需給動向 海外

◆豪州◆

2015/16年度の生乳生産、微増の見通し


乳製品国際価格、小幅な上昇にとどまる

 2015年12月15日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(図23)。

・脱脂粉乳 1891米ドル
  (約23万円:1米ドル=122円、前年同期比18.5%減、前回比1.4%減)

・全粉乳  2304米ドル
 (約28万円、同1.5%増、同2.0%増)

・バター  3136米ドル
 (約38万円、同0.3%減、同4.2%増)

・チーズ  2856米ドル
 (約35万円、同4.9%減、同1.0%増)

 GDTの平均取引価格は、脱脂粉乳を除いて前回(12月1日)から上昇したが、現地報道では、国際的な乳製品需要の回復によるものではなく、生乳生産量の減少見通しを受けた先物市場での乳製品取引価格の上昇によるものとしている。ただし、比較的小幅な上昇にとどまったことから、市場関係者からは失望の声も出ている。

 なお、総売買数量は2万4888トン(前年同期比29.7%減、前回比11.6%減)と、2015年10月以降減少が続いている。

2015/16年度の需給見通し、生乳生産量は微増、輸出額は減少

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2015年12月、2015/16年度(7月〜翌6月)の牛乳および乳製品需給に関する見通しを公表した(表5)。

 これによると、経産牛飼養頭数は、国際的に乳製品価格が低迷する中、牛肉需要の高まりを受けて経産牛の淘汰が進んだため、前年度比0.6%減の173万頭と見込まれている。一方、1頭当たり乳量は、春先の乾燥気候に伴い、主要酪農地域であるビクトリア(VIC)州で補助飼料の給与が増加したこともあり、同0.8%増の5636リットルと見込まれている。この結果、生乳生産量は、同0.2%増の975万キロリットルとわずかな増加が見込まれている。

 また、乳製品輸出額は、豪ドル安で推移する為替相場の恩恵を受けているものの、乳製品国際価格の低迷の影響が大きく、23億1600万豪ドル(約2084億4000万円:1豪ドル=90円、同6.3%減)と、かなりの程度の減少が見込まれている。輸出量については、中国市場の需要回復は遅れているものの、その他のアジア市場の堅調な需要に支えられ、横ばいで推移すると見込まれる。また、脱脂粉乳、チーズそれぞれの主要輸出先であるインドネシア、日本市場では、今後、EU産との競争にさらされる可能性があるとしている。

エルニーニョ現象、影響弱まる見込み

 豪州気象局(BOM)は2015年12月、2016年1〜3月の豪州の気象見通しを発表した。これによると、北部や西部など一部地域では、高温少雨傾向が続くものの、主要酪農生産地域のVIC州やタスマニア州などでは、牧草生産に悪影響を与えた高温少雨傾向が一段落し、降水量は平年並み、気温は平年を下回って推移するとしている。

 この要因についてBOMは、これまで豪州に高温少雨傾向をもたらしてきたエルニーニョ現象の影響力が、太平洋東部熱帯域の海水温度の低下によって、今後徐々に弱まると見込まれるためとしている。

(調査情報部 竹谷 亮佑)

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