需給動向 海外 |
◆米 国◆
牛肉輸出量は生産量の増加により前年同月を大幅に上回る
フィードロット導入頭数は1年9カ月ぶりに前年同月を下回る
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が10月21日に公表した「Cattle on Feed」によると、2016年9月のフィードロット導入頭数は、前年同月比1.9%減の190万5000頭となり、2014年12月以降では初めて前年同月を下回った(表1)。この要因についてUSDAは、肥育牛価格が安値で推移し収益性が悪化したため、フィードロットの導入意欲が減退していることを挙げている。同月の出荷頭数は、同5.5%増の173万2000頭となり、同年上半期の導入頭数が多かったことから、依然として前年同月を上回っている。この結果、10月1日時点のフィードロット飼養頭数は、1026万6000頭と前年同月並みとなった。
牛肉生産量は引き続き堅調
USDA/NASSが10月20日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2016年9月の牛と畜頭数は、前年同月比5.7%増の261万6000頭、1頭当たり枝肉重量は同1.3%減の380キログラムとなった。同月の牛肉生産量は、同4.4%増の98万8000トンと、牛群再構築の進展を背景に2015年11月以降概ね前年を上回って推移している(図1)。
USDAは今後の生産量について、2016年は前年比5.4%増の1132万5000トン、2017年は同3.7%増の1173万9000トンと増加傾向での推移を見込んでいる。
肥育牛価格は前年同月を大幅に下回る
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2016年10月の肥育牛価格(速報値)は、前年同月比24.0%安の100ポンド当たり101米ドル(1万706円:1米ドル=106円)となった(図2)。生産量の増加により、2015年7月以降前年同月を下回って推移している。USDAは今後も肥育牛価格は安値で推移するとしているが、シカゴ・マーカンタイル取引所の報告書は、現在の肥育牛の出荷が堅調なことに加え、フィードロットの800ポンド以上の肥育もと牛の導入頭数が減少したことで、2016年冬季の価格が上昇する可能性を示唆している。
また、10月の牛肉卸売価格(注)(速報値)は、前年同月比11.8%安の100ポンド当たり187米ドル(1万9822円)となった。
(注) チョイス級、600〜900ポンドのカットアウトバリュー。カットアウトバリューとは、各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構成した卸売指標価格。
牛肉生産量の増加により、輸出量は増加し、輸入量は減少
USDA/ERSが10月27日に公表した「Livestock & Meat International Trade Data」によると、2016年8月の牛肉輸出量は、前年同月比29.5%増の10万3000トンとなった(表2)。この要因についてUSDAは、生産量の増加と価格下落に加え、豪州などの輸出競合国の牛肉生産量の減少を挙げている。輸出先国別に見ると、前年同月と比べて日本および韓国、メキシコなどで大幅に増加したが、国内の牛肉生産量が増加しているカナダは減少した。
一方、同月の牛肉輸入量は、同16.0%減の11万9000トンとなった。国別では、牛肉生産量が減少している豪州(前年同月比50.7%減)およびNZ(同22.8%減)は大幅に減少した一方、カナダ(同14.7%増)とメキシコ(同31.0%増)はかなり大きく増加した。この要因についてUSDAは、北米の牛肉価格が安値で推移していることに加え、カナダドルやメキシコペソが米ドルに対して安い為替相場となっていることを挙げている。
(調査情報部 渡邊 陽介)