需給動向 海外

◆米 国◆

生体重は過去最高を記録も、生産量は前年を下回る


フィードロット導入頭数は引き続き前年を下回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が11月20日に公表した「Cattle on Feed」によると、2015年10月の主要牛肉生産州(注1)のフィードロット(注2)導入頭数は前年同月比3.0%減の195万7000頭となり、4カ月連続で前年同月を下回った(図1)。米国の牛肉生産は穀物肥育によるものが大部分を占めており、フィードロット導入頭数は、今後の牛肉生産の指標とされる。減少の要因としてUSDAは、干ばつにより悪化していた放牧環境が改善したことで、繁殖農家や育成農家が雌牛の自家保留を進めていることに加え、肥育もと牛価格が下落していることからフィードロットへの出荷を遅らせていることを挙げている。導入頭数を重量別に見ると、最も重いカテゴリー(800ポンド以上)が同5.5%増となった一方、その他のカテゴリーはいずれも前年同月を下回った。

(注1)アリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、アイオワ州、カンザス州、ネブラスカ州、テキサス州。

(注2)収容能力1000頭以上規模が対象。

と畜頭数も前年同月を下回って推移

 USDA/NASSが11月17日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2015年10月の牛と畜頭数は前年同月比4.8%減の251万3000頭となり、2014年1月以降、前年を下回って推移している。と畜の内訳を見ると、去勢牛(同2.1%増)は前月に続き増加したものの、未経産牛(同16.7%減)や経産牛(同9.1%減)は減少となり、牛群再構築の動きを示している(図2)。

 一方、1頭当たりのと畜時の生体重量は同2.6%増の630.5キログラムと過去最高値を記録した(図3)。この要因として、フィードロットの導入頭数が減少する中で、飼料穀物価格が安値で推移していることによる肥育期間の長期化などが挙げられる。

 と畜頭数の減少はと畜重量の増加では相殺されず、2015年10月の牛肉生産量は同2.1%減の96万4000トンとなり、同年1〜10月の累計では前年同期比3.4%減の894万トンとなった。USDAは、牛群の再構築の進行により牛飼養頭数が回復に向かっていることから、2015年第4四半期(10〜12月)の牛肉生産量は前年同期を1.8%上回り、2016年についても増加傾向で推移するものとみている。

牛肉輸入量は前年増で推移

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2015年9月の牛肉輸入量は、米国内の牛肉生産減を反映し、前年同月比12.4%増の125万1000トンと前年をかなり大きく上回った。また、同年1〜9月の累計では前年同期比29.5%増となっている(図4)。これは、低級部位を中心とした需給のひっ迫感や主要輸入先である豪州やカナダの通貨に対する米ドル高の為替相場が要因として挙げられる。特に、豪州産の増加が目立っており、同年1〜9月の同国からの牛肉輸入量は前年同期比47.0%増となった。

 2015年10月以降の牛肉輸入量についてUSDAは、国内の牛肉生産量が増加するため、前年の水準を下回って推移すると見込んでいる。

(調査情報部 渡邊 陽介)


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