需給動向 海外

◆豪 州◆

2016/17年度の牛肉生産量、輸出量ともに減少の見込み


生産量、前年同月比で10カ月連続の減少

豪州統計局(ABS)によると、2016年4月の牛肉生産量は、18万3108トン(前年同月比9.3%減)と10カ月連続で前年同月を下回った(図4)。



これは、干ばつによる過去数年間にわたる雌牛の高水準の淘汰により、繁殖雌牛の飼養頭数が減少し、肥育もと牛の供給が減少している上、牛群再構築の進展により雌牛が保留傾向にあることなどが背景にある。

日本向け輸出量、グレインフェッド牛肉が10カ月ぶりに前年超

豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2016年5月の日本向け牛肉輸出量は、グラスフェッド牛肉が1万1889トン(前年同月比13.6%減)と13カ月連続で前年同月を下回った一方、グレインフェッド牛肉は1万1571トン(同4.8%増)と10カ月ぶりに前年同月を上回った(図5)。

牛肉生産量の減少や米国産牛肉との競合により、グラスフェッド牛肉およびグレインフェッド牛肉はともに減少傾向で推移していたが、グレインフェッド牛肉は、日本国内での焼肉店の売上高が好調に推移していることに加え、ゴールデンウィークに向けた荷動きが活発であったことから、焼材向けを中心に引き合いが強まり、増加に転じた。



肉牛取引価格、過去最高を記録

MLAによると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年6月末日時点で1キログラム当たり659豪セント(521円:1豪ドル=79円)と、前月末時点から82豪セント(65円)上昇し、過去最高を記録した(図6)。繁殖雌牛の減少による肥育もと牛の減少と、牛群再構築の進展による雌牛保留傾向により、家畜市場での取引頭数は減少している。一方、東部の主要肉牛生産地域では降雨に恵まれ、今後も平年を上回る水準での降雨が予想されていることから、牧草の良好な生育が見込まれている。このため、牧草肥育業者と穀物肥育業者間での肥育もと牛導入競争が高まっており、価格は過去最高水準で推移している。



2016/17年度の需給見通し、生産量、輸出量ともに減少

豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2016年6月、「Agricultural Commodities」の中で、2016/17年度(7月〜翌6月)の牛肉需給見通しを公表した(表1)。



これによると、2017年6月末時点の牛飼養頭数は、2012年から2015年の干ばつにより雌牛を中心にと畜頭数が増加した影響から、2590万頭(前年度比0.8%減)と4年連続で減少見込みとなっている。

また、2016/17年度の牛と畜頭数は、牛飼養頭数の減少と牛群再構築による雌牛保留により、822万頭(同7.3%減)と見込まれている。牛肉生産量は、雌牛と畜割合の低下と穀物肥育牛のと畜頭数の増加により1頭当たり平均枝肉重量が増加するため、と畜頭数の減少をわずかに相殺し、226万5000トン(同3.9%減)と見込まれている。

牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少に伴い110万トン(同5.7%減)と見込まれている。このうち、米国向けは、米国内の牛肉生産量の回復に伴い、29万トン(同14.7%減)と見込まれている。日本向けは、小売価格の高い牛肉から豚肉や鶏肉へ需要が移っていることを反映して、25万5000トン(同3.8%減)と見込まれている。一方、中国および韓国向けは、牛肉需要の増加に対して国内の供給量が限られていることから、それぞれ増加すると見込まれている。ただし、中国向けについては、ブラジルからの輸出量が増加しているため、豪州産のシェアは低下するとしている。

一方、生体牛輸出頭数については、117万5000頭(同5.0%増)と見込まれている。これは、最大の輸出先であるインドネシアにおいて、牛肉需要の増加に国内の生産量が追いつかず、豪州からの生体牛に引き続き強い需要が見込まれるためである。

肉牛取引価格は、1キログラム当たり517セント(408円、同2.4%増)まで上昇すると見込まれている。これは、放牧環境が改善すると見込まれていることから、肥育業者のもと牛導入意欲が高まる一方、牛飼養頭数の減少と牛群再構築の進展により、市場に出荷される牛が減少するためであり、今後も取引価格は上昇するとしている。

(調査情報部 大塚 健太郎)


				

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