需給動向 海外

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生乳出荷がピーク期を迎える中、乳価は5年ぶりの30ユーロ割れ


2015年5月の生乳出荷量、前年同月比2.0%増

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2015年5月の生乳出荷量(EU28カ国)は前年同月比2.0%増の1393万トンとなり、前月に続き前年同月を上回った(図16)。

図16 生乳出荷量の推移
資料:ZMB
  注:2015年は暫定値。

 国別では、生乳生産のピーク期を迎えた中で、本年3月末での生乳クオータ(生産上限枠)撤廃により増産体制を整えているアイルランドが前年同月比9.9%増、オランダが同6.6%増と大きく伸ばすなど、28カ国のうち17カ国が前年同月を上回った。一方、生乳取引価格の低迷による生産意欲の減退などにより前年同月を下回る国も11カ国あり、全体としては大きな伸びとはならなかった。

2015年6月の生乳取引価格、前年同月比20.2%安

 欧州委員会によると、2015年6月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前月からさらに値を下げ、前年同月比20.2%安の100キログラム当たり29.99ユーロ(4109円:1ユーロ=137円)と、2010年6月以来5年ぶりとなる30ユーロ割れとなった(図17)。

図17 生乳取引価格の推移
資料:欧州委員会

 最も下落率が高かったのはエストニアで、前年同月比29.1%安の23.26ユーロ(3187円)となっている(表8)。また、前月比で見ても28カ国のうち24カ国で値を下げた。

表8 加盟国別生乳取引価格の比較(EU28カ国)
資料:欧州委員会
  注:赤帯は、EU全体の生乳出荷量の約6割を占める上位4カ国。

 生乳取引価格は、乳製品国際相場の下落に伴い10カ月連続で前年同月を下回っているが、生乳出荷量が前年同月を上回っていることなどから、さらなる下落を懸念する見方も強い。

脱脂粉乳の公的買入を実施

 欧州委員会が8月12日に公表した資料によると、脱脂粉乳の公的在庫が計4246トン発生したことが明らかになった。内訳は、リトアニアが1134トン、ポーランドが880トン、ベルギーが1800トン、英国が432トンとなっている。

 EUの公的在庫は、各加盟国における脱脂粉乳の卸売価格が公的買入価格(100キログラム当たり169.80ユーロ(2万3263円))を下回った場合、当該国の買入機関が脱脂粉乳の製造業者または取扱業者の申請に基づき同価格で買い入れるもので、EU全体で10.9万トンが上限とされている。

 脱脂粉乳価格は、EU平均では2009年の9月以降、公的買入価格を上回って推移しているが、直近の7月27日の週の価格は、同173ユーロ(2万3701円)と今年最安値を更新し、公的買入価格(同169.80ユーロ)に近づいている(図18)。

図18 脱脂粉乳の卸売価格の推移
資料:欧州委員会
(調査情報部 大内田 一弘)

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