需給動向 海外 |
牛肉生産・輸出、減少傾向が継続 |
牛肉生産量、減少傾向が継続 豪州統計局(ABS)によると、2015年10月の牛肉生産量は、21万1038トン(前年同月比12.3%減)となった(図6)。干ばつ後の牛群再構築に伴い4カ月連続で前年同月を下回っており、減少率も拡大傾向にある。また、10月のと畜頭数に占める雌牛の割合は44.7%と、過去10年平均の47%を下回っている。干ばつに見舞われた近年は50%を超える時期もあった中で、ここ数カ月は低水準にあり、牛群再構築が本格化している表れと言える。 牛肉輸出量、減少率が縮小 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2015年12月の牛肉輸出量は11万2498トン(前年同月比2.6%減)となった(表1)。牛肉生産量の減少に伴い、輸出量は5カ月連続で前年同月を下回っているものの、減少率は10%を超える減少となった過去3カ月に比べ、縮小している。 主な輸出先国別に見ると、米国向けは、前年同月の3分の1の水準まで大幅に減少した前月に比べ、小幅な減少にとどまっている。これは、2015年11月には、米国が豪州産牛肉に対して設けている年間41万8214トンの関税割当(無税枠)を超過する可能性が高まったことで顕著に輸出が抑制されたが、12月の輸出(船積み)分の多くは、2016年の輸入(通関)となるためとみられている。その他の主要輸出先については、2015年半ば以降、日本向けの減少と、韓国、中国向けの増加という傾向が続いている。韓国、中国向けについては、両国と豪州との自由貿易協定による輸入関税の削減が、2016年の年初に行われることも、2015年12月の輸出(船積み)増加に影響を与えているとみられている。 肉牛取引価格、引き続き高水準で推移 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2015年12月末日時点で1キログラム当たり587豪セント(528円:1豪ドル=90円)となった(図7)。2015年10月下旬以降、記録的な高水準を維持している。これは、干ばつによると畜頭数の増加により、取引頭数が減少していることに加え、米国からの強い需要と、日本、韓国市場での米国産牛肉との競合の緩和、さらには豪ドル安で推移する為替相場による堅調な輸出需要により後押しされていることによる。 2015/16年度の需給見通し、生産、輸出ともに減少 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2015年12月、2015/16年度(7月〜翌6月)の牛肉需給に関する見通しを公表した(表2)。 これによると、牛と畜頭数は、冬季のまとまった降雨と、干ばつ後の牛群再構築の本格化に伴い、前年度比10.9%減と見込まれている。その一方で、牛総飼養頭数は、高い肉牛取引価格を受けて、一定のと畜頭数は維持されるため、牛群再構築の進展にもかかわらず、同1.1%減と見込まれている。また、牛肉生産量は、雌牛と畜割合の低下と穀物肥育牛のと畜増加により平均枝肉重量が増加するため、と畜頭数の減少をわずかに相殺し、同8.9%減と見込まれている。 牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少に伴い同11.8%減と見込まれている。米国向けは、米国の牛肉生産回復に伴い、同31.0%減と見込まれている。ただし、米国では、経産牛のと畜頭数は低水準で推移しており、豪州産の挽き材への強い需要は維持されるとしている。日本向けは、同9.5%減と見込まれており、豪州や米国の高い肉牛取引価格を反映して日本の輸入牛肉の小売価格が上昇しており、豚肉に需要が移っているとしている。一方、韓国向けは、同8.3%増と見込まれている。韓国では、豚肉小売価格も上昇しており、輸入牛肉の価格上昇に伴う豚肉への需要の移行が見られないことや、韓国国内の牛肉生産量の減少が影響している。また、中国向けは、中国国内の供給余力が限られており、同12.0%増と見込まれているものの、最近は、南米諸国との競合が輸出拡大の制約になっているとしている。 生体牛輸出頭数についても、同15.1%減と減少が見込まれている。これは、豪州における牛群再構築と、最大の輸出先であるインドネシアの2015年7〜9月の豪州産生体牛輸入許可頭数が大幅に減少したことが背景にある。 肉牛取引価格は、同38.7%上昇すると見込まれている。これは、エルニーニョ現象の発生にもかかわらず、放牧環境が前年度に比べおおむね改善しており、牧草肥育生産者のもと牛導入意欲が高まっていることが背景にある。 (調査情報部 根本 悠)
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