需給動向 国内 |
平成28年9月の牛肉需給を見ると、生産量は2万6387トン(前年同月比1.0%減)と前年同月をわずかに下回った。輸入量は4万2300トン(同8.1%減)、うち冷蔵品が1万9163トン(同12.6%増)、冷凍品が2万3094トン(同20.3%減)となった。推定出回り量は前年同月をわずかに下回る7万1083トン(同0.3%減)となり、推定期末在庫は前月から2577トンを取り崩し、12万4861トン(同12.8%減)と9カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
上半期の生産量、交雑種が増加に転じる
平成28年度上半期(4〜9月)の生産量は、8月を除く各月とも前年同月を下回った結果、15万9433トン(前年同期比2.7%減)とわずかに減少した(図1)。品種別では、和牛が6万9775トン(同6.0%減)、乳用種が4万9430トン(同3.1%減)といずれも減少した一方、交雑種は酪農家における乳用牛への黒毛和種交配率の上昇により、3万8204トン(同4.7%増)と増加に転じた。
上半期の輸入量、米国産冷蔵品が大幅に増加
平成28年度上半期の輸入量は、27万6837トン(前年同期比3.5%増)とやや増加した。うち、冷蔵品は12万1439トン(同15.5%増)と前年同期をかなり大きく上回った一方、冷凍品は15万4993トン(同4.2%減)と前年同期をやや下回った。
国別に見ると、最大の輸入先国である豪州産は、冷蔵品が6万2658トン(同5.0%減)、冷凍品が8万7908トン(同10.4%減)といずれも減少した。豪州産については、日豪EPA発効3年目の28年度の関税率は冷蔵品で30.5%、冷凍品で27.5%に削減されているものの、降雨による飼養環境の改善に伴い出荷頭数が減少する中、肉牛価格は記録的な高値で推移しており、輸入量の減少につながったものとみられる。
一方、次いで輸入量の多い米国産は、冷蔵品が5万3722トン(同54.0%増)と大幅に増加した他、冷凍品も5万1835トン(同3.3%増)とやや増加した。米国産は、出荷頭数の回復に伴い生体価格が低下しており、輸入業者にとって買い付けしやすい環境になっていたと思われる。こうしたことから、ばらや肩ロースなどを中心に、豪州産との比較で割安感のある米国産への切り替えが進んだものとみられる。
上半期の推定出回り量、国産品が減少した一方、輸入品は増加
平成28年度上半期の推定出回り量は、42万6537トン(前年同期比2.8%増)とわずかに増加した。うち、国産品は15万8630トン(同1.3%減)と前年同期をわずかに下回った一方、輸入品は26万7907トン(同5.5%増)と前年同期をやや上回った。生産量の減少により、国産牛肉の相場高が続く中、より安価な輸入品の需要が高まっていることがうかがえる。
9月末の推定期末在庫、前年同月を下回る12万5千トン
平成28年9月末の推定期末在庫は、12万4861トン(前年同月比12.8%減)と前年同月をかなり大きく下回った。うち、全体の9割以上を占める輸入品は、冷凍品輸入量の減少に伴い、11万3821トン(同13.8%減)とかなり大きく、国産品は1万1040トン(同0.4%減)とわずかに、いずれも前年同月を下回った。
牛枝肉卸売価格、乳用種や交雑種の下位等級を中心に弱含みの展開
このような状況の中、東京市場における平成28年度上半期の枝肉卸売価格は、高値疲れや冷蔵品輸入量の増加などにより、記録的な高値で推移した前年同期のような上昇は見られず、乳用種や交雑種の下位等級を中心に弱含みの展開となった。10月の同価格(速報値)を見ると、和牛去勢A−4が1キログラム当たり2609円(前年同月比6.6%高)と続伸した一方、交雑種去勢B−3は同1694円(同1.3%安)、乳用種去勢B−2は同984円(同11.1%安)といずれも前年同月を下回った(図2)。
(畜産需給部 二又 志保)