需給動向 海外

◆米 国◆

生産回復で、豚肉価格はPED発生以前の水準へ


と畜頭数の増加が生産量増加をけん引

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が11月19日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2015年1〜10月の豚と畜頭数は前年同期比8.0%増の9529万2000頭となった。これは、PEDの拡大により2014年の肥育豚価格が高値で推移していたことや豊作により飼料穀物価格が下落したことなどが、生産者の増産意欲を刺激したためとみられる。

 と畜頭数の増加により、2015年1〜10月の豚肉生産量は前年同期比7.3%増の916万8000トンとかなりの程度増加し、PED発生以前の5カ年(2008〜2012年)の平均を上回った(図8)。

 なお、USDAは2015年第4四半期(10〜12月)の豚肉生産量について、飼料穀物価格が安値で推移することなどから、前年同期比5.4%増の293万2000トンと見込んでいる。

高水準在庫により豚肉価格は下落

 USDA/NASSが11月23日に公表した「Cold Storage」によると、2015年10月31日時点の冷凍豚肉の在庫量は前年同月比13.1%増の27万3000トンと、生産量の増加を背景に前年を大きく上回った(図9)。部位別に見ると、需要が堅調なベーコンの原料となるベリーは同38.6%減と低水準となっている一方、ハム(もも肉)(同21.7%増)やロイン(同23.0%増)などの在庫が積み上がっている。

 在庫増などを反映し、2015年11月の豚肉平均卸売価格(速報値)は、前年同月比20.7%安の100ポンド当たり75.0米ドル(1キログラム当たり205円:1米ドル=124円)と、2015年1月以降、11カ月連続で前年同月を下回っており、PED発生前の水準まで下がりつつある。

豚肉輸出量は前年比で増加

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2015年第3四半期(7〜9月)の豚肉輸出量は前年同期比7.5%増の53万2000トンとなった(図10)。しかし、主要輸出先国の通貨に対する米ドル高の為替相場が輸出に影響を及ぼしており、PED発生以前の水準には達していない。輸出先国別に見ると、最大の輸出先であるメキシコ向けが同8.6%増(5万7000トン)、日本向けが同25.3%増(4万7000トン)となった。また、USDAは2015年第4四半期の輸出量を60万1000トンと見込んでおり、生産量の増加による価格安が輸出を後押しするとしている。

 一方、同期間の豚肉輸入量は、同5.0%増の12万2000トンとなった。特に、輸入量全体の約8割を占めるカナダ産は同7.8%増の9万4000トンと前年を大きく上回って推移しており、カナダドルに対する米ドル高の為替相場が要因として挙げられる。

(調査情報部 渡邊 陽介)

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