需給動向 海外

◆ブラジル◆

2015年の輸出、大幅なレアル安が追い風に


輸出量は前年比13.0%増

ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2015年の冷蔵・冷凍豚肉輸出量は、前年比13.0%増の47万2710トンと直近5年間で2番目の高水準となった(表2)。



国別に見ると、最大輸出先となったロシア向けは、同27.2%増の23万6527トンと大幅に増加した。ロシアは、2014年8月から欧米諸国に対して禁輸措置を継続している一方、ブラジルの輸出認定施設を追加するなどしてブラジル産豚肉へのシフトを強めている。また、第2位の香港向けは、中国国内で豚肉生産が落ち込んでいることを受け、間接需要で大幅に増加した。

2015年12月のブラジルレアルの対米ドル為替相場を見ると、同年1月比で5割安となった(図10)。これにより、価格競争力が大幅に増したブラジル産豚肉の平均輸出単価(米ドル建て)は、下げ基調で推移して前年比28.5%安となった。EU、米国、カナダに次ぐ世界第4位の豚肉輸出国のブラジルにとって、2015年は国際市場での存在感が増した1年となった。



2016年は増産見込みも、生産コスト高による減少懸念

米国農務省の海外農業調査局(USDA/FAS)は3月2日、ブラジルの2016年の豚肉生産量を前年比2.6%増の360万9000トン(枝肉重量ベース)と予測した。この要因として、牛群再構築による減産で牛肉価格が高止まりしていることに加え、深刻な景気低迷も相まって安価な鶏肉および豚肉の需要が堅調なことや、レアル安米ドル高の為替相場による輸出競争力の高まりなどを挙げている。

SECEXによると、2016年1〜6月の冷蔵・冷凍豚肉輸出量は、前年同期比55.5%増の30万1176トンとなった(表3)。このうち、中国向けは、同国内での豚肉需給が逼迫している中、2月4日に輸出認定施設が従来の7カ所から11カ所に増加したことで輸出が本格化し、大幅な伸びを記録した。



このように、輸出は好調である一方、養豚業界をとりまく状況は良くない。2016年初来、南部(注)を中心としたトウモロコシ需給逼迫に伴い、生産コストが過去最高水準にまで上昇している(図11)。これにより、大手豚肉生産企業でも収益が悪化し、6月以降、一部で生産調整を余儀なくされていると報じられた。また、ブラジル養豚生産者協会(ABCS)によると、収益性悪化により、種豚の1割程度が淘汰されたとの推計が出されており、今後の豚肉生産および輸出への影響が懸念されている。

(注) ブラジルの豚肉生産は、南部3州(サンタカタリーナ州、リオグランデドスル州、パラナ州)で約6割が行われている。



(調査情報部 米元 健太)


				

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