需給動向 国内

◆牛 肉◆

子取り用めす牛飼養頭数、減少に歯止め


平成28年5月の牛肉需給を見ると、生産量は2万5248トン(前年同月比0.3%減)と、14カ月連続で前年同月を下回った。輸入量は前年同月をかなりの程度上回る4万6399トン(同10.0%増)、うち豪州産は2万5293トン(同1.4%減)と前年同月をわずかに下回った一方で、米国産は焼き材などに使用されることの多いばらを中心に大きく増加し、1万7710トン(同30.0%増)と前年同月を大幅に上回った。推定出回り量は前年同月をかなりの程度上回る6万6351トン(同6.8%増)となり、推定期末在庫は前月から5189トン積み増し、11万9657トン(同14.6%減)となった(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。

小規模層を中心に、飼養戸数・飼養頭数の減少続く

平成28年7月5日に農林水産省が公表した「畜産統計」によると、同年2月1日現在の肉用牛飼養戸数は、昭和32年の調査開始以降、59年連続での減少となる5万1900戸(前年比4.6%減)となった。

飼養戸数を肉用牛飼養頭数規模別に見ると、5〜9頭および20頭以上の階層では増加に転じたものの、1〜4頭および10〜19頭規模の階層で減少が続いており、中でも、1〜4頭の小規模層は前年から2900戸の大幅な減少(同17.4%減)となった。小規模層を中心に離農が進行している背景には、生産者の高齢化や後継者不足、子牛価格の高騰や飼料価格の高止まりによる生産コストの増大などがある。一方で、100頭以上規模の階層では8%を超える増加となった。

また、肉用牛飼養頭数は、22年以降、7年連続での減少となる247万9000頭(同0.4%減)、うち、肉用種は164万2000頭(同1.1%減)、乳用種は83万7100頭(同1.1%増)であった。乳用種の増加は、経産牛が減少から微増に転じたことに加え、高い副産物収入を期待して子牛の肉用仕向けが増加したことによる(牛乳・乳製品需給で後述)。内訳は、ホルスタイン種ほかは33万1800頭(同3.9%減)と6年連続で減少したものの、交雑種が子牛価格高騰を受けた酪農家における乳用牛への黒毛和種交配率の上昇により、50万5300頭(同4.7%増)と4年ぶりに増加に転じている。飼養頭数を肉用牛飼養頭数規模別に見ると、100〜199頭規模の階層(同8.6%増)を除く全ての階層で減少しており、中でも、飼養戸数と同様、1〜4頭の小規模階層(同21.2%減)における減少幅が大きくなっている。

この結果、1戸当たり飼養頭数は、前年から2.0頭増加して47.8頭となり、生産の集約化が進んでいることが見て取れる。なお、飼養戸数の4.4%を占める200頭以上の層が肉用牛の54.5%を飼養していることが明らかとなった(図1、表1)。





子取り用めす牛飼養頭数、6年ぶりの増加

一方、肉用種の子取り用めす牛の飼養頭数は、前年から8600頭増の58万8100頭(前年比1.5%増)と、6年ぶりに増加に転じた。地域別に見ると、特に飼養頭数の多い東北は9万4600頭(同4.3%減)とやや減少したものの、北海道は7万2700頭(同10.5%増)、九州は28万4400頭(同2.8%増)といずれも増加に転じた(表2)。肉用子牛価格は、子牛の出生頭数の減少や枝肉価格の上昇を背景に、24年秋以降、上昇しており、肥育経営を圧迫する状況が続いている。生産基盤の強化に向けて、畜産クラスター事業をはじめ、さまざまな対策が講じられる中、子取り用めす牛飼養頭数の減少に歯止めがかかったことで、今後の生産基盤の回復が期待される。



(畜産需給部 二又 志保)


				

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