和牛の輸出拡大に向けて |
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全国農業協同組合連合会 畜産総合対策部 次長 小島 勝 |
2015年12月8日、農林水産省は、2015年の農林水産物・食品の輸出額が過去最高を更新し、7000億円を突破する見通しであり、輸出額1兆円の目標を2020年から前倒しで達成する見通しであると公表しました。畜産物も1〜11月の輸出額が96億円(前年同期比35%増)であり、通年で予測すると110億円強となるもようです。特に牛肉はここ1〜2年、前年の3割から4割増加で輸出が拡大しています。 ここ1〜2年牛枝肉相場は高騰が続いていますが、上記のような日本の人口動向から、海外での和牛市場の確保・拡大は必要な取り組みですし、2013年の「和食」のユネスコ無形文化遺産登録や2015年の「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマとしたミラノ国際博覧会も追い風になっています。 また、和牛は、その食材自身の「希少性」(全世界の年間と畜頭数約3億頭のうち、和牛は50万頭のと畜頭数しかない)、「見た目、食味を含めた品質」は他の牛肉と明確に「差別化」できる商品であると確信しており、今が大きなチャンスだと考えています。 一方、昨今の大きな変化として、訪日外国人旅行者の急激な増加があります。図2で示すように、訪日外国人旅行者は、2013年以降、急激に増加しており、2015年の予測では少なくとも1800万人を超え2000万人に近づく勢いです。こうした訪日外国人旅行者の方々に、日本の文化に触れながら和牛を堪能していただくことで、自国に帰っても「日本で食べた和牛がとてもおいしかった、自国でも食べたい」という和牛の口コミによる普及宣伝により、確実に需要が拡大すると考えており、今後、特に力を入れて取り組んでいきたい事項です。 もう1点、全農グループの特徴的な取り組みとして、海外での店舗展開が挙げられます。和牛の海外での需要を拡大させるためには、和食および日本文化の普及は欠かせないものと考えています。全農グループ自らが、海外の消費者に和牛をはじめとした日本の食材を使用したさまざまな日本食料理を提供することにより、海外で主流であるロース、ヒレのステーキ中心の牛肉料理だけでなく、カタロースやモモ、バラなど他の部位も含めたすき焼き・しゃぶしゃぶなど日本独特の調理方法による和牛の食べ方と食味をじかに消費者に伝えられます。このことにより、和牛を輸出しやすい環境作りに貢献できると考えています。 これまで全農グループは、2013年2月に香港に和牛焼肉店「純」を開店し、翌年の2014年4月に米国、ロサンゼルスのビバリーヒルズに創作和食店「Shiki」を、同年7月に香港の和牛焼肉店「純」2号店を開店しました(写真1、2)。そして、2015年11月に英国のロンドンに伝統的和食店「Tokimeitē」を開店させました(写真3)。今後も、世界の主要都市には、和牛をはじめとした日本食材と日本文化の普及・拡大を目的とした店舗展開を続けていきます。 結びに、海外における和牛の認知度は徐々に高まっているものの、まだ国により温度差が大きいのが現状です。 そうした中で、ALL JAPANを旗頭に和牛の認知度を上げていくための取り組みを国の施策とも連動させつつ、次の事項に注力していくことが大切だと考えます。 1つは、各国ごとの和牛の普及度合いに応じたきめ細やかな輸出促進・販売活動を行うことです。 2つ目は、ALL JAPANとしての国の施策に結集しつつ、インバウンドと連動させた各県行政(県産和牛振興)の輸出の取り組みや経済ベースでの民間企業の輸出事業を連携させ、それぞれにメリットある輸出促進活動を展開していくことです。 また、まだまだ和牛の普及度合いは低いものの、全世界に約5億人以上いると言われるイスラム文化圏への和牛の輸出拡大も大きなテーマだと認識しています。しかし、一方で牛肉のと畜加工処理における宗教対応上(ハラール処理)の肉質に関する課題など、まだ解決すべき事項もあり、今後の課題です。 これらのことも含め、全農グループとしても国の目標額である2020年の牛肉輸出額250億円の一翼を担えるよう和牛輸出を促進していきます。 (プロフィール) |
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