需給動向 海外

◆アルゼンチン◆

牛肉生産は低迷も輸出は好調に推移


多雨による冠水で減産

アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)によると、2016年1〜8月の牛と畜頭数は前年同期比6.0%減の764万8981頭、牛肉生産量は同5.6%減の172万7000トン(枝肉重量ベース)となった(図10)。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、アルゼンチンは現在、牛群再構築期間にあるが、2016年雨季はエルニーニョ現象による多雨の影響で主産地が冠水し、草地の状態が大幅に悪化した。これにより、肥育牛の出荷が滞ったほか、一部ではへい死被害が発生した。

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一方、牛出荷価格は高値で推移しており、農家は増頭意欲が高く雌牛を保留している(図11)。エルニーニョ現象が終息して以降、天候回復により草地の状態も改善しているとされる。このため、牛肉業界としては、2015年12月10日の政権交代で牛肉にかかる各種輸出規制(注)も既に撤廃されていることから、今後の輸出増に期待が集まっている。

(注) 前政権は国内優先供給政策として、牛肉輸出税(15%)をはじめとした輸出管理政策を講じていたが、マクリ新大統領は各種輸出規制の撤廃・緩和を進めている。

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なお、肥沃な土壌を有するパンパ地域では、穀物生産を複合的に行っている肉牛生産者も見られ、肥育後期の90〜120日間に穀物肥育するフィードロットが拡大傾向にある。2015年時点では、全と畜頭数に占めるフィードロット由来の牛の割合は28%で、若齢牛を好む傾向がある同国にとって増体率を高める穀物給与は有効な手段となっている。

牛肉輸出は前年から増加

アルゼンチン国家統計院(INDEC)によると、2016年1〜8月の牛肉輸出量は、前年同期比6.9%増の10万2518トン(製品重量ベース)となった(表6)。輸出先別では、中国向けが、旺盛な牛肉需要を受け引き続き大幅に増加した。中国は、価格優位性がある南米(ウルグアイ、ブラジル、アルゼンチン)からの調達を増やしている。

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一方、EUや米国などに対して農畜産物の輸入禁止措置を講じているロシア向けは、同国の購買力が原油国際価格の下落やルーブル安により低下したことから、前年同期比50.0%減の2718トンと大幅に減少した。また、2014年に最大輸出先であったチリ向けは、同国で安価なパラグアイ産の輸入が増加したことから、同8.9%減とかなりの程度減少した。

EU向けのうち、ヒルトン枠(EU向け骨なし高級生鮮牛肉の低関税割当枠)は同6.7%増の1万4431トンとなった。輸出先は、ドイツ(ヒルトン枠向けシェア63.3%)、オランダ(同23.0%)で大半を占めている。

2017年はやや上向く見通し

USDA/FASは9月30日、2017年のアルゼンチンの牛肉生産量(枝肉重量ベース)を前年比3.8%増の270万トンと予測した(表7)。生産量の約9割が仕向けられる国内消費は、景気低迷を受けてやや増加の3.4%増にとどまるものの、輸出向けは中国などの旺盛な需要を見込んで同9.1%増の24万トンと予測されている。

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なお、米国農務省動植物衛生検査局(USDA/APHIS)は2015年6月、アルゼンチンの一部地域からの生鮮牛肉の輸入再開見通しを発表しており、現在は両国間で各種手続きが進められているが、2017年中に再開に至る可能性も示唆されている。

(調査情報部 米元 健太)


				

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