需給動向 海外

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生乳出荷量の増加で乳価は依然低迷


アイルランドとオランダが増産をけん引

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2015年9月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比2.2%増の1209万トンとなった。

 最も増加率が高かったのはアイルランドで同16.0%増、次いでオランダが同9.3%増となっている。EU全体の生乳出荷量は、クオータが撤廃された同年4月以降、生乳取引価格が低迷しているにもかかわらず、輸出志向を高めている両国がけん引する形で、前年同月を上回って推移している(図18)。

生乳取引価格は14カ月連続前年割れ

 欧州委員会によると、2015年10月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、乳製品国際相場が低水準で推移する中、生乳出荷量が増加傾向で推移していることから、前年同月比14.9%安の100キログラム当たり30.07ユーロ(3939円:1ユーロ=131円)となった(図19)。同価格は5カ月ぶりに30ユーロ台に回復したが、14カ月連続で前年同月を下回っている。しかし、加盟国別に見ると、過半の国でいまだ30ユーロを割っている。

バター輸出量が増加

 欧州委員会によると、2015年1月から9月までのバター輸出量(EU28カ国)は前年同期比8.9%増の9万8348トンとなった。

 生乳出荷量が増加傾向にある中、チーズの最大輸出先であったロシアの禁輸措置によりバター生産が増えているため、EU域内の卸売価格の9月平均は前年同期比7.5%安の1トン当たり2861ユーロ(37万4758円)となった。

 また、輸出価格は、米ドルに対してユーロ安で推移する為替相場などにより、域内価格を3割程度上回って推移している。こうしたことから、欧州産バターの国際競争力が高まり、輸出量は10万トンに近づく水準となった。

 輸出先国別で見ると、最大の輸出先である米国向けが同110%増の1万2378トン、続いてサウジアラビア向けが同94.9%増の1万886トンと大きく伸びている。また、エジプト向けは同446%増の9255トンとなり、米ドル高で輸出が不振となっている米国からシェアを奪う形で3番目の輸出先国となっている。

(調査情報部 大内田 一弘)

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