需給動向 海外

◆豪 州◆

牛肉生産量、輸出量ともに減少傾向止まらず


牛肉生産量、前年同月比で9カ月連続の減少

豪州統計局(ABS)によると、2016年3月の牛肉生産量は、19万647トン(前年同月比18.8%減)と9カ月連続で前年同月を下回った。また、同月の成牛と畜頭数は、65万6100頭(同21.1%減)となった(図4)。成牛と畜頭数の減少幅に対し、牛肉生産量の減少幅が小さい理由として、牛群再構築に伴う雌牛のと畜割合の減少と、輸出を中心とした堅調な需要に伴うグレインフェッド牛のと畜割合の増加から、平均枝肉重量が増加していることが挙げられる。牛群再構築には一定の期間を要するため、今後もこのような傾向が続くとみられる。



牛肉輸出減も、インドネシア向けが急増

豪州農業・水資源省(DAWR)によると、2016年5月の牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少に伴い、10万844トン(前年同月比14.2%減)となり、10カ月連続で前年同月を下回った(表2)。



主な輸出先国別に見ると、主要輸出先である米国、日本向けが減少となる一方で、東南アジア向けは1万5201トンと前年同月比2.3倍となっており、特にインドネシア向けが1万446トン(同3.7倍)と目立っている。これは、ラマダン(イスラム教徒が断食を行う約1カ月間)明けの最需要期である7月に向けて牛肉の需要が増加していることなどによるとみられている。

上向きに転じた肉牛取引価格

豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年5月末日時点で1キログラム当たり577豪セント(473円:1豪ドル=82円)と、4月末時点から31豪セント(25円)上昇した(図5)。2015年11月以降、同600豪セント(492円)前後の記録的な高水準が続いたものの、2016年に入り為替相場が豪ドル高傾向で推移していること、また、米国の牛肉生産拡大などにより買い付け意欲が弱まったことで、3月以降は下落傾向となっていた。しかし、5月に入り為替相場が豪ドル安に転じたことに加え、東部の主要肉牛生産地域で一定量の降雨があったことから、牧草の生育に改善の見通しが立ったことで、買い付け意欲が強まり、価格は上向きに転じている。



フィードロット飼養頭数、前年同月比4.6%減

豪州フィードロット協会(ALFA)およびMLAによると、2016年3月末日現在のフィードロット飼養頭数は、91万4901頭(前年同月比4.6%減)となった(図6)。また、フィードロット稼働率(収容能力に対する飼養頭数の割合)は75%と前年同月より9ポイント低下した。しかし、米ドルに対して豪ドル安で推移する為替相場や、安い穀物価格および輸出を中心としたグレインフェッド牛肉への需要の高まりから、フィードロット飼養頭数は過去5年間平均を8%上回っており、いまだに高い水準にある。



(調査情報部 大塚 健太郎)


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