需給動向 国内

◆牛 肉◆

交雑種生産量、黒毛交配率の上昇により13カ月ぶりの増加


平成28年4月の牛肉需給を見ると、生産量は2万7130トン(前年同月比3.4%減)と、13カ月連続で前年同月を下回った。品種別では、和牛が1万2082トン(同6.1%減)、乳用種が8094トン(同5.4%減)といずれも減少が続いている一方で、交雑種は酪農家における乳用牛への黒毛和種交配率の上昇により、6663トン(同5.4%増)と13カ月ぶりに増加に転じた。輸入量は前年同月をかなりの程度下回る5万2176トン(同9.8%減)、うち豪州産が3万2208トン(同23.5%減)、米国産が1万6807トン(同30.1%増)であった。推定出回り量は前年同月をわずかに上回る8万697トン(同1.6%増)となり、推定期末在庫は前月から1526トン取り崩し、11万4468トン(同15.2%減)と、4カ月連続で前年を下回った。なお、生産量については、熊本地震の影響により、農林水産省の統計調査において熊本県の一部と畜場の調査票が回収できなかったことから、熊本県を含まない数値であり、前年同月比は、熊本県を除いた数値を用いて算出した(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。

輸入品仲間相場、米国の生産量回復に伴い、米国産が大きく低下

輸入品仲間相場(部分肉卸売価格)の推移を見ると、豪州産フルセット(グラス・冷蔵品)は、米国や中国などの需要減により若干下げているものの、牛群再構築に伴う出荷減による現地相場高から、不需要期に入った6月以降も依然として高い水準で推移している。一方で、米国産については、ロインなど一部の部位は、7月4日の独立記念日に向けた米国内での需要増に伴い高値が続いているものの、テーブルミートとしても業務用としても汎用性の高いチャックアイロール(冷蔵品、「かたロース」に相当)は、米国の生産量の回復に伴い、ここにきて1キログラム当たり1100円台後半と、大きく低下している。また、焼肉店や牛丼店などで多く使用されるショートプレート(冷凍品、「ばら」に相当)は、中国向けの輸出需要により高騰した一昨年秋の半値近い水準で推移している。卸売業者によると、行楽需要でばら周り商材の在庫消化が順調に進んだとのことであり、米国産については、輸入量が減少した昨年と比べて、買い付けしやすい環境になりつつあることがうかがえる(図1)。



牛肉の家計消費量、3カ月連続で増加

このような状況の中、牛肉消費の約6割を占める外食など(家計消費、加工仕向けを除く)の需要は、堅調に推移している。(一社)日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」によると、平成28年4月の外食全体の売上高は前年同月比3.0%高と5カ月連続で前年同月を上回った。特に、焼肉店の好調がけん引しているものとみられる。また、総務省の「家計調査報告」によると、4月の全国一人1カ月当たりの牛肉の購入数量は176グラム(前年同月比10.1%増)と3カ月連続で前年を上回った。牛肉消費の約3割を占める家計消費については、小売価格の上昇に伴う豚肉などへのシフトにより減少が続いていたが、価格訴求力のある輸入牛肉を中心に焼き肉セットなどの販売が好調とみられ、34カ月ぶりの2桁増となった。4月の推定出回り量を見ると、国産品は生産減に伴い、2万7248トン(同6.2%減)と減少が続いている一方で、輸入品は5万3448トン(同6.1%増)となっており、当機構が行っている食肉の販売動向調査結果(注)からも、仕入価格上昇分の価格転嫁が難しい国産牛肉から、輸入牛肉の販売にシフトする小売業者が多いことがうかがえる。

注:「食肉の販売動向調査」とは、当機構が年に2回実施している卸売業者および小売業者を対象とした食肉の取り扱いや販売見通しに関するアンケート調査。なお、本アンケート調査の全文は当機構ホームページに掲載している。(https://www.alic.go.jp/r-nyugyo/raku02_000060.html

(畜産需給部 二又 志保)


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