需給動向 海外

◆豪 州◆

牛飼養頭数、2017年に回復の見通し


牛肉生産量、大幅に減少

豪州統計局(ABS)によると、2016年8月の成牛と畜頭数は、62万5700頭(前年同月比15.3%減)と大幅に減少した。と畜頭数の減少により、同月の牛肉生産量(子牛肉を除く)は、17万9866トン(同11.0%減)と14カ月連続で前年同月を下回った。

一方、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、主要生産州(注)の週間と畜頭数は、6月をピークに減少傾向で推移し、10月1週目は10万6602頭(前年同期比26.0%減)であったが、2週目に増加に転じ、3週目は12万6268頭(同24.4%減)と10月1週目と比べて大幅に増加している(図5)。例年、季節的に10、11月は市場に出回る頭数が増加し、と畜頭数も増加する傾向にあるが、一部で洪水が発生するほどの降雨があり出荷できなかった牛が、10月の天候回復を受けて、一度に流れ込んだことも増加の要因と見られる。

(注) クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、南オーストラリア州、タスマニア州(北部準州、西オーストラリア州、首都特別区を除く)。

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肉牛取引価格、600豪セント台に下落

MLAによると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、8月に過去最高である1キログラム当たり726豪セント(595円:1豪ドル=82円)を記録し、9月は概ね横ばいで推移したが、10月に入って下落傾向となり、10月末時点では、同665豪セント(545円)と600セント台へ下落した(図6)。

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肉牛価格は、季節的に市場に出回る頭数が増加する10月に、一時的に下落する傾向にあり、今年度も同様の傾向で推移したものとみられる。

牛肉輸出量、韓国向けが好調

豪州農業・水資源省(DAWR)によると、2016年9月の牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少に伴い7万5405トン(前年同月比25.8%減)と、前年同月を大幅に下回った(表4)。

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主な輸出先国別に見ると、米国、日本向けが大幅に減少した一方、韓国向け、東南アジア向けは増加した。

韓国向けが堅調な背景には、同国で、生産量の減少と牛肉価格の上昇により、輸入牛肉に対する需要が増加していることがある。しかし、MLAは、10月16日時点の通関数量が16万466トンと、韓豪自由貿易協定(FTA)に基づくセーフガード発動基準(2016年は16万829トン)の99.8%に達していることから、近々セーフガードが発動すると見ている。同措置が発動した場合、豪州からの輸入牛肉に係る関税率は、現行の32%から40%まで引き上げられることから、同国向け輸出量の増加傾向にブレーキがかかるものとみられる。

MLA、2016年の牛肉生産・輸出見込みを前回に続き下方修正

MLAは10月12日、四半期に一度の牛肉需給見通しを発表した(表5)。

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この中でMLAは、2016年については、1頭当たり枝肉重量を除く全ての項目で前回(2016年7月時点)に続き下方修正した。

牛と畜頭数は、牛飼養頭数が減少していることに加え、十分な降雨により牧草環境が良好となり、多くの生産者が牛群再構築に向けて雌牛を保留していることから、前回から30万頭少ない 710万頭(前年比21.0%減)と見込んでいる。牛肉生産量は、と畜牛に占める穀物肥育牛の割合増加に伴い、1頭当たり枝肉重量が増加することにより、と畜頭数の減少がわずかに相殺されるものの、前回から9万3000トン少ない203万8000トン(同19.0%減)と見込んでいる。牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少を受け、144万1000トン(同24.0%減)と見込んでいる。

一方、2017年については、牛群再構築の進展に伴い、牛飼養頭数は、3年ぶりに前年を上回る2654万頭(同1.5%増)になると見込んでおり、2018年以降は、全ての項目で年々増加する見込みとしている。

(調査情報部 大塚 健太郎)


				

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