需給動向 海外

◆ブラジル◆

2015年の生産量、輸出量ともに前年から減少見込み


キャトルサイクルにより減産

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2015年のブラジルの牛肉生産量は、近年、牛肉輸出需要の増加に伴い繁殖雌牛の淘汰が進み、子牛生産が減少したことから、前年比3.1%減の942万5000トン(枝肉重量ベース)と見込まれている(図8)。

 同国の牛肉生産は、約7年周期でキャトルサイクルによる増減があるとされており、2015年はこの減少期に当たるものとみられている。

輸出は中国向け急増の一方、ロシア向けを中心に減少

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2015年1〜11月の生鮮牛肉輸出量は、前年同期比12.9%減の97万5161トン(製品重量ベース)とかなり大きな減少を記録した(表3)。背景には、牛肉生産減を受けて相対的に輸出余力が低下したほか、最大輸出先のロシア向けが、ルーブル安に伴い大幅に減少したことがある。

 しかしながら、ブラジル産牛肉は、米ドルに対してレアル安の為替により輸出競争力が高く、他国からの引き合いは依然として好調である。中でも中国向けは、2015年6月の輸出再開以降、輸出の伸びが著しく、11月単月では1万9990トンと最大の輸出先国となり、今後、その存在感はより強まるとみられる。

 なお、2015年12月4日、日本・ブラジル両政府の合意により日本向け加熱処理牛肉の輸出再開(注)が決定したが、実際の輸出は、厚生労働省が取扱要綱を定め、当該要綱に基づく取扱施設が認定された後となる。

(注)日本は、ブラジル産加熱処理牛肉について、同国パラナ州で老齢による非定型の牛海綿状脳症(BSE)が発生したことを受け、2012年12月以降輸入を停止していた。

2016年の生産は回復見通し

 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、子牛価格が高値で推移している中で、肉用牛価格も高値安定を維持できていることから、繁殖・肥育経営ともに収益性が良好となり、増頭意欲は高い状況にある。

 こうしたことからUSDAは、今後、ブラジルの牛肉の生産は回復に向かうとしており、2016年のブラジルの牛肉生産量を前年比1.9%増の960万トン(枝肉重量ベース)と見込んでいる。

 また、輸出についても2016年は、米国向け生鮮牛肉輸出の解禁が見込まれるほか、サウジアラビアへの輸出も再開される予定であり、輸出環境の整備がより進む見込みである。

(調査情報部 米元 健太)

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