需給動向 海外

◆米国◆

生乳生産量の増加幅が鈍化


生乳生産量は22カ月連続前年同月比増も、増加幅は鈍化

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が11月19日に公表した「Milk Production」によると、2015年10月の生乳生産量は774万7000トン(前年同月比0.1%増)と、2014年1月から22カ月連続して前年同月を上回ったが、増加幅は鈍化傾向にある(図15)。

 この要因としては、すでに搾乳牛頭数の増加に歯止めがかかったことに加え、1頭当たり泌乳量が減少傾向で推移していることが挙げられる。搾乳牛頭数は、牛肉需給のひっ迫感に加えて乳価が下落傾向にあることで、と畜向け出荷の増加などから2015年5月をピークに横ばいで推移しており、10月は前年同月比0.3%増の930万9000頭となった。また、同月の全米1頭当たり泌乳量は、全米最大の生乳生産地であるカリフォルニア州で、干ばつによる飼料の品質低下から泌乳量が減少していることなどから同0.3%減の832キログラムとなった。この結果、USDAは2015年第4四半期の生乳生産量を前月予測から0.4%下方修正し、233万1000トン(前年同期比0.8%増)と見込んでいる。

在庫の積み増しによりチーズ価格が下落

 USDA/NASSが11月23日に公表した「Cold Storage」によると、2015年10月のチーズの在庫量は、最大のチーズ生産州であるウィスコンシン州での生乳生産量の増加や輸入品の増加などを受けて、前年同月を15.4%上回る52万1000トンとなった(図16)。こうした需給の緩和を反映し、チーズ価格は安値で推移しており、チーズの指標価格となる同月のチェダーチーズの卸売価格(ウィスコンシン地区、 40ポンドブロックのF.O.B.価格)は1ポンド当たり196.7セントと、前年同月を21.9%下回った。

脱脂粉乳の輸出量が大幅増

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2015年9月の米国産乳製品の輸出量は、チーズが2万2200トン(前年同月比20.3%減)、バターが400トン(同82.7%減)と、それぞれ前年同月を大幅に下回った。この背景として、年末に向けた国内需要の増加や米ドル高で推移する為替相場の影響があるとみられている。一方、脱脂粉乳は4万7500トン(同47.5%増)と前年同月を大幅に上回った。これは、ダブついた在庫を輸出に仕向けたものとみられ、特に輸出量全体の約半数を占めるメキシコ向けは前年同月比127.3%増の2万7000トンと急増した(図17)。

(調査情報部 野田 圭介)

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