需給動向 海外

◆ブラジル◆

1〜9月の鶏肉輸出量、かなりの程度増加


レアル安で良好な輸出環境

 ブラジル開発・商工省貿易局(SECEX)によると、2015年1〜9月の鶏肉輸出量は、前年同期比6.4%増の288万4229トンとなった(表4)。増加の要因として、昨年末よりブラジル国内で表面化した政治不信・経済低迷を受け、為替相場が過去最高の米ドル高レアル安を記録するなど輸出環境が良好に推移したことが挙げられる。

 国別輸出量を見ると、最大の輸出先であるサウジアラビア向けは同国の国内需要が拡大していることを受け大幅増となった一方、第2位の日本向けは前年同期比0.7%減となった。日本向けについては、2013年末のタイ産生鮮鶏肉の輸出再開以降、ブラジル産鶏肉のシェアは減少基調で推移していたが、日本国内で牛肉・豚肉価格が引き続き高値で推移した中、安価な輸入鶏肉の需要が高まったため、微減にとどまった。

 一方、第3位の中国向けは、同国が米国での鳥インフルエンザ発生に伴い、2015年1月12日以降、米国産鶏肉の輸入を停止しているため、代替需要により前年同期比38.3%増と大幅増となった。

 なお、2015年9月のレアルの対米ドル為替相場を見ると、同年1月比で5割安となった(図13)。これにより、価格競争力が増したブラジル産鶏肉の平均輸出単価(米ドル建て)は、大手輸出パッカーを中心に下げ基調で推移し同13.0%安となった。

生産・輸出量は過去最高の見込み

 ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)の農畜産物生産予測によると、2015年の同国の鶏肉生産量は過去最高となる1332万トン(前年比3.4%増)が見込まれている(図14)。

 この主な要因として、穀物相場が世界的な豊作を受けて安値で推移したことにより生産コストが安く抑えられていることに加え、国内外の鶏肉需要が好調に推移していることが挙げられる。ブラジル国内では、経済失速による失業率の上昇に加え、2015年のインフレ率が過去12年間で最も高い10%程度を記録する見込みであり、高価な牛肉の消費が落ち込む一方、安価な鶏肉や豚肉の消費が増えている。また、輸出については、為替相場が引き続きドル高レアル安基調で推移していることから価格優位性を有し、大手を中心に輸出を伸ばしている状況にある。

 なお、ブラジル動物性たんぱく質協会(ABPA)は2015年の輸出量について、9〜10月分が輸出証明書を発行する連邦検疫官のストライキの影響で一時的に減少したほか、主要鶏肉輸出港のある南部で11月分の積み出しが豪雨により遅れたものの、過去最高と見込んでいる。

 なお、2015年11月中旬に中国向け輸出認定施設が2カ所追加されたほか、2014年以降急激にブラジル産鶏肉の輸入が増えているメキシコ向け輸出認定施設も11月16日、従来の5カ所から20カ所に拡大するなど、さらなる輸出拡大に向けて輸出環境の整備が進んでいる。

(調査情報部 米元 健太)

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