話 題  畜産の情報 2016年1月号

新年のごあいさつ

独立行政法人農畜産業振興機構 理事長 宮坂 亘


 謹んで新年のごあいさつを申し上げます。

 昨年10月に、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)の理事長に就任しました宮坂亘です。当機構の業務につきまして、旧年中は皆様のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。

 近年の農畜産業をめぐる情勢は、高齢化の進展や後継者不足、さらには円安による生産資材の高騰などにより、厳しい状況が続いています。こうした中、当機構は生産者の経営安定、需給の調整や価格の安定を図るためのさまざまな事業を実施しています。また、法人ガバナンスの向上を図るため、昨年4月、内部統制委員会を新たに設置し、危機管理、情報セキュリティなどの強化に取り組み適正かつ的確な事業の実施に努めてまいりました。

 一方、昨年は農畜産業をめぐる環境などが大きく変化した年でもありました。

 3月に農林水産省は新しい「食料・農業・農村基本計画」を策定し、これに沿った生産者の経営所得の安定を図る他、輸出拡大に向けた取り組みの強化、6次産業化の促進などの攻めの農林水産業を目指す政策が実施されています。

 また、10月には環太平洋経済連携協定(TPP)が、5年半にわたる交渉の末に大筋合意に達しました。関税撤廃を原則とするTPP交渉にあって、重要5品目を中心に関税撤廃の例外などが措置された一方で、一部の品目で関税削減・撤廃などが行われる内容となっています。この大筋合意を受け政府は、農林水産業の体質強化や経営安定対策の充実・強化を柱とする国内対策を盛り込んだ「総合的なTPP関連対策大綱」を11月に策定し、関連予算が政府予算案に盛り込まれました。

 畜産・酪農については、農家戸数・飼養頭数は近年、ともに減少しており、肉用牛生産では子牛価格が高騰し、肥育農家の経営を圧迫しています。また、酪農では生乳生産量が減少しており、一昨年秋以降のバター不足問題から、マスコミで取り上げられることが増え、国民の関心が高まっているところです。このような状況の中で、生産基盤の強化が最優先の課題となっています。その一方で、牛肉の輸出が平成21年度の45億円(676トン)から26年度には89億円(1363トン)に倍増するなど、農林水産物・食品の輸出額に目標が示される中、その先陣を切る状況になっています。

 当機構は、畜産クラスター計画に位置付けられた地域の中心的な経営体に対し、収益性の向上などへの対応に必要な機械のリース導入を支援するなど、畜産業振興事業を通じて、生産基盤の強化に取り組んでいるところです。また、バター不足問題に対しては、洋菓子店などでも直接利用できる形態のバターを輸入の対象に加えるなどの運用改善を図った上で、カレントアクセス(国際約束に基づく輸入)および追加輸入を実施するなど、安定供給がなされるよう努めております。輸出促進の取り組みについても、一昨年末に設立された日本畜産物輸出促進協議会の支援会員として、輸出に係る情報の積極的な収集・提供などにより参画しているところです。

 当機構としては引き続き、畜産物について、生産者などの経営安定を図るための交付金の交付や需給調整・価格安定対策、諸情勢の変化に対応した緊急対策、輸出促進の視点も含めた適時適切な情報の収集提供を実施してまいります。併せて、国民に対する説明責任を果たしつつ、政策実施機能を最大限発揮できるよう効率的かつ的確に事業を実施してまいりたいと考えております。

 特にTPP関連対策については、大綱に、肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)および養豚経営安定対策事業(豚マルキン)の法制化や補塡率の引き上げ、加工原料乳生産者補給金制度の対象に生クリーム等液状乳製品の追加など現在機構が実施している制度の強化が盛り込まれ、今後、法律改正や予算案の審議など国会における必要な手続きを経て本格的に動き出すと聞いています。

 当機構は、国の重要な施策を担う機関として、これまでもその時代に求められた役割を果たすべく、事業の大きな見直しや新たなさまざまな事業を機動的かつ効率的に実施するよう努めてまいりました。TPP関連対策についても、国の方針に基づき、現場に近い組織としてこれまでのノウハウを生かして、一連の流れの中で当機構の役割を確実に果たしていきたいと考えておりますので、引き続き、皆様のご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

 本年が皆様にとって希望に満ちた明るい年となりますことをご祈念申し上げ、新年のごあいさつと致します。

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