需給動向 海外 |
粉乳輸入量減少も、消費者の国産不信から乳製品輸入量は増加 |
乳価は緩やかな上昇基調に転じる 中国農業部によると、需要の減少などにより2014年に入り下落していた生産者乳価は、2015年10月、11月ともに1キログラム当たり3.5元(約67円:1元=19円)となり、緩やかながら上昇基調となった(図24)。この要因として、9月以降、大型連休が重なったことによる乳製品需要の増加が挙げられる。また、主要乳製品輸出国であるニュージーランド(NZ)の生乳生産量が、8月以降、減少傾向となり、同国からの輸入減も要因となった。 一方で、これまでの乳価低迷により、乳牛の飼養頭数は減少傾向にある。主産地である内モンゴル自治区などの大規模経営を中心とした酪農家は、生乳廃棄などの出荷調整を行いながらも頭数を維持してきた。しかし、現地の乳業関係者によると、生乳販売収入の減少と生産コストの上昇により経営が悪化し、小規模経営を中心に一部の酪農家が乳牛の淘汰を進めたとされ、2015年12月末の飼養頭数は前年比15.1%減の1240万頭と見込まれている。 このため、今後の生乳生産量は減少が見込まれているが、乳業各社の需要が低調なため、大幅な乳価上昇は期待しにくいとの見方も出ている。 2015年1〜11月の粉乳輸入は大幅減 2014年上半期に前年を大きく上回るペースで輸入され、在庫過剰とされている粉乳(全粉乳および脱脂粉乳)については、乳業各社による在庫の取り崩しが進んでいる。このため、2015年1〜11月の粉乳の輸入量は、全粉乳が32万7750トン(前年同期比49.3%減、表6)、脱脂粉乳も18万4737トン(同22.4%減)と前年同期を大幅に下回った(表7)。同期間の粉乳の輸入先は、NZが過半を占め、全粉乳については、全体の96.5%がNZ産であった。 こうした中、最大手乳業の伊利は、2015年末までに粉乳在庫が解消するとの見通しを示すなど、輸入環境は徐々に改善するとみられている。 また、同期間のホエイの輸入量は、39万1021トン(同6.7%増)となった(表8)。ホエイは、国内生産量がわずかなため、ほぼすべてが輸入で賄われている。ホエイの主な用途である養豚などの飼料向けは、豚飼養頭数が増加に転じたことにより、需要が回復しつつある。しかし、育児用調製粉乳向けは、輸入品に比べて国産品の販売が低調となったことで、原料需要が減少したため小幅な伸びにとどまった。 国産不信から伸びる輸入乳製品 中国では、所得の向上に伴う乳製品需要の増加により、国産乳製品の生産量も大きく増加してきた。しかし、2008年のメラミン事件以降、消費者は国産乳製品に対して強い不信感を抱いているとされており、輸入乳製品に対する需要は引き続き高まっている。 代表的な輸入乳製品である牛乳およびクリームの輸入量を見ると、2015年1〜11月では、前年同期比36.0%増の39万6976トンと増加傾向で推移しており、このうちドイツ産が44.0%を占めている(表9)。ドイツ産牛乳は、消費者から安全性についての信頼が厚いだけでなく、NZ産などよりも価格が安いことから、2011年12月以降、最大の輸入先国となっている。 また、育児用調製品の輸入量も、同39.2%増の15万4973トンとなった(表10)。消費者の輸入品志向を反映して、国内で販売される過半が輸入品とされ、国内乳業各社も輸入先国に製造拠点を設けて海外自社製品の逆輸入を行っている。現地報道などによると、2016年1月1日よりすべての夫婦に第2子の出産が認められたことから、経済発展の著しい内陸部を中心に乳幼児数の増加が見込まれており、今後も同調製品の輸入の伸びが予想されている。 (調査情報部 伊澤 昌栄) |
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