需給動向 海外 |
生乳生産は増加傾向、乳製品国際価格は過去最安値を更新
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2014/15年度の5月の生乳生産量、過去5年で最高 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2015年5月の生乳生産量は79万6000トン(前年同月比10.7%増)とかなりの程度増加し、前月に引き続き前年同月を上回った(図21)。また、2014/15年度(6月〜翌5月)の累計は2190万9000トン(前年度比2.8%増)となり、北島を中心とした良好な気候条件を反映して、ここ5年で最高を記録した。
一方で、現地報道によると、カンタベリー地方をはじめとした南島では、過去に例を見ないほどの干ばつが深刻化しており、生産者の間から、牧草の不作を補うための飼料穀物にかかるコストの増加に対する政府の支援を求める声が上がっている。また、一部の生産者の間では、生産コストを少しでも抑えるために、生乳生産効率の悪い個体をとう汰する動きもみられている。 乳製品輸出量、中国の需要低迷を受け引き続き減少 NZ統計局(Statistics NZ)によると、2015年6月の主な乳製品の輸出量は、これまで増加傾向で推移していたチーズが前年同月割れとなるなど、全ての品目で前年同月を下回った(図22)。 ・脱脂粉乳:1万9900トン ・全粉乳 :9万1400トン ・バター :3万トン ・チーズ :2万1000トン
国別輸出実績を見ると、中国向けは、脱脂粉乳(6000トン、前年同月比19.9%減)、全粉乳(1万9900トン、同38.0%減)、バター(5200トン、同6.3%減)はいずれも減少傾向が続いている。これは、粉乳を中心に輸入品在庫が多いことや、中国の生乳生産量が増加見通しであることを受け、輸入品に対する需要が低迷しているためとみられる。なお、チーズについては、主要輸出先である日本向け(1500トン、同72.9%減)が大幅に減少しており、これは、日本市場で競合する豪州産の輸入量増加の影響とみられる。 乳製品国際価格、下落に歯止めかからず 2015年7月15日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)における1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(図23)。 ・脱脂粉乳:1702米ドル ・全粉乳:1848米ドル ・バター:2460米ドル ・チーズ:2613米ドル
取引価格はいずれの品目も下落し、脱脂粉乳に続いて全粉乳もトン当たり2000米ドルを下回る結果となった。また、脱脂粉乳、バター、チーズは、GDTが実施された2008年7月以降、最安値となった。現地報道によると、NZドル安で推移する為替相場から輸出環境は改善されているものの、国際市場での引き合いは弱く、乳製品国際価格が上昇に転じるには時間を要するとしている。 フォンテラ社、事業再編に伴い523人の従業員を解雇 NZ最大手乳業メーカーのフォンテラ社は7月15日、全従業員の2.9%に相当する従業員523人を解雇すると発表した。対象は管理部門も含めた全部門となり、解雇は9月以降順次行われる予定である。これにより同社は、6000万NZドル(50億円、1NZドル=84円)のコスト削減につながるとしている。乳製品国際価格の下落に歯止めがかからない中で、収支を改善し、国際競争力を高める狙いがあるとみられる。 また、同社は、今後の事業展望として、育児用粉乳など中国市場向けの高付加価値乳製品製造ラインの強化や事業効率の改善などに取り組み、さらなる改革を進めるとしている。 (調査情報部 竹谷 亮佑)
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