【要約】
中国、東南アジア各国では、経済発展による食文化の変化、流通の発達、国民の健康への関心の高まり、健康増進政策などにより、牛乳・乳製品の消費の増加が見込まれる一方、その増加に対して国内供給だけでは間に合っていない。
世界人口の59.8%を占めるアジア地域は、引き続き国際乳製品市場に強い影響力を持つとみられることから、消費動向や輸入動向を注視していく必要があると考えられる。
T はじめに
中国、東南アジアは経済発展による食の多様化、欧米化により、牛乳・乳製品の需要が拡大している。しかし、これらの国々は、国内生産が需要を賄うには十分でないことから、輸入に依存した供給となっている(表1)。
世界人口の59.8%を占めるアジア地域は、国際乳製品市場に強い影響力を持っており、今後も続く人口増加や経済発展により、さらに大きな買い手となることが予想される。
本稿ではこのようなアジア地域のうち、中国、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムの牛乳・乳製品の需給動向について最近の状況を報告する(図1)。
中国については、2015年10月に消費動向を中心に現地調査を実施した。2015年2月号のレポート(最近の中国の牛乳・乳製品需給動向)も併せて参照されたい。
東南アジアについては、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアの4カ国を調査したが、ベトナムとマレーシアについては現地調査を行っていないため、簡単に触れるのみとする。
なお、本稿で使用した為替レートは、表2の通りである。
また、本稿中、牛乳の区分を表3の通りとした。
U 中国の状況
1 生乳生産および乳価の動向
生乳生産量は、牛乳の飲用による国民の健康増進を図ることなどを目的とした「全国栄養改善計画」(1997年)といった政府の健康増進施策などにより、牛乳・乳製品の消費量が増加したため、中長期的には拡大傾向で推移してきた。
2013年の生乳生産量は、主産地での夏期の猛暑に加え、小規模酪農家の離農、一部の酪農家による乳牛の淘汰、更新などが進んだために減少した。飼養コストの上昇による収益性の低下と政府の大規模化支援による大規模酪農家優遇、また、牛肉消費の拡大に伴う牛肉価格の上昇が、小規模酪農家を中心に離農や乳牛の淘汰を加速させた。さらに、後継者不足も小規模酪農の廃業を促す要因となった。
平均乳価は2014年2月の1キログラム当たり4.26元(81円)を頂点に下降基調に入り、同年12月には同3.79元(72円)と10.9%の下落となった(図2)。これは、2013年の乳価上昇を受けて酪農家が増産意欲を高め、飼養頭数を増加させたことで供給過剰となり、乳業メーカー側も在庫消化が進まなかったためである。
2014年は、政府の大規模化支援(注1)、前年の平均乳価が上昇基調などにより、投資力のある大規模酪農家を中心に乳牛の導入が進み、前年から一転し5.5%増の3725万トンとなった(図3)。
2015年は、現地の酪農関係者によると、2014年末以降の乳価低迷により、再び小規模酪農家の離農や乳牛の淘汰が進んでおり、乳牛飼養頭数は前年比15.1%減の1240万頭、生乳生産量は同15.4%減の3150万トンと見込まれている。
(注1)乳用牛飼養頭数200頭規模以上の農場を設置する際、政府は頭数規模に応じて補助金を交付。
なお、乳価は2015年9月以降、需要の回復などにより緩やかな回復を見せているが、依然として生乳の廃棄や乳牛の淘汰が続いている。
2 牛乳・乳製品の生産動向
2014年の牛乳・乳製品の生産量は、牛乳およびヨーグルトの合計が前年比2.7%増の2400万1000トンであったのに対し、育児用調製粉乳(以下「育粉」という)が大宗を占める乳製品は、同30.5%減の251万7000トンであった(図4)。現地の乳業関係者によると、同年に生産された牛乳およびヨーグルトの割合は、LL牛乳が64%、ヨーグルトが21%、低温殺菌牛乳が15%であった。
(1)牛乳およびヨーグルト
国民所得の向上により牛乳・乳製品の消費が拡大したことで、乳業各社はLL牛乳の生産量を増加させてきた。最近は、健康志向の高まりにより、ヨーグルトや低温殺菌牛乳の需要も増加しつつある。中でもヨーグルトは、健康に良いと消費者に認識されており、乳業各社は、高い成長性と収益性のある高付加価値商品として注目し、さまざまな製品を製造している。また、常温で長期間保存可能なLL牛乳も依然として需要が高く、大規模乳業メーカーを中心に設備投資を行う動きが見られる。
(2)育粉
育粉の生産量は、近年、増加傾向で推移してきたが、2014年は消費者の輸入品志向による需要の減少により、前年比5.1%減の150万8500トンとなった(図5)。
現在、乳業各社が、国産品に対する消費者への信頼回復に動き出していることに加え、7000万人の乳幼児人口を抱えていること、また、経済発展により消費の活発化が予想される内陸の中小都市による潜在的市場の存在などにより、再び需要が増加する可能性がある。
コラム1 一人っ子政策の廃止
中国では、急速に進む少子高齢化への対応として、2014年1月から、夫婦のうち、片方が一人っ子であれば、2人目を出産できるという「単独2子」政策(コラム1注)を実施していたが、夫婦ともきょうだいがいる場合は1人しか出産できなかった。
しかし、依然として少子化が進行していることから、2015年10月29日に閉幕した中国共産党第18期中央委員会第5総会(5中全会)では、一人っ子政策を廃止し、全夫婦が第2子まで出産できるようにすることが採択された。
一人っ子政策が廃止されても、共働き家庭が増加し、現在の生活水準の維持を望む者が多い沿岸都市部では、出生にあまり影響がないとみられている。しかし、単独2子政策同様、内陸部、特に、一人っ子政策を厳格に実施していた四川省のような地域では、短期的にはベビーブームが予想されるため、今後の育粉の需要は、内陸部がけん引すると考えられる。
(コラム1注)2014年1月から2015年10月末までに第2子の出産希望申請を行った夫婦は185万組となり、申請対象夫婦数の16.8%にとどまった。
政府は2014年、国内育粉産業の競争力強化に向けて、「育児用調製粉乳製造企業の合併、再編案」を公表した。これにより、2018年末までに年商50億元(950億円)以上の大手育粉企業グループの形成(3〜5グループ)を推進し、育粉業界の整理統合を進めることで上位10社で市場占有率を80%以上にすることを目指している。
また、政府は、2015年10月1日に施行された改正食品安全法で、育粉メーカーに対して配合成分などの国家食品薬品監督部門への届出と、工場出荷時のロット検査を義務付けた。これにより、すでに届出済みの配合成分と同じ内容で他の粉乳を生産することができなくなり、12月9日に政府が公表した同法実施条例(案)に、OEM(注2)を禁止することも盛り込まれた。
(注2)委託者のブランドで製品を生産すること。
コラム2 食品安全法の改正内容
中国国内で食の安全意識が高まった2009年に施行された「食品安全法」が、2015年10月1日に改正された(コラム2写真)。主な改正点は以下の通りである。
1 監督管理、許可の一元化
これまで食品製造、流通、飲食サービスの各段階の監督管理、許可を行っていた国務院の4部門(品質監督、工商行政管理、国家食品薬品監督、衛生行政)が国家食品薬品監督管理総局(CFDA)に一元化する。
2 トレーサビリティの構築の義務化
食品メーカーおよび販売者に対して、トレーサビリティの構築を義務付けるとともに、トレーサビリティおよび食の安全を担保するための社内管理規定の整備を義務付ける。
3 インターネット仮想店舗における食品販売事業者の実名登録の義務化
インターネット仮想店舗プラットフォーム運営者は、プラットフォーム上で仮想店舗を運営する食品メーカーに対して、実名登録させるとともに、販売食品種別により必要とされる許可証の確認を義務付ける。
4 食品輸入の厳格化
食品輸入者は、食品安全法や関連法令、輸入先国の食品衛生基準に合致しているかどうかの確認体制を構築し、確認されたものしか輸入できない。
5 育粉に対する規制の強化
育粉メーカーに対して、配合成分などの国家食品薬品監督部門への届出および工場出荷時のロット検査を義務付ける。また、改正食品安全法の施行規則となる「食品安全法実施条例(コラム2注)(案)」では、育粉メーカー1社当たりの届出可能な件数は3シリーズ9種類に制限され、OEMの禁止などの規制も加えられた。
(コラム2注)機関の職権に関する法令。ここでの機関はCFDAを指す。
6 罰則の強化
無許可で食品や育粉の生産および販売を行った場合の罰金を、該当する食品の価値が1万元(19万円)未満の場合、これまでの2000〜5000元(3万8000〜9万5000円)から同5万〜10万元(95万〜190万円)に引き上げる。また、1万元以上の場合、これまでその価値の5〜10倍であった罰金を、同10〜20倍に引き上げる。
(3)その他
乳業各社は、メラミン事件(注3)以降、消費者の国産品に対する信頼回復や、高度な品質・安全管理技術の取得などを目的に、国外乳業メーカーの買収や国外の生産拠点の整備を始めている。また、育粉を見ると、三大乳業メーカー(伊利、蒙牛、光明)を中心に、消費者が安全面で優れていると考える輸入品を、国外の自社生産拠点から調達することで、国産品不信により喪失する利益の確保を目指している(表4)。国外の生産拠点整備は、国内の生乳供給が生産コストの上昇などにより不安定となる中、安価な輸入粉乳の確保も目的としている。現地の乳業関係者によると、国産生乳を原料とする育粉の生産コストは、輸入粉乳由来と比較して1.5倍としている。
(注3)2008年9月、三鹿社製の育粉を摂取した乳幼児に泌尿器系疾患が多発し、原料乳にメラミン(大量に摂取すると毒性のある有機化合物)が混入されていたことが発覚した事件。死者は6人、影響は約30万人に及んだとされる。
3 輸入動向
中国は、沿岸都市部を中心とした食の多様化により消費量が増加する一方、国産生乳の供給が不足していることから、全粉乳を中心として、牛乳・乳製品の輸入が増加傾向で推移している(図6)。
(1)全粉乳
還元乳、ヨーグルトなどの原料に用いられる全粉乳の2014年の輸入量は、還元乳などの製造において、輸入全粉乳の価格が国産生乳よりも安価であったことなどから前年比8.3%増の67.1万トンとなった。
2014年最大の輸入先国はニュージーランド(NZ)で、輸入量は61.3万トンと、輸入量全体の91.4%を占めた(図7)。NZからの輸入量が圧倒的に多い要因は、メラミン事件以降、国内乳業各社がNZへの投資を加速し、同国産粉乳の確保に動いたこと、また、中国NZ自由貿易協定を追い風に、フォンテラなどNZの乳業メーカーが、需要の伸長が著しい中国市場に対する輸出を強化したことなどが挙げられる。
(2)牛乳
牛乳は、メラミン事件に起因する消費者の輸入品志向の高まりなどにより輸入量(ほぼLL牛乳)が大きく伸長しており、2014年には前年比61.3%増の28万7000万トンとなった。2014年の増加要因として、EU諸国の主要な市場であったロシアが、同年8月からEU産乳製品に対する禁輸措置を講じたため、EU諸国が中国向け輸出を強化したことなどが挙げられる。
2014年の上位輸入先国からの輸入量は、第1位がドイツの12万3000万トン、次いで豪州の4万2000トンであった(図8)。ドイツは、2012年に第1位になり、他の輸入先国との差を広げている。ドイツ産が増加した要因は、ロシアによるEU産乳製品禁輸措置から中国向け輸出を強化したこと、EUの生乳の生産割当制度の段階的廃止による生乳生産量の増加、安全面での高い評価、現地価格安とユーロ安による高い価格競争力などが挙げられる。ロシアによる同措置が2016年8月まで延長されたことから、ドイツ産の輸入量は今後も増加が予想されている。
(3)育粉
育粉の輸入量は、牛乳同様、メラミン事件以降、消費者の輸入品志向の強まりから伸長している。2014年の輸入量は前年とほぼ同量であったが、オランダ産やアイルランド産が増加した一方、NZ産やフランス産が減少した(図9)。この理由として、NZのボツリヌス菌報道(注4)による育粉の輸入停止、2014年5月に開始した国外乳業メーカーに対する登録管理制度(注5)などが挙げられる(表5)。
(注4)フォンテラが2013年8月2日、同社の生産した乳清たんぱく質から、ボツリヌス菌が検出されたと公表。これにより、同社製乳清たんぱく質を乳製品原料として使用していた多くの乳業メーカーが出荷した乳製品を自主回収。しかし、同月28日、NZ当局は、当該ロット検査の結果、ボツリヌス菌混入は誤報と公表。
(注5)国家認証認可監督管理委員会に登録した国外乳業メーカーで生産された育粉しか輸入できず、輸入に当たっては、すべての育粉が小売可能な形状で包装されていなければならないとする制度。
4 消費動向
牛乳・乳製品の消費は、経済発展などに伴い、都市部を中心に拡大している。都市住民の食品消費支出に対する乳製品支出割合の推移を見ると、1995年の1.8%から2012年には4.2%と、2.4ポイントの伸びとなった。
(1)牛乳
牛乳は、最も多く消費される牛乳・乳製品であり、子育て世帯を中心に消費が増加している。また、無乳糖、低脂肪、無脂肪など、消費者ニーズに合わせた牛乳も多く販売されている。
ア LL牛乳
国内で生産される生乳の5割が牛乳向け、うち約8割がLL牛乳に仕向けられているとみられる。この理由として、流通面では、経済の発展した沿岸都市部ではコールドチェーンが整備されているものの、内陸部では未整備の地域が多いこと、また、チルド牛乳の製造工場の多くが沿岸部に立地する上、内陸部への配送頻度が低く、長期保存できることが求められることなどが挙げられる。さらに、消費面では、冷たいものは体を冷やすとされ常温飲料を好む国民性、67.3%(都市部は98.5%)と低い農村部の冷蔵庫の普及率(2012年)などが挙げられる。このため、乳業各社は、常温で6カ月間保存可能なLL牛乳を販売の主力としており、国内で流通する牛乳の多くがLL牛乳となっている(写真1)。
国産品は、単品売りのほか、贈答用にも利用される箱詰めのまとめ売り商品もある(写真2)。商品構成は一般的な商品だけでなく、有機牛乳などの高付加価値品、消費者の健康志向の高まりを受けた低脂肪牛乳や、乳糖不耐症(注6)の消費者向けの無乳糖牛乳など幅広い(写真3)。伊利、蒙牛などの大手乳業メーカーの商品は、量販店などで全国的に販売されているが、そのほかの乳業メーカーの商品は、地元での販売が中心となっている。
輸入品は、メラミン事件以降、消費者が食の安全性を重視していることを受け、国産品よりも多くのブランドが流通しており(国内で流通する牛乳130ブランドのうち80ブランドが輸入品)、商品構成も国産品同様に幅広い(写真4)。これら輸入品は、多くの量販店で販売されており、高所得層を対象とする量販店ほど種類が多く、高価な商品が販売されている。
価格は、国産品はミネラルウォーターより安い場合もあるが、輸入品は国産品の2倍以上と高い(表6)。
(注6)乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が不足しているため、乳糖を多く摂取すること消化されずに腸内に残り、下痢、腹痛などを引き起こす症状。
イ チルド牛乳
チルド牛乳は、食の多様化による新鮮で冷たい牛乳への需要の高まりに、コールドチェーンの発達が応えて販売されるようになった。チルド牛乳は、低温流通と冷蔵ケースでの販売が必要なこと、LL牛乳より高価で賞味期間が短いことから、沿岸都市部の比較的高所得層を対象とする量販店を中心に販売されている。量販店における冷蔵ケースの占める面積は広がってきているものの、日本同様、量販店の3分の1ルール(注7)が存在するため、賞味期間の短さから販売量はLL牛乳に比べて圧倒的に少ない(写真5)。
(注7)食品の製造日から賞味期限までの期間を3等分し、量販店への納入は製造日から3分の1の期間まで、販売期間は同3分の2の期間まで、という流通業界の商習慣。
とはいえ、チルド牛乳は、健康志向の消費者層から高く支持されている。この層の消費者は、メラミン事件を契機に、賞味期間が短く高価なものが安心という意識を持つようになっている。このため、特に国内乳業メーカーの商品より高価な日系乳業メーカーの商品は、食味が良いこともあって人気が高い。
また、価格も、国内乳業メーカーの国産品に比べ日本など国外乳業メーカーによる国産品や輸入品の方が高い(表7)。
ウ その他の牛乳
消費者は、健康のため、子どもに積極的に牛乳を飲ませる傾向にあり、子ども向けに「学童乳」といわれる牛乳が販売されている(写真6)。学童乳は、ビタミンやカルシウムなどが添加され、子どもが飲みやすいように甘くしてある。このほかに、すべての年代を対象としたフレーバー牛乳も販売されている(写真7)。
(2)ヨーグルト
ヨーグルトは、高まる健康志向に加え、乳糖不耐症の消費者にも対応できることなどで、牛乳に次いで多く消費されている。また、中国人がはっ酵食品であるヨーグルトは安心できるものととらえ、国産品への不信感が少ないこともあり、ほぼ国産品で占められている。地域、年代により甘みなど味のし好が異なるために商品数が多く、従来からの飲むタイプに加え、日系乳業メーカーなどからは食べるタイプも多く販売されている。量販店では冷蔵ケースの多くをヨーグルトが占めており、「原味」といわれる加糖タイプやいちご味などのフレーバータイプのほか、消費者の健康志向を反映した機能を訴求したタイプも一部販売されている(写真8)。また、消費者が好みの果物などを入れて食べるための無糖タイプも多く販売されている。
飲むタイプでは、常温で長期保存が可能な商品も販売されている(写真9)。
価格は牛乳同様、国内乳業メーカーの国産品に対して、日本などの国外乳業メーカーによる国産品や、輸入品が高い(表8)。
(3)育粉
育粉は、メラミン事件以降、輸入品志向が高まっており、国内市場にとどまらず、欧米や日本など国外への渡航者による現地での大量購入や、国外の知人やブローカーなどに購入を依頼するなど、国外での育粉購入の動きが加速している。
国外乳業メーカーの国産品および輸入品の市場占有率の推移を見ると、メラミン事件のあった2008年の30%から、2012年には60%まで増加した後、国内乳業各社が安全性を訴求したことから、2014年は51%に減少した(図10)。量販店では、ほとんどが輸入品、もしくは国外乳業メーカーによる国産品が販売され、価格は、輸入品に比べ国産品が安く、200〜300元(3800〜5700円)の輸入品がよく売れているとのことである(写真10、表9)。
なお、国内外乳業各社による国産品の増産により供給過剰となりつつあり、量販店では、「買一送一」(1つ購入ごとに同じ商品を1つプレゼント)などの実質値引き販売が盛んに行われている。現地報道では、消費者が国産品に回帰しない限り、国産品の値引き競争が常態化するとしている。
(4)乳酸菌飲料
乳酸菌飲料も、所得の向上と健康志向の高まりにより消費が拡大しており、国内外乳業各社の商品が多く販売されている。特に、消費者から高い支持を集めているのは、2001年に中国に生産拠点を設置した日系飲料メーカーの商品である。この商品の成功により形成された乳酸菌飲料市場は、他社も類似商品を発売したことで急成長し、量販店の冷蔵ケースでは、ヨーグルトに匹敵するスペースを占めている(写真11)。価格は、日系飲料メーカーおよび日系乳業メーカーの商品に比べ、国内乳業メーカーが安くなっている(表10)。
なお、同メーカーの商品は絶大な人気を誇っているため、量販店によっては乳酸菌飲料の冷蔵ケースの3分の1程度を割いて陳列されている。また、日本同様の宅配も行われているところもある。
(5)チーズ
チーズは、所得の向上と食の多様化を背景に、外資系のファストフードやレストランでのピザやハンバーガーの提供を通じて若年層を中心に広まったことで消費が拡大しつつある。特に、チーズを多用するピザは、米国系ピザチェーンの進出・展開により普及し始めた(写真12)。同チェーンのピザは、小ぶりな1人前サイズで70〜80元(1330〜1520円)と一般的な外食よりも高価である。また、国内食品各社による量販店のインストア販売や冷凍食品の販売など、外食だけでなく中食の消費も拡大している(写真13)。
これに対して、チーズの家庭内消費は、外食ほどの勢いは見られないものの、パン食によるスライスチーズや、子どもの間食用のキャンディチーズなど、少しずつ拡大し始めている。
商品構成は、ほとんどが国外乳業メーカーの商品で、中心価格帯は、10枚入りスライスチーズ、120グラム入りキャンディチーズともに、20元(380円)程度となっている(写真14)。
また、クリームチーズを利用したチーズケーキなどの消費も拡大している(写真15)。アンカー(anchor)ブランドでクリームチーズを販売するフォンテラは、牛乳よりも乳糖が少ないチーズの市場規模は、食べ方などの提案強化により拡大すると考えており、ケーキなどの料理教室を国内4カ所で展開している。ケーキ以外にも、国内外食品メーカーが、チーズ蒸しパンやチーズかまぼこを販売するなど、食品業界全体でさまざまな商品に活用されている(写真16)。
なお、高所得層を中心に近年ワインブームが起きているが、料理とともにワインを飲む者が多いため、つまみとしてチーズを消費するという食習慣はほとんど見られない。
(6)その他
ア バター、生クリーム
バターは、若年層を中心にパンを食べる者が増えたとはいえ、家庭内消費には結び付いておらず、量販店での取り扱いも少ない。しかし、バターを使用したパンやケーキを販売するベーカリーなどが増えてきている。また、生クリームも家庭内消費は少ないものの、ケーキへの利用が進んでおり(写真17)、バターとともに業務用需要を中心に徐々に伸びていくものと思われる。
イ その他
シルバー市場は巨大で、2025年に60歳以上高齢者人口が3億人を超えるといわれている。また、中所得層以上を中心とした健康志向の高まりから、高齢者や青壮年層を対象とした栄養成分強化型の成人用調製粉乳も家庭内消費や贈答用に販売されている(写真18)。
また、牛乳風味パンや加糖れん乳を使用したミルクキャンディなど、乳製品以外の食品の原料としても需要が高まりつつある(写真19)。
5 今後の見通し
中国は、経済の減速が見られるものの、内陸部を含めた市場全体で見れば、牛乳・乳製品の消費をけん引してきた所得の向上と高まる健康志向は当面継続するとみられている。また、冷蔵品のチルド牛乳やヨーグルトの需要は、コールドチェーンなどの物流環境の改善や農村部における冷蔵庫の普及などにより、さらに高まることが予想される。
育粉の需要は成熟したように見えるが、内陸農村部への経済効果の波及や一人っ子政策の廃止に伴う出生率の上昇が実現すれば、再び成長すると思われ、成人用調製粉乳も、高齢化により需要が徐々に拡大すると考えられる。
また、食の多様化により、今後は、チーズや他の食品向けの原料需要も拡大していくと思われる。
このように需要の拡大が見込まれる一方、メラミン事件以降、国産品の売れ行きが伸び悩んでいる。国内外乳業各社は、栄養強化などの高機能性商品や、輸入原料の使用を前面に打ち出した商品を販売したり、国外に育粉生産拠点を整備するなど、消費者のニーズに対応しており、牛乳・乳製品の輸入量は今後も増加を続けるとみられる。
2015年11月に開催された「第3回中国食糧・食品安全戦略サミット」では、中国政府関係者が、「国際市場と海外の資源を積極的、主体的に利用すべき」とのコメントを発した。このことからも中国は、国際乳製品市場の巨大な買い手として、今後も強い影響力を維持すると思われる。
V タイ
1 酪農生産動向
(1)飼養頭数の推移
農業協同組合省農業経済局によれば、乳牛の飼養頭数は2007〜2009年に飼料と原油の価格高騰により廃業する酪農家が増加したことから減少したが、2009年に、学校で牛乳を無償で提供する学校牛乳プログラムの対象が拡大され、国産生乳の需要増により、2010年以降、再び増加に転じ2014年には60万頭に達した(図11)。
同省畜産開発局(以下「畜産局」という)によれば、2013年の酪農家数は約1万7000戸であり、1戸当たり乳牛の平均飼養頭数は約30頭である。酪農家数は減少傾向にあるが、飼養規模は徐々に拡大している。
国家統計局の2013年農業センサスによると、飼養規模別の酪農家数は20〜49頭が全体の48%を占めて最も多く、次いで50〜99頭は22%、10〜19頭は13%となっている。
(2)生乳生産量の推移
生乳生産量は2006〜2007年に一時減少したが、2008年以降再び増加傾向で推移し、2012年以降は100万トン強となっている(図12)。飼養頭数の増加に加え、1頭当たり搾乳量も増加しており、タイの酪農は、ASEANで最も発展しているといわれている。
しかしながら、畜産局によると、平均搾乳量は1頭1日当たり12.5リットルとなお低い水準にある。主に飼養されている乳牛は在来種にホルスタインの交配を重ねているものであるが、能力的には同20 リットルまで増加可能とのことである(写真20)。平均搾乳量が低い理由は、搾乳量の増加に大きく影響する飼料、特に価格の高い濃厚飼料が十分に与えられていないことや、乳牛の供用期間が10年以上と長すぎるため、泌乳能力の低下した牛が多いことなどである。
(3)生乳・牛乳の取引
政府は、酪農家の育成と保護を目的に、乳価(生乳を買い取った乳業工場が酪農協や集乳所などに支払う価格)の最低基準価格を定めていることから、ほとんどの乳価は、この最低基準価格を基準としている。最低基準価格は、農業協同組合省を委員長として、他省庁および酪農関係団体で構成される酪農ボード委員会により定められるが、最近では、2008年に世界的な原油価格などの高騰に伴い引き上げられ、その後もほぼ据え置かれている。
乳価は、基準価格に生乳の品質によりプレミアムが付加される仕組みとなっており、これから輸送費、酪農協の手数料などを除いた分が、酪農家の収入となる。乳価は2007年以降一貫して上昇傾向にあり、これが飼養頭数および生乳生産量の増加を促している(表11、12)。
他方、商務省国内商取引局は安定的な供給と消費を確保するため、牛乳小売価格の上限を設定しているが、小売価格と乳価は連動して推移している(図13、14)。
畜産局によると、2015年の生乳生産量は110万トンと見込まれており、このうち40%が学校牛乳に仕向けられ、残りの60%が一般消費者向けとなるが、原料となる生乳は不足しているとのことである。
金融系シンクタンクによると、一般消費者向け乳製品は、50%が飲用はっ酵乳(ヨーグルト)など、42%が牛乳(チルド牛乳、LL牛乳、フレーバー牛乳など)となり、残り8%が麦芽飲料向けとなっている。
この他に、脱脂粉乳などの輸入原料を用いた乳飲料や乳酸菌飲料、アイスクリームなどの乳製品が製造されている。
2 牛乳・乳製品の生産と国内消費動向
(1)牛乳
牛乳の消費は、国民の所得向上と学校牛乳プログラムの拡充を背景に大きく増加してきた。2014年の1人当たり牛乳消費量は15.7キログラムである(表13)。
学校牛乳プログラムは1992年に発足し、当初、小学校就学前教育の幼児を対象に120日分(1日200ミリリットル)の牛乳の提供が義務付けられた。農業協同組合省の予算により無償で牛乳を提供する同プログラムの目的は、(1)保健省が定める身長・体重の達成および幼児の健康増進、(2)若年層の正常な心身発達のための牛乳消費の習慣化、(3)国産生乳の消費促進である。生乳から製造した牛乳のみを対象としているため、事実上、国産生乳のみが原料として用いられる。
学校牛乳の供給量は、対象児童の学年と供給日数によって決まる。同プログラムの対象範囲の拡大に伴って供給量が増えており、1995年からは対象学年を小学校就学前教育から小学1年生に、さらに、2014年から小学6年生まで拡大させ、供給日数も260日へ拡大させたことから、学校牛乳の量は国内生乳生産量の4割を占める40万トンに達している。
学校以外では、長期保存が可能な常温流通品のLL牛乳が最も飲まれており、LL牛乳は牛乳全体の約8割のシェアを占めている。近年、コールドチェーンが整備されたことにより、コンビニエンストアなどでチルド牛乳が販売されるようになったことで、同牛乳の消費が増加傾向にある。市場には多様な製品が出回っており、LL牛乳、チルド牛乳ともに、砂糖入りでいちご、チョコレートなどのフレーバータイプが多く販売されている(写真21)。パッケージはPE容器が主流であるが、200ミリリットルサイズでは紙容器も多い。ほとんどの製品にハラールマークが付されているが、これは、イスラム教徒が住む南部地域での販売にも対応できるようにしているためとのことである。
(2)ヨーグルト
ヨーグルトは国内大手乳業メーカーを中心に製造されており、独自ブランドのほか海外ブランドをライセンス製造している事例もある。ヨーグルトの消費は、健康志向から拡大しており、低脂肪やカルシウム強化などの機能性を高めた商品も市場に流通している(図15、写真22)。
(3)アイスクリーム
タイは一年を通して温暖なため、アイスクリーム市場が安定して発展してきていることから、国内生産も増えている(写真23、24)。中小企業を含む多くのアイスクリームメーカーがあるが、国外資本の大手食品メーカー2社で市場の約7割を占めている。工業省によれば、2014年のアイスクリーム生産量は、15万9000トンと10年前に比べ約2.5倍に増えている(表14)。他の乳製品と同様に量販店、小規模小売店などで販売されているほか、街角で三輪車による移動販売もみられる。
(4)小売価格の動向
商業省貿易・経済指標局の小売価格調査による、2005〜2014年のLL牛乳、れん乳缶および調味ヨーグルトの小売価格の推移を見ると、2008年および2009年の上昇は、原油価格の高騰による物価上昇に対応するため、政府が乳価の最低価格と牛乳の小売上限価格を引き上げたことによる(図16)。
3 牛乳・乳製品の輸入動向
生乳生産量は増加傾向にあるが、国内需要を満たすには至っていないことから、不足分を輸入で補っている(図17)。乳価は国際価格より高く管理されているため、加工業者は安価な粉乳を輸入して乳製品を製造する傾向にある。
最も多く輸入されている品目は、脱脂粉乳であるが、ホエイおよび全粉乳も輸入されている。チーズについては、国内消費がいまだ小さく輸入は少ないものの、近年、NZおよび豪州から外食など業務用プロセスチーズの輸入は増加傾向にある。
畜産局によると、粉乳はほぼ全量を輸入しており、主な輸入先は豪州、NZ、米国である。国内酪農家の保護のため、脱脂粉乳に関税割当を設けており、割当枠はWTOの5万5000トンとタイ豪FTAによる3700トンの合計5万8700トンである。
この割当枠の配分は政府が行っており、国産生乳の使用メーカーに8割、非使用メーカーに2割が配分される。割当を受けるためには、酪農ボード委員会の認可が必要である。生乳使用メーカーへの割当は、生乳取引量に応じて同委員会で決定される。生乳の使用量に比べて粉乳の取扱いが少ないメーカーでは割当枠を十分に利用しないことになるが、枠は一度配分された後、半年後に再配分される。一方、生乳非使用メーカーへの配分は、各メーカーの過去3カ年の利用実績に応じて行われる。
現在は、この割当枠での輸入のみでは国内需要を賄うことができないため、2万トンの追加輸入枠が閣議決定により設定されている。
脱脂粉乳の枠内税率は、通常枠、追加輸入枠のいずれも5%であり、枠外税率は216%である。なお、WTO上の取り決めにより、2025年には関税が撤廃される予定である。
また、生乳についても関税割当が設定されているが、脱脂粉乳と同様に2025年には関税がなくなり自由化されることとなっている。
一方、バター(関税率30%)、ホエイ(同24〜30%)、全粉乳(同5〜18%)には、関税割当は設定されていない。
4 酪農・乳業の振興政策
政府は、国内酪農業を育成し競争力を持たせるため、各種の酪農振興政策を講じている。
まず、前述の通り生乳の取引価格および牛乳の小売価格を統制している。
また、酪農家の経営安定と生産維持を図るため、「2008年乳牛および乳製品法」に基づき前述の酪農ボード委員会を設立した。同委員会は、国内生乳の安定生産を維持するための政策提言を行っており、生乳が供給過剰であった2009年には、同委員会の提言により政府に学校牛乳プログラムの拡大を実現させている。
さらに、国産生乳需要の維持拡大のため、加工業者に対して国産生乳の使用を奨励し、関税割当の多くを国産生乳使用メーカーへ配分している。
畜産局は、酪農に関する2013〜2017年の計画として、国内畜産の技術向上と並んで市場確保を掲げており、ASEAN諸国への輸出振興を大きな柱の一つとして据えている。
酪農協に対して、生産性の向上を図るための新たな政策的支援を講ずることとしており、2016年に9億バーツ(27億円)を投じて、牛乳の品質向上と酪農家の生産コスト削減を図るモデル事業を3つの酪農協で行うことを公表している。
このモデル事業は、1戸当たり飼養頭数を40頭まで拡大し、パイプラインと冷蔵設備を設置して、酪農協が2日に1回集乳に回ることで酪農家の輸送作業の労働軽減を図ること、併せて、酪農協がTMRセンターを設立し、酪農家に対して栄養価の高い均一な飼料を供給して生乳の品質向上を図ること、キャトルセンターを整備して後継牛を育成することなどを内容としている。これらは、政府の支援により農業・農協銀行による低利貸付を利用して行われる。
5 今後の見通し
生乳生産量は増加傾向で推移しているが、需要の面では、学校牛乳プログラムの対象が今以上に拡大される状況にはなく、むしろ、晩婚化と少子化により学校牛乳消費は減少していくとみられることから、一般市場での牛乳消費が今後も順調に伸びていくことが重要である。
国内の乳価は、関税がなくなる2025年までは、関税割当制度により急激な輸入増加を防止する一方、最低基準乳価の設定により安定的に高値に維持されるという現在の仕組みが機能していくものと思われる。また、乳製品需要も健康志向の高まりから、今後も拡大し、それに伴い輸入は拡大していくと見込まれる。
一方、タイは、ASEAN諸国の中でも乳業メーカーが発達しており、輸入乳原料を利用して製造したヨーグルトやアイスクリームなどの乳製品をシンガポールやカンボジアなどのASEAN諸国へ輸出する動きが拡大している。国外資本も多数参入しており、政府の後押しもあり今後も活発な投資活動により、タイを拠点にASEAN諸国へ輸出する動きが継続していくとみられている。
2015年末にASEAN共同体が形成されたことで、今後も乳製品の生産量は増加し、輸出も拡大していくものと考えられる。
W インドネシア
1 酪農生産動向
(1)飼養頭数の推移
乳牛の飼養頭数は2007年以降、政府による増頭支援政策などにより増加傾向にあった(写真25)。一方、政府は、2014年までに牛肉自給率を90%に引き上げるとの政策目標の達成に向け、2012〜2013年にかけて牛肉および生体牛の輸入規制を強化した。このため、牛肉の供給不足を招き、国産牛肉価格が大幅に上昇し、また、同時期に乳価が下落していたこともあり、多くの乳牛が食肉用にと畜されることとなった。この結果、飼養頭数は2012年の61万頭から2013年には44万頭へ大きく減少した。その後、輸入規制が緩和されたことや、農業省の支援により豪州から2000頭の妊娠牛を導入したことなどから、2014年は48万頭まで回復している(図18)。
地域別では、乳牛の99%がジャワ島に集中しており、ジャワ島以外の地域で飼養頭数を増加させるため、西スマトラや南スラウェシなどで酪農の技術指導者を育成するとともに、地域の牛乳・乳製品消費を拡大させるため、ヨーグルトやアイスクリーム加工の技術指導者を育成している。
なお、インドネシアでは、ヤギを乳・肉兼用として飼養しており、飼養頭数は2014年現在、192万頭となっている。農業省によると近年、ヤギ乳は栄養価が高いとして人気があり、主に200ミリリットルの袋詰めで、牛乳の3〜4倍の価格で販売されている。
(2)生乳生産量の推移
生乳生産量は、乳牛の増加に伴い2011年には97万5000トンに達した。しかし、乳牛が激減した影響で2013年には79万トンへ減少し、2014年も80万トンにとどまっている(図19)。
農業省によると1頭当たり年間搾乳量は3139キログラムと少ない。搾乳量が少ない理由として、熱帯気候の影響のほか、農家の飼養技術に関する知識不足や栄養価の高い飼料の給与不足などが挙げられている。
一方、先進的な飼養技術や近代的設備を取り入れたある国内大手メーカー直営牧場の平均搾乳量は同9000キログラムとなっている。同社は、1976年に肉用牛および乳牛の品種改良を目的に設立された国立の西ジャワ州レンバン人工授精センターへ種雄牛候補を提供している。同センターには同社から提供された種雄牛が現在21頭おり、うち5頭が、国の定めた能力検定に合格している。同センターが配布する検定合格牛の精液を人工授精して生まれた牛の平均搾乳量は同6000キログラムと全国平均の2倍となっている。これらのことから、西ジャワでは他地域よりやや高い同3847キログラムとなっている(表15)。
(3)生乳取引
生乳取引は、酪農協とメーカー間で行われている。両者は、大手乳業メーカーの加盟するインドネシア乳業協会が前年の乳価や脱脂粉乳の国際価格などに基づき提示した標準取引価格を参考に、基準価格と品質などに応じた加算額を設定し取引している。農業省によると、乳価は、用途別にほとんど差がないとのことである。
インドネシア乳業協会が提示した2015年の標準取引価格は、1キログラム当たり5300ルピア(53円)であるが、飼料価格の上昇を理由に、一部の酪農協は、同6000ルピア(60円)を希望していたとのことである。
酪農協は、手数料として乳価から同350〜550ルピア(3.5〜5.5円)程度を徴収し、残りを農家に分配している。最大の酪農協である北バンドン酪農協によれば、2015年の農家への支払い価格は同4500〜4900ルピア(45〜49円)とのことである。
2 牛乳・乳製品の生産と国内消費動向
(1)牛乳・乳製品の生産動向
産業省によると国産生乳の製品仕向け割合は、全粉乳35.6%、LL牛乳25.5%、調製粉乳19.0%、チルド牛乳14.5%、加糖れん乳5.3%、ヨーグルト0.1%となっている。
牛乳・乳製品生産量は、2009年に、牛乳28万トン、調製粉乳16万5000トン、加糖れん乳43万トンなどとなっている(表16)。乳製品には、基本的に、インドネシアハラール認証マークが付されている。
(2)牛乳・乳製品の国内消費動向
統計局の家計調査によれば、牛乳・乳製品の1人当たり年間消費金額は、2014年に17万7077ルピア(1771円)とされており、うち77%が育粉を含む調製粉乳で、16%が加糖れん乳である(表17)。
調製粉乳は、育児用のほか、小児用、妊婦用、成人用などのさまざまな用途があり、カルシウムなどの機能が強化された製品、フレーバー付き製品など種類が多く、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で消費されている(写真26)。
牛乳はLL牛乳が中心で、生乳だけを用いた牛乳はほとんどなく、粉乳を混ぜているものが多い(写真27)。近年、一部メーカーから豪州産の生乳だけを用いたチルド牛乳(946ミリリットル)が約5万ルピア(約500円)で販売されており、高所得者層を中心に販売量が拡大している(写真28)。
加糖れん乳は、コーヒーや紅茶に入れて飲んだり、インドネシアの屋台料理でなじみのマルタバックの生地に混ぜて消費されている(写真29)。
飲むヨーグルトは、チョコレートやいちごなどのフレーバータイプが数多く販売されており、消費者に好まれている(写真30)。一方、固形やプレーンタイプのヨーグルトは、ほとんど販売されておらず、酸味のあるものは敬遠されている。インドネシア乳牛協会によると、酸味のある固形のプレーンタイプのヨーグルトは、外食産業向けの業務用では需要が高いとのことである。
チーズは比較的最近消費されるようになってきた製品で、1人当たり消費量は少ないが、ジャカルタとその近郊では、食の多様化によるピザやパンの普及のほか、マルタバックに20年程前からチーズを使用していることなどから、消費が増加している。近年、日系企業が地元企業との合弁によるプロセスチーズ工場を建設したこともあり、今後、さらなる消費増加が見込まれている(写真31)。
3 牛乳・乳製品の輸入動向
牛乳・乳製品供給は、国内での生乳生産が限られているため、原料や製品の輸入に大きく依存する状態が続いており、乳製品消費量(生乳換算)の7割程度が輸入原料または輸入製品とみられている。
牛乳・乳製品の輸入量は増加傾向にあるが、2008年はリーマンショックと中国のメラミン事件、粉乳輸入価格の上昇のために、減少した。2009年は粉乳輸入価格が低下したため、輸入量は増加に転じ、2010年以降も増加傾向で推移している。品目別には、特に国内需要の高まりから、調製粉乳などの乳製品の製造原料となる脱脂粉乳とホエイの輸入が増加している(図20)。
脱脂粉乳や全粉乳は主に調製粉乳、LL牛乳、ヨーグルトやアイスクリーム、パン・菓子などの食品加工で用いられているとみられる。
チーズの輸入は徐々に拡大しており、今後も増加が見込まれている。主要な乳製品であるれん乳の輸入量は少なく、輸入原料や国産生乳を用いた国産品が市場のほとんどを占めている。育粉の輸入は、量は少ないが、国産に比べて品質の良い国外の大手メーカーのものが中心となっているため、高価格帯で取引されている。
インドネシアに輸出するためには、輸出業者および輸入業者は政府から輸入に係る許可を得る必要がある。
関税については、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意で粉乳を含むミルク・クリームの関税割当枠を設定したが、既にWTO協定に基づく枠外税率は、ほとんどの品目で5%となっており、割当は運用されていない。
貿易協定においては、ASEAN・豪州・NZFTAでは乳脂肪率6%以下のミルク・クリームは最終税率0.04%、その他の乳製品は2018〜20年までに撤廃としているが、ASEAN域内では既に関税を撤廃している。
4 酪農振興政策
政府は、牛乳・乳製品の自給率向上プログラムにより、2014年までに自給率を50%に向上させる計画を掲げ、乳牛の輸入に対する低利融資などの施策を実施してきた。しかし、前述の通り牛肉の自給率向上の方が政策の優先度が高く、2013年に生乳生産は激減した。
農業省は、2015年の牛乳・乳製品の自給率を30%程度と見込んでおり、2015〜20年における新たな牛乳・乳製品自給率向上プログラムにおいて、自給率を70%まで向上させるとの高い目標を掲げている。
そのための施策として、農業省は、乳牛1000頭、乳業者、流通業者を1カ所にまとめて、牛舎の設置、酪農家の育成、飼養管理などの技術支援、栄養価の均一な飼料の提供などにより生産基盤を整備するとともに、効率的な加工・流通を行うこととしている。
また、地元紙によると、投資調整庁は、東ジャワ州マランに総額3億4000万米ドル(414億8000万円:1米ドル=122円)を投資し、酪農場と牛乳工場を建設すると発表した。地元の酪農家からも同工場で加工する原料を調達し、将来的に7万1000戸の酪農家と契約し、年間142万キロリットルの牛乳を生産する計画とのことである。
5 今後の見通し
政府は、酪農の振興に当たり高い自給率目標を掲げ、酪農・乳業の振興に当たっては国外からの投資を大いに期待しているようであるが、政策的な優先度は他品目に比べて低いことから、その実現可能性には疑問が残る。
一方、消費面では、学校での消費が拡大していくと見込まれるほか、今後も経済成長とともに消費が拡大していくとみられるが、生産基盤がぜい弱なことから、国内需要を満たすために、今後も輸入は拡大していくものと思われる。
X ベトナム
1 酪農生産動向
(1)飼養頭数および生乳生産量の推移
乳牛飼養頭数は、国内の牛乳・乳製品の需要増と、政府による中小酪農家への支援、大手乳業メーカーによる大規模牧場の開設などを背景に近年大幅に増加しており、2000年の3万5000頭に対して2014年には21万頭となっている。
2007年には飼料価格の高騰と乳価下落により、飼養規模を縮小したり、廃業する酪農家が増加した。しかし、中国のメラミン事件で消費者が輸入品に不信感を持つようになった2008年以降、政府が国産生乳を増加させるため、中小酪農家を対象とした政策的支援を行ったことや、大規模牧場も積極的に規模拡大を図ったことから、飼養頭数は増加している(表18)。
生乳生産量は、乳牛飼養頭数と1頭当たり搾乳量の増加により増加傾向で推移しており、2014年は54万トンとなっている。1頭当たり搾乳量は、東南アジアの中では比較的多く、2014年には5230キログラムとなっている。
(2)生乳取引
生乳取引は、酪農家が集乳所へ生乳を出荷し、そこから酪農協へ販売するケースと酪農家から直接乳業メーカーへ販売されるケースに分かれる。
ベトナム畜産協会によると、2013年の実績で、前者の農家販売価格は1キログラム当たり平均1万3600ドン(68円)で酪農家の利益率は20%程度とみられている。
酪農協は、買い取った生乳を1キログラム当たり2000ドン(10円)の手数料を乗せて、乳業メーカーに販売している。
一方、複数の現地報道によれば、2015年、後者のうち乳業メーカーと契約している酪農家の農家販売価格は1キログラム当たり1万4000ドン(70円)となっているが、乳業メーカーと契約していない酪農家は、半額の同7000ドン(35円)程度となっている。
乳業メーカーは酪農家に対して品質や飼養設備などの基準の強化を求めたり、乳業メーカーの集乳量の見直しによる全体的な集乳の削減などを理由に、酪農家との契約を破棄することがある。このため、酪農家は、生乳の廃棄や乳牛を食肉用として出荷することを強いられる場合もある。
乳製品の国際価格が2015年に低下したことから、国産生乳は、輸入原料と比べて割高となっており、現在、乳業メーカーは、酪農家との集乳契約を新たに締結することには、慎重になっている。これに対し、農業・農村開発省は、地方政府を通じて酪農家が乳業メーカーと契約できるよう指導している。
2 牛乳・乳製品の生産と国内消費動向
(1)牛乳・乳製品の生産動向
牛乳・乳製品の消費は、従来は加糖れん乳や調製粉乳がほとんどであったが、1990年代半ばから、LL牛乳が輸入されるようになり牛乳の消費が増加し、還元乳の国内生産も増加した。しかし、原料を確保できなかったことやコールドチェーンが未発達であったことから、国産生乳を使用したチルド牛乳が普及し始めたのは2000年代に入ってからである。また、同時期に国内大手乳業メーカーなどがパック入りのヨーグルトを製造するようになってから消費に変化がみられ、最近では、ヨーグルト、アイスクリーム、乳酸菌飲料などさまざまな乳製品が流通しており、特に、ヨーグルトの消費が拡大している。
国内で製造されている乳製品のうち、牛乳と調製粉乳の生産量は統計局から公表されており、これによると2013年の生産量は飲用乳が約71万8100キロリットル、調製粉乳が約9万トンであり、いずれも2008年からの5年間で約2倍に増加している(表19)。
牛乳の生産量はLL牛乳が多いが、近年はチルド牛乳も製造されるようになってきている。また、牛乳は、国産生乳から製造されるものは3割で、残り7割は、輸入粉乳から製造される還元乳であるとみられている(写真32)。LL牛乳であっても「LLチルド牛乳」や「チルド牛乳」といって販売されているものもあり、これらの区別は、消費者にあまり認識されていない状況である。
(2)牛乳・乳製品の国内消費動向
1人当たりの年間牛乳・乳製品消費量は増加傾向で推移しており、2013年には生乳換算で18キログラムと、2007年から2.6倍程度に増加している(表20)。
品目別では、牛乳が最も多く、ヨーグルトや加糖れん乳も多くなっている(写真33)。育児用・大人用それぞれの調製粉乳も消費されているが、その他の乳製品の消費量は少ないとみられる。特に、子どもの栄養を気にかける親が子ども向けに牛乳や調製粉乳などを購入している。
近年では、ヨーグルトやアイスクリームなどがデザートとして食されたり、牛乳やヨーグルトを入れたスムージーなどが朝食にされているようである。また、チーズは、消費量は少ないものの、ファストフードなどの外食産業やホテルでパンとともに消費されている。
3 牛乳・乳製品の輸入動向
政府から乳製品輸入量が公表されていないため、各国のベトナムへの輸出量から同国の輸入量を推計した(図21)。輸入量は、2008年はリーマンショックによる消費の低迷で一時的に減少したが、その後は増加傾向で推移している。
4 酪農・乳業振興政策
政府は、産業振興や国民の栄養改善などの観点から、酪農生産振興や牛乳・乳製品の消費拡大に取り組んでいる。
工商省は2005年に「ベトナムの乳業振興の2010年までのマスタープランおよび2020年への計画」を策定し、1人当たり牛乳消費量を2010年に10キログラム、2020年に20キログラムに引き上げ、2010年の自給率の目標を40%と定めている。
農業・農村開発省は2008年に「2020年に向けた畜産開発戦略」を策定し、2020年までに乳製品の40〜45%を自給するため、乳牛頭数50万頭、生乳生産量100万トンという目標を掲げている。
しかし、亜熱帯気候で四季のある北部を除き、熱帯気候で酪農に適さないこと、飼養管理技術の水準が低いこと、飼料価格が高いこと、乳価が不安定なことなどから生産基盤が安定しないため、自給率は30%弱にとどまっている。
また、牛乳・乳製品は、栄養価の高い食品として重視されており、政府が2001年に策定した「国家栄養戦略(2011−2020)」において、幼稚園や小学校の2〜6歳児を対象に1日当たり200ミリリットルの牛乳を供給するなどにより牛乳・乳製品の消費拡大を目指すこととしている。
5 今後の見通し
現在は、酪農・乳業は小規模酪農家主体であるが、多くの酪農・乳業分野への国内外からの投資などにより生産は増加しており、投資は引き続き拡大していくと見込まれている。酪農・乳業界では、質の良い生乳の安定供給に向けた生産と集乳、牛乳・乳製品の製造・流通過程で改善が続けられていることから、徐々に近代化が図られていくと思われる。
乳製品は経済活動や国民の栄養改善の観点から重要な品目と位置付けられており、政府は今後も生産・消費の振興を図っていくとみられる。
Y マレーシア
1 酪農生産動向
(1)生乳生産量の推移
農業・農業関連産業省によると、生乳生産量は2004年以降増加傾向にあり、過去10年で3万8000トン(2004年)から7万5000トン(2014年)へ約2倍に増加している。2011年まで年率約9%で増加し7万トン台に達して以降は、年率2%の増加となっている。牛乳・乳製品の生乳換算の自給率は、生産量の増加に伴い2005年の4.6%から2014年には約13%へ上昇している。
2014年の生産量を地域別に見ると、マレー半島地域が約6万5000トンと全体の86%を占めており、ボルネオ島のサバ州が1万トン程度(13%)となっている。
2012年にマレー半島の酪農家30戸を対象に行われた調査によれば、1頭1日当たりの搾乳量は約10キログラムであり、今後の飼料改善などにより搾乳量の増加が期待されている。
(2)生乳取引
生乳生産量の約7割は国営集乳所で買い取られている。国営集乳所では、品質確認と、格付けを行い、乳固形分率(TS)が高い生乳は高価格で買い取られる一方、細菌数(TPC)が高いものは不利となる仕組みになっている。
1キログラム当たり生乳取引価格は2005年の1.3リンギット(36.4円)から2015年には2リンギット(56円)へと上昇している。取引価格の地域差は、2005年にはかなりみられたものの、2012年以降は縮小している。
2 牛乳・乳製品の生産と国内消費動向
(1)牛乳・乳製品の生産動向
牛乳・乳製品の生産は、国外乳業メーカーが主体となっており、生産された脱脂粉乳やれん乳などは、ASEAN諸国や中東などに輸出されている。
マレーシア統計庁の2011年統計年鑑によれば、牛乳の生産量は2007年の16万3835トンから2011年に14万1244トンへ13.8%減少した。一方、れん乳の生産量は同時期に17万136トンから20万3346トンへ19.5%増加している(表21)。れん乳は2009年に「1946年価格統制法」に基づく価格統制品の指定から外れたことから、国内需要を背景に増加したとみられる。
また、近年、国外乳業メーカーがヨーグルト工場を建設し、生産を行っている。
(2)牛乳・乳製品の国内消費動向
1人当たりの牛乳・乳製品消費量は、他の東南アジア諸国と比べて多く、2014年に生乳換算で50.3キログラムとなっている(表22)。人口増加と所得向上により、消費量は今後も増加していくと見込まれている。
品目別で見ると、牛乳は近年減少傾向で推移している。牛乳のうち、チョコレートやいちごなどで味付けしたフレーバー牛乳の消費量が41%と多く、一般的な牛乳は21%、乳児・小児用牛乳が20%を占めている(写真34)。
れん乳は、コーヒーや紅茶に入れて、多く消費されている。
一方、チーズは外国企業の現地駐在員や高所得者を中心に、ピザやパスタ店などの外食産業における消費が伸びている。
バターもパン消費の増加など食の多様化を背景に、消費量が増えている(写真35)。
アイスクリームもし好品として需要が拡大しており、近年では比較的脂肪分が少ないジェラートの消費が伸びてきている。
ヨーグルト市場も近年拡大している(写真36)。従来、ヨーグルトを食べる習慣はなく、特に中国系マレーシア人に敬遠されていたが、フレーバータイプの発売や、乳酸菌の機能が認知されてきたことにより、徐々に需要が高まっている。
また、近年、健康志向の高まりにより、都市部に住む中所得者以上の若年層の間では、粉乳ではなく生乳を原料とした高たんぱく質のヨーグルトが好まれており、低糖タイプや低脂肪タイプの消費が増加している。
3 牛乳・乳製品の輸入動向
国内の需要を満たすため多くの牛乳・乳製品が輸入されており、その多くは脱脂粉乳や育粉などである(図22)。
粉乳は近年、ヨーグルトや乳酸菌飲料の原料としての需要が拡大している。
4 酪農・乳業振興政策
1974年から酪農の基盤整備および生乳市場の安定化を目的に全国に国営集乳所が設立されている。国家5カ年計画である「第11次マレーシア計画(2016〜2020年)」では、集乳、加工、流通の効率を上げるため、これら施設の改善がうたわれ、また、国営集乳所が地域の酪農協と連携し、集乳、加工、販売活動を行うこととしている。
加えて、政府は比較的生産性が高いマフリワール種(注8)の品種改良および繁殖技術の向上を図っている。
牛乳の消費促進のため、学校牛乳プログラムが、州独自のプログラムを行っていたサバ州を除く全国で1985年に開始された。同プログラムは、低所得の農村の小学生を対象に、補助により牛乳を無料または低価格で供給している。2007年に発生した学校牛乳の食中毒騒動により一時中止されていたが、2011年に再開された。牛乳の安全性を考慮して、保存期間の長いLL牛乳を供給するとともに、小学生に牛乳の鮮度や安全性の確認方法、栄養価について教えている。
また、マレーシア栄養学会は、政府の支援の下、大手乳業メーカーと共同して健康キャンペーンを行い、乳製品の消費拡大を行っている。
(注8)ホルスタイン種と耐暑性のあるサヒワール種の交雑種。
5 今後の見通し
政府は、牛乳・乳製品の消費が増加傾向にあるほか、ASEAN諸国や中東などへの輸出も増加している中、牛乳・乳製品の自給率向上を目標として掲げており、さまざまな支援を通じて徐々に生産性が上がることが期待されている。しかし、現状では、生産基盤はぜい弱なことなどから、今しばらくは輸入が拡大していくとみられる。
Z おわりに
中国、東南アジア各国の牛乳・乳製品をめぐる状況はさまざまであり、特に、酪農・乳業の発達状況や輸入への依存度は、気候やこれまでの政策の成否により、国により大きな差がある。
しかし、経済発展による食文化の変化、流通の発達、国民の健康への関心の高まり、健康増進政策などにより、今後も牛乳・乳製品の消費の増加が見込まれる一方で、その増加に対して国内供給が間に合わないと見込まれる状況は共通している。牛乳・乳製品の輸入先は、NZや豪州といったオセアニア地域などの主要輸出国が主となると考えられるが、高品質な商品などわが国の乳製品が入り込む余地について探求していく価値はあるのではないだろうか。
中国、東南アジア地域が国際乳製品市場に強い影響力を持つであろうことは、今回の調査後、さらに強く感じられた次第であり、引き続き、この地域の消費動向、輸入動向を注視していく必要がある。
執筆者
U 伊澤 昌栄、小林 誠、根本 悠
V〜Y 中島 祥雄、伊佐 雅裕、木下 雅由
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