需給動向 海外

◆米 国◆

卸売価格は19カ月ぶりに前年同月をわずかに上回る


肉質硬化への懸念から生体重が減少

米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が10月26日に公表した「Poultry Slaughter」によると、2016年9月の1羽当たり処理時生体重は、前年同月比0.5%減の2.79キログラムと、2012年1月以来4年7カ月ぶりに前年同月を下回った8月に続き、2カ月連続で前年同月を下回った(図15)。この要因としては、2016年3月以降、ブロイラーの大型化に伴い肉質が硬化するとの報道が相次いでいることから、消費者の購買意欲が減退することを懸念した生産者が、以前ほどの水準まで増体させることなく出荷していることが挙げられる。

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このため、2016年第3四半期の鶏肉生産量は468万6900トン(前年同期比0.4%減)と、2012年第3四半期以来4年ぶりに前年同期を下回った(図16)。なお、ふ化羽数は8月も前年同月をわずかに上回り堅調に推移しているものの、その増加幅は処理時生体重の減少分を埋め合わせるまでには至らないとみられることから、USDAは2016年の通年生産量についても前月予測をわずかに下方修正し、1848万200トン(前年比1.7%増)と見込んでいる。

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アジア向けを中心に輸出量が大幅に増加

米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が公表している「Livestock & Meat International Trade Data」によると、2016年8月の鶏肉輸出量は、26万3388トン(前年同月比16.7%増)と前年同月を大幅に上回った(図17)。主要通貨に対し米ドル安基調で推移した為替相場などを背景に特にアジアへの輸出が増加し、主要国・地域別にみると、台湾は5万5124トン(同34.1%増)、香港は1万3236トン(同127.3%増)、フィリピンは1万1598トン(同76.3%増)、韓国は3580トン(同640.1%増)となった。

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在庫量が減少し、卸売価格は前年同月をわずかに上回る

生産量の減少および輸出量の増加を受けて在庫量は減少傾向にあり、USDA/NASSが10月21日に公表した「Cold Storage」によると、2016年9月末時点の冷凍鶏肉在庫量は34万8700トンと、2014年11月以来21カ月ぶりに前年同月を下回った前月に引き続き、前年同月を3.9%下回った(図18)。

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これらの結果、ブロイラーの卸売価格は下落傾向に歯止めがかかり、2016年9月現在は前年同月比2.4%高の1ポンド当たり79.2米セント(1キログラム当たり185円)と、2015年2月以来19カ月ぶりに前年同月を上回った(図19)。

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(調査情報部 野田 圭介)


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