需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産、減少に転じる


10月の生乳生産量、減少に転じる

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2015年10月の生乳生産量は109万3200キロリットル(112万6000トン相当、前年同月比0.4%減)と、1年11カ月ぶりに前年同月を下回った。2015/16年度(7月〜翌6月)の累計(7〜10月)では355万9400キロリットル(366万6000トン相当、前年同期比2.0%増)と増加しているものの、増加率は縮小傾向にある(図20)。

 生乳生産量減少の背景として、10月の高温乾燥気候による、ダムの貯水率低下に伴うかんがい用水取引価格の上昇に加えて、乾草の生産量の減少が影響したとみられる。DAによると、ビクトリア(VIC)州やタスマニア州の一部酪農家は、他州からの乾草の買い入れを余儀なくされているとしている。

 また、オランダの農業系金融機関のラボバンクによると、水資源をはじめとした生産コストが上昇する一方で、乳製品国際価格は引き続き低迷しており、生乳生産量が減少に転じたことで、酪農家の実質的な手取り額は減少する可能性が高く、厳しい経営状況が続くとしている。

9月の乳製品輸出量、チーズと脱脂粉乳が増加

 DAが公表した2015年9月の主な乳製品の輸出量は、以下の通りとなった(図21)。

・脱脂粉乳 1万4062トン(前年同月比37.9%増)

・全粉乳     5871トン(   同   21.2%減)

・バター      1478トン(   同   45.2%減)

・チーズ   1万3704トン(   同   11.3%増)

 品目別に見ると、チーズと脱脂粉乳は前年同月を上回っており、チーズは日本向け、また、脱脂粉乳はインドネシアやフィリピン、マレーシアといった東南アジア向けの需要の高さを反映している。

 一方、全粉乳は、従来の主要輸出先であった中国向け需要の回復に時間がかかっていることから、低調に推移している。バターは、堅調な国内需要を受けて輸出量は減少傾向で推移しており、前年同月比45.2%減となった。

VIC州、酪農家への支援策を発表

 主要な生乳生産地域であるVIC州の州政府は11月15日、乾燥気候によって経営が悪化した酪農家を支援するために、総額1000万豪ドル(9億円:1豪ドル=90円)超の干ばつ支援対策の実施を発表した。支援策の内容は、酪農家に対する精神面のケアから、頭数削減などを支援するプログラムの創設まで多岐にわたる。

 現地報道によると、10月末から11月初めにかけて豪州全体でまとまった降雨があったことを受け、酪農部門へのかんがい用水の使用割合が数パーセント改善したものの、VIC州のダムの貯水率は前年同月比、前月比ともに引き続き低下傾向で推移しており、乾燥気候はVIC州の酪農経営に深刻な影響を与えているとしている。

(調査情報部 竹谷 亮佑)

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