需給動向 海外

◆ブラジル◆

鶏肉輸出は好調も、高まる減産懸念


レアル安の為替相場が後押し

ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2016年1〜3月の冷蔵・冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比13.3%増の94万2725トンと過去最高を記録した(表3)。主な要因として、為替相場が大幅な米ドル高レアル安で推移したことが挙げられる。



輸出先別の内訳を見ると、上位輸出先向けは軒並み増加した。最大の輸出先であるサウジアラビア向けは国内需要の拡大によりかなりの程度増加し、第2位の日本向けは安価な輸入鶏肉需要の高まりから大幅増となった。また、第3位の中国向けは、米国での鳥インフルエンザ発生に伴い、同国が2015年1月12日以降、米国産鶏肉の輸入を停止しているためブラジル産への代替需要が高まったほか、同国向け輸出認定施設の大幅増などから同52.2%増となった。

なお、2016年1〜3月の平均輸出単価は、米ドル建てで同16.1%安となったが、為替相場が前年同期比4割程度の米ドル高レアル安で推移したことから、現地食肉企業のレアル建て手取り額は、増加したとみられる(図11)。例年、1〜3月の輸出量は、不需要期で年間で最も少ないとされるが、2016年の鶏肉輸出は好調なスタートを切った。



2016年は生産・輸出ともに過去最高の見通し

米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が2016年4月に発表した「Livestock and Poultry:World Markets and Trade」によると、2016年のブラジルの鶏肉生産量は、過去最高となる1356万5000トン(前年比3.2%増)と見込まれている(図12)。この主な要因として、国内市場では景気後退や高インフレにより、牛肉や豚肉に比べて安価な鶏肉需要の増加を挙げている。また、輸出量は、米ドル高レアル安の為替相場が引き続き有利に作用することに加え、中国やメキシコ向け輸出認定施設の大幅増から、過去最高の409万トン(同6.5%増)へ拡大し、国別では中国向けが日本向けを上回って第2位の輸出先国に躍進するとしている。



トウモロコシ価格高騰により高まる減産懸念

ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)の養鶏・養豚調査センター(CIAS)が毎月公表しているブロイラー生産コスト指数によると、2016年1〜4月における主産地パラナ州のブロイラー生産費は、飼料の主原料であるトウモロコシ価格が輸出の増加に伴い高騰したことを受け、過去最高の水準で推移している(図13)。国家食料供給公社(CONAB)は、2016年2月に備蓄トウモロコシを放出し、6月にも追加放出を決定したものの、依然として絶対量が不足している。このため、食肉生産企業や飼料会社は、隣国アルゼンチンやパラグアイからのトウモロコシ輸入を進めているものの、生産者の収益性改善には結びついていないとみられ、USDAは、飼料コスト高が長引けば、2016年の鶏肉生産の成長を鈍化させる可能性があるとしている。



また、ブラジル動物性たんぱく質協会(ABPA)によると、ブロイラーの生産コストが上昇する一方、国内鶏肉価格が低迷して収益性が悪化していることから、特に中小規模の鶏肉処理加工場が影響を受け生産を縮小または停止するケースが発生しており、鶏肉生産の減産懸念が高まっている。

(調査情報部 米元 健太)


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