需給動向 海外

◆米 国◆

牛飼養頭数は増加に転じ、今後の増頭に期待


2015年7月の牛飼養頭数、前年比2.1%増

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が7月24日に公表した「Cattle」によると、2015年7月1日時点の牛の飼養頭数は前年比2.1%増の9840万頭となった(図1)。牛の飼養頭数は、干ばつにより繁殖雌牛を中心にとう汰が進んだことなどから減少傾向にあったものの、一昨年以降の放牧環境の回復などを受けて、肉用繁殖雌牛の保留が進んだため、同年1月時点の調査に続き前年を上回った。

図1 牛飼養頭数の推移
資料:USDA/NASS
注 1:各年7月1日現在。
  2:2013年は公表数値なし。

雌牛飼養頭数はかなり大きく増加

 飼養頭数を種類別に見ると、保留傾向の高まりに伴い、肉用繁殖雌牛(経産牛)は同2.5%(75万頭)増の3050万頭となった。また、今後の繁殖基盤を担う肉用繁殖後継牛(未経産牛)は同6.5%増の490万頭とかなりの程度増加した(表1)。2015年7月の肥育もと牛価格(オクラホマシティの去勢牛、600〜650ポンド)を見ると、100ポンド当たり242.0米ドル(1キログラム当たり667円:1米ドル=125円)と、2013年7月以降、25カ月連続で前年を上回って推移しており、肉用繁殖雌牛増加の背景には、同価格の記録的な高値も起因しているとみられている。

雌牛を中心にと畜頭数は減少傾向

 USDA/NASSが7月24日に公表した「Livestock Slaughter」によると、6月の牛と畜頭数は246万5500頭と、前年同月比5.4%の減少となった(図2)。内訳を見ると、去勢牛は同0.2%増(142万700頭)とわずかに増加した一方で、肉用繁殖後継牛(未経産牛)は同18.3%減(59万3000頭)、肉用繁殖雌牛(経産牛)は同14.0%減(18万4400頭)と、それぞれ前年をかなり大きく下回った。また、牛肉生産量は同3.3%減の907万7000トンとなり、1頭当たり平均枝肉重量は、去勢牛のと畜割合が増加したことから、同2.3%増の370キログラムであった。なお、2015年の牛肉生産量についてUSDAは、前年比1.8%減の1080万6000トンとし、前月の予測値を下方修正した。

表1 種類別飼養頭数の推移
資料:USDA/NASS
注 1:表中の※1は500ポンド以上、※2は500ポンド未満。
  2:各年7月1日現在。
  3:2013年は公表数値なし。
図2 牛と畜頭数の推移
資料:USDA/NASS

肥育牛価格は、1年10カ月ぶりに前年同月を下回る

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が7月28日に公表した「Livestock Prices」によると、7月の肥育牛価格(1100〜1300ポンド)は、前年同月比6.0%安の100ポンド当たり149.0米ドル(1キログラム当たり411円)(速報値)となり、2013年10月以降、初めて前年同月を下回った(図3)。この要因としては、と畜頭数および牛肉生産量の減少幅が縮小したことに伴い、牛肉卸売価格が下落したことから、食肉パッカーからの肥育牛の引き合いが弱まったことが挙げられる。

 なお、7月の牛肉卸売価格(カットアウトバリュー(注))は、100ポンド当たり240.0米ドル(1キログラム当たり661円)(速報値)となり、2013年2月以来、2年5カ月ぶりに前年同月を下回った。

(注)各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構成した卸売指標価格

図3 肥育牛価格の推移
資料:USDA/ERS
  注:ネブラスカのチョイス級相対取引価格、去勢1100〜1300ポンド。
(調査情報部 野田 圭介)


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