需給動向 海外

◆米 国◆

と畜頭数が前年同月を上回るなど、需給は緩和


11月のフィードロット導入頭数は、前年同月比10.5%減

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が12月18日に公表した「Cattle on Feed」によると、2015年11月の全米のフィードロット導入頭数(注)は160万1000頭(前年同月比10.5%減)と、前年同月をかなりの程度下回った(図1)。この要因として、低調な肥育牛出荷価格を受け、フィードロット側の導入意欲が低下していることが挙げられる。一方、同月の全米のフィードロットからの出荷頭数は、前年に比べと場の稼働日数が1日多かったことなどから153万2000頭(同3.9%増)となり、2013年10月以来、25カ月ぶりに前年同月を上回った。この結果、USDAは12月1日時点の全米のフィードロット飼養頭数を前年同月比0.2%減の1079万4000頭と見込んでいる。

(注)収容能力1000頭以上のフィードロットが対象。

11月の牛と畜頭数は、23カ月ぶりに前年同月を上回る

 USDA/NASSが12月23日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2015年11月の牛と畜頭数は、乳価の低迷に伴い、経産牛のと畜頭数が前年同月に比べやや増加したことなどから、229万3000頭(前年同月比2.1%増)となり、2013年12月以来、23カ月ぶりに前年同月を上回った(図2)。また、同月の1頭当たり平均枝肉重量は、安価に推移する飼料穀物価格と肥育牛出荷価格の上昇に対する期待を背景に、フィードロットでの飼養期間が長期化する傾向にあることから、385キログラムと前年同月に比べ2.4%増加した。この結果、同月の牛肉生産量は87万7000トン(同4.6%増)と、前年同月をやや上回った。

10月の牛肉輸入量は、前年同月をかなり大きく下回る

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2015年10月の牛肉輸入量は、10万7700トン(前年同月比12.9%減)となり、2014年2月以来、20カ月ぶりに前年同月を下回った(図3)。この要因としては、最大の輸入先国である豪州からの輸入量が、4万400トン(同32.8%減)と、前年同月に比べ大幅に減少したことが挙げられる。米国は豪州産牛肉に対して年間41万8214トンの関税割当(無税枠)を設けているが、2015年は、干ばつの長期化により淘汰が増加した豪州からの牛肉輸入量が増加し、無税枠を超過する可能性が高まったことから、年末にかけて輸入量は抑制されるとみられている。

 一方、同月の牛肉輸出量は、米ドル高で推移する為替相場などに起因する米国産牛肉需要の減退から、8万8400トン(同14.4%減)と13カ月連続で前年同月を下回った。特に、日本向けは、日本国内での輸入在庫の積み増しや、価格競争力の高い豪州産牛肉の輸入増を背景に、前年同月比40.9%減の1万6200トンと大幅に減少した。

肥育もと牛価格は、前年同月を大幅に下回る水準で推移

 牛肉輸出量が減少傾向で推移する一方、堅調な輸入に加え、国内の牛肉生産にも回復の兆しが見えてきたことから、在庫は高水準で推移している。USDA/NASSが12月22日に公表した「Cold Storage」によると、11月末時点の牛肉在庫量は23万4500トン(前年同月比27.3%増)と、12カ月連続で前年同月を上回った(図4)。需給が緩和傾向にあることで、肥育もと牛価格は下落傾向にあり、USDA/ERSは12月の同価格を、100ポンド当たり前年同月比36.3%安の166.5米ドル(1キログラム当たり448円:1米ドル=122円)と予測している(図5)。

(調査情報部 野田 圭介)


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