話 題 畜産の情報 2016年8月号

たまごの消費行動〜2015年調査結果の概要〜

一般社団法人 JC総研 経営相談部 主任研究員 あおやぎやすもと


1 はじめに

当総研では2015年11月「畜産物等の消費行動に関する調査」(全国の既婚女性/男性、単身女性/男性の2325名を対象としたWeb調査)を実施し経年変化を含めた分析を行い、その結果をホームページや各種媒体で公表している。本稿では、たまご(鶏卵)の消費行動に絞って紹介するが、その前にたまごの生産量と小売価格について触れる。

2 生産量と小売価格

平成28(2016)年3月に公表された「鶏卵流通統計調査」(農林水産省)によれば、27(2015)年の鶏卵生産量は約252万トン(前年比0.8%増)で、都道府県別には茨城県8.0%・千葉県6.9%・鹿児島県6.7%の上位3県を含む上位10県で全体の51.4%を占める。最近10年間の生産量を見ても、23年約248万トンが下限、19年約258万トンが上限で、その他18年約249万トン以外すべて250万トン台であり、安定した生産量で推移している。

一方、「物価の優等生」と言われて久しいたまごは、良質なタンパク質の豊富な「栄養価の優等生」でもあるが、その小売価格の変動幅は他の生鮮食品と比べると小さい。例えば、総務省の「小売物価統計調査」によれば、27年の東京都区部の月別価格(Lサイズ10個入りパック当たり)は、この10年で最も高い水準となったが、1月242円・2月239円・3月241円…(中略)10月263円・11月263円・12月263円で、年平均249円だ。同時期において、全国81都市(人口15万人以上)の年平均価格を見ても、ほとんどが200〜250円の範囲に収まっている。

3 摂食頻度:「週に1日以上食べる」は減少、「毎日食べる」は増加

まず、家庭・自宅で調理をする人にたまごを一週間に何日食べているかを尋ねた(図1)。



「週に1日以上食べる」(「毎日」+「週の半分以上」+「週に1〜3日」)は、トータルで83.5%(前回84.8%)と減少したが、「毎日」に限ると23.1%(同21.4%)と増加した。属性別にみると「週に1日以上食べる」は、既婚層は摂食頻度が高いものの減少し、単身層は男女とも大きく増加した。年齢層別には「週に1日以上食べる」は、20代以下は75.6%(同68.1%)と7割超であるのに対し、70代以上は91.9%(同88.5%)と9割を超え、そのうち「毎日」に限ると70代以上は33.8%(同28.7%)と大きく増加した。高齢者の健康維持への関心の高さの一端が、垣間見えるようだ。

4 購入回数:「週に1回以上買う」が減少

購入回数について尋ねたものが、図2である。「週に1回以上買う」は、トータルで70.8%(前回72.3%)と減少した。属性別には、既婚層で減少し、単身層で増加した。年齢層別には、20代以下・40代・70代以上で増加した。

ただし、家庭で食べる量の1年前との増減を尋ねた別の設問では、「増えた」は11.2%(同9.0%)と増加、「減った」は9.8%(同10.4%)と減少したことから類推すると、たまごの消費量はさほど落ち込んではいないと思われる。



5 購入場所と位置づけ:スーパーが8割超

購入場所は、スーパーが83.8%(前回83.9%)と圧倒的トップであり、次いで生協6.5%(同7.1%)、3位は農協・Aコープ2.0%(同1.8%)、4位は食品ディスカウントストア1.8%(同1.7%)と続く。なお、百貨店やコンビニエンスストアは1%以下となっている。

食材の位置付けとして、たまごは「無ければ困る」、「無ければ非常に困る」を合わせると86.0%(同87.5%)と減少したものの、牛・豚・鶏の食肉類や牛乳に比べて圧倒的に支持率が高く、2位の牛乳74.6%(同76.6%)より11.4ポイントも高い。

6 選択基準:「消費期限までの余裕」がトップで5割超

購入する際にどのような基準で選ぶかを尋ね、年次別推移を示したものが、図3である。トップは「消費期限までの余裕」で56.0%(前回54.5%)と増加し5割を超え、2位は「10個入りパック」48.6%(同47.8%)と増加し、おおむね半数を占める。次いで「特売やタイムサービス品」も40.1%(同38.6%)と増加した。一方、「6個入りパック」、「4個入りパック」、「2個入りパック」など少量パックは5%以下で、ポイントは思ったほど高くない。



属性別・年齢層別に示したものが、図4である。「消費期限までの余裕」は単身女性と60代以上で6割を超え、「10個入りパック」は既婚女性と60代以上で5割を超えた。「特売やタイムサービス品」は既婚女性・40代以下の各世代で4割を超え、特に30代では5割を超えた。また、「地元または近県産」はトータル20.1%で、年齢層が上がるほどポイントが高く70代以上は3割を超えた。「Lサイズ」、「茶色のたまご」、「Mサイズ」も高年齢層でポイントが高く、こだわりがうかがえる。



図5は、購入時の基準価格を尋ねたものである。トータルでは、100円〜199円が56.6%(同60.9%)と減少したが、高年齢層では200円以上を選ぶ割合が高く、60代は40.8%(同38.6%)、70代以上は47.5%(同41.8%)とそれぞれ増加した。



7 おわりに

今回調査した2015年11月は、全国的にたまごの小売価格高騰期に当たったこともあり、購入頻度・購入回数ともやや減少したが、1年前と比べて家庭での摂食量は減っていないと回答した消費者も多い。また、手頃な価格で購入できるうえ、食生活の必需品として「無ければ困る」との位置づけは極めて高い。

今後、消費者の鮮度保持意識の向上などから家庭での冷蔵保管が進み、生鮮品としての扱いが一層強まるだろう。新鮮なたまごを食べて健康家族を築き、長寿社会に貢献する自然食品としての存在価値をさらに高めたいものである。

「畜産物等の消費行動に関する調査結果」は、(一社)JC総研のホームページに掲載しています。

http://www.jc-so-ken.or.jp/agriculture/investigate03.php


(プロフィール)

昭和53年3月 早大政経学部政治学科卒

昭和53年4月 JA全農入会

平成16年2月 近畿圏直販事業推進室長

平成19年2月 JA全中出向

平成27年3月 (一社)JC総研出向

平成28年2月から現職


				

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