少傾向に転じていくものとみられている、
牛肉輸出量、前年並み 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2015年7月の牛肉輸出量は、前年並みの12万1568トンとなった(表2)。2013年以降、と畜頭数の増加による牛肉生産量の増加を受け、おおむね前年同月を上回って推移していたものの、増産ペースの鈍化に伴い、一段落する形となっている。 ただし、輸出先別に見ると状況は異なっている。米国向けは、米国内の牛肉生産量の減少に伴う輸出増加が継続しており、前年同月を20.4%上回っている。特に、豪州から米国への牛肉輸出の主要品目である赤身率の高い加工用については、米国内の経産牛のと畜頭数減少と重なり、顕著に増加している。 日本向けは、同6.0%減少しており、3カ月連続で前年同月を下回っている。これは日本国内の輸入在庫の積み増しが進んでいることが影響しているとみられ、特に冷凍品を中心に減少している。韓国向けは同14.3%増と、前年をかなり大きく上回っており、特に最近は、主にスーパーマーケットなどで販売される冷蔵グレインフェッド牛肉の輸出が好調に推移している。なお、その他の国では、前年同月が低水準であった中国向けは大幅に増加しているものの、東南アジア、中東、EU向けはいずれも前年同月を下回っている。
肉牛取引価格、過去最高を更新 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2015年7月末日時点で1キログラム当たり559豪セント(520円:1豪ドル=93円)と過去最高を更新した(図5)。気象条件が良好な南部の穀物肥育生産者を中心とした導入意欲の高まりに伴い、上昇傾向が続いている。また、北部においても、乾燥気候下にあるものの、2015年初めに比べ価格は上昇しており、今後の気象条件の改善により牧草肥育生産者の導入意欲が高まれば、さらなる上昇も予想される。
MLAの牛肉需給見通し、生産量、輸出量ともに上方修正 MLAは2015年7月、四半期に一度の牛肉需給見通しを公表した(表3)。これによると、2015年の牛飼養頭数は、近年の高水準のと畜頭数および生体牛輸出頭数の影響から前年を6.2%下回ると見込まれている。また、2015年の牛肉生産量は、今後、牛群再構築に伴う減少が見込まれているため、同1.7%減と予測されている。ただし、前回2015年4月の見通しでは、同11.4%減となっていたものが大幅に上方修正されている。これは、2015年前半、予想以上にと畜頭数の増加傾向が続いたことが影響している。
一方、2015年の輸出量については、記録的な高水準となった前年をさらに2.3%上回ると見込まれている。これは、牛肉生産量が高水準で推移していることに加えて、米ドルに対して豪ドル安で推移する為替相場や、米国の牛肉生産量の減少と価格の上昇を受けて、米国、日本、韓国向けがいずれも好調に推移すると見込まれていることが背景にある。 なお、2015年の生体牛輸出頭数については、今後の適齢牛の減少見込みや最大の輸出先であるインドネシアの輸入割当頭数の減少により、前年を26.6%下回ると見込まれている。 (調査情報部 根本 悠)
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