需給動向 国内

◆牛 肉◆

牛肉の小売価格、高止まり続く


 平成27年11月の牛肉需給は、生産量は3万2658トン(前年同月比3.8%減)と、8カ月連続で前年同月を下回った。品種別に見ると、乳用種が9100トンと前年並みだったものの、和牛が1万6061トン(同4.8%減)、交雑種が7174トン(同5.3%減)と、前年同月を下回った。輸入量は、4万4733トン(同8.5%増)と、現地相場高や高い在庫水準により輸入量が減少した前年の反動もあり、6カ月ぶりに前年同月を上回った。推定出回り量は前年同月をかなりの程度上回る7万7735トン(同6.0%増)となり、推定期末在庫は前月から499トン取り崩し、14万410トン(同2.9%増)と、前年同月をわずかに上回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。

 このような状況の中、小売価格の高止まりが続いている。これにはさまざまな要因が絡み合うが、国産牛肉については全国的なと畜頭数の減少による供給不足、輸入牛肉については為替の円安基調に加え、豪州産は他国との競合、米国産は頭数不足や米国内での需要の高まりに伴う現地相場の上昇などが、仲間相場の上昇、ひいては小売価格の上昇に大きく影響している。

 和牛の仲間相場は平成24年秋以降、3年近くにわたって上昇基調で推移している(図1)。これに伴い、小売価格はまず特売価格の上昇が見られた。一方、通常価格は25年秋まではやや横ばいでの推移が続いた。一般的に小売価格の上昇は販売量の減少につながるため、小売店は上昇幅を小さく抑える傾向がある。ただし、通常価格に比べて特売価格の値上がりの方が消費者の消費動向に与える影響が小さく、価格転嫁しやすいことから、特売価格の上昇が見られたものと考えられる。しかしながら、その後も仲間相場が上昇したことから、25年冬以降は通常価格も上昇し、27年11月の和牛去勢かたの通常価格は100グラム当たり700円に達した。

 豪州産および米国産についても和牛と同様に、まず特売価格が上昇し、その後、仲間相場のさらなる上昇に伴い、通常価格の上昇が見られている(図2、3)。豪州産については、27年1月15日に日豪EPAが発効し、関税率が引き下げられたものの、小売価格は26年より高い水準で推移している。一方、米国産については、27年の特売価格が26年の通常価格並みの水準まで上昇しており、豪州産に比べて上昇幅が大きくなっている。

 全体を通してみると、仲間相場の上昇に伴い、特売価格のみならず、通常価格の上昇までも見られている。総務省が調査している家計消費報告においても牛肉の販売数量、販売金額は減少が続いており、量販店や食肉専門店における牛肉の販売環境の悪化がうかがえる。

(畜産需給部 二又 志保)

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